石破総理大臣は総理大臣官邸で記者会見し、アメリカの関税措置をめぐる対応に区切りがついたなどとして辞任する意向を表明しました。政治部の徳橋達也デスクの解説です。
(7日放送のニュース7の中でお伝えしました。動画はデータ放送ではご覧いただけません)
Q.なぜこのタイミングなのか?背景は?
臨時の総裁選挙を求める動きが広がり、過半数に達する可能性が出てきたことを考慮してだと考えられる。
NHKの取材では実施を求める議員は7日の時点で130人余り、都道府県連でも実施を求める方針もしくは求める方向で進めているところも含め20以上に上っている。総数の過半数が172だからそれに近づいている。
もし予定どおり8日に意見集約が行われ過半数に達すれば、自身に対する、いわばリコールの動きが党の多数を占めたということになるし、仮に過半数に達しなかったとしても、賛成と反対の議員が明確になり党内が分断され長く禍根を残しかねないと判断したとみられる。
実際に党内でも党内対立が先鋭化する前に石破総理が自発的に身を引いてもらいたいという声が増えていた。
6日夜、菅副総裁と小泉農林水産大臣が公邸で石破総理と会談した際も早期の辞任を促すやりとりがあった。
石破総理としては参院選の敗北以来、続投の意向を重ねて示し物価高対策やアメリカ関税措置など政策課題への対応を優先に掲げていたが、党の混乱を収めるためにはみずから身を引くしかないと判断したとみられる。
Q.内政、外交への影響は
影響は小さくない。7月の参院選以降、自民党内の混迷が続き、与党内でも与野党間でも政策的な議論はほとんど進んでいないが、総裁選挙が行われることでさらに空白が続くことになる。
内政では物価高対策をめぐりガソリン税の暫定税率の廃止の議論が続いているが、参院選で争点となった現金給付や消費税の議論などは進展がみられない。
外交面ではアメリカの関税措置をめぐり大統領令の発出にこぎつけたが積み残しもある。
中国やロシア、北朝鮮が接近する中で、日本が国際社会にどういうメッセージを発するか重要な局面でもある。
内外の課題が山積する中で政府の停滞が長引くことは好ましくなく、新たな体制を構築し野党側とどのように合意形成を図るか早期に示すことが求められる。
Q.総裁選の想定されるスケジュールは
8日以降、総裁選挙の実施方法をめぐって話し合いが行われる見込み。スケジュールは実施方法によって変わる。
ポイントは党員投票を行うか否か。今回は任期満了前の総裁選になるので、党のルール上は党員投票を実施しない「簡易なやり方」でもよいとされるが、党員の意見をより反映すべきだという声もある。
一方で党員投票には時間がかかり、実施しない場合は総裁選挙の実施を決めてから2~3週間程度とされるのに対し、実施する場合は1か月程度が必要だとされる。
Q.総裁選の顔ぶれはどうなる
まだ顔ぶれがどうなるかは予想できない。ただ去年の総裁選で石破さんと争った8人の候補者が軸になるとみられる。
なかでも石破さんと決選投票で争った高市早苗さん、次いで多くの得票を得た小泉進次郎さん、林芳正さん、小林鷹之さん、茂木敏充さんの動向が注目される。
こうした人たちを支援する議員は会合を開くなど、すでに動きを見せている。
一方で自民党は麻生派以外の派閥が解消され、かつての派閥のつながりは残ってはいるものの、議員がまとまって一致した行動をとるのは難しい状況になりつつある。
衆院選、参院選の敗北で議員数も減っており、推薦人20人を集めるのも難しく、去年よりは候補者が絞られるのではないかという見方が強い。まずは推薦人集めが活発になる見通し。
Q.今後の政局、焦点は
自民党の新しい総裁が選ばれることになるが、国会の首班指名選挙で新しい総理大臣に選ばれる保証はない。
去年の衆議院選挙のあと、与党が少数となった衆議院での首班指名では野党が一本化しなかった結果、石破総理が選ばれた。
今回、野党側が一本化に向けた動きを取るのかどうか注目だ。
また同じような経過で自民党の新しい総裁が総理大臣に選ばれた場合でも衆参ともに少数与党である状況は変わらない。
野党に対し政策ごとに協力を求めるのか、連立の枠組みに引き込むのか、総裁選挙では野党との向き合い方も大きな論点になる。