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復旧のカギ 被災者と支援団体をつなぐ”災害中間支援組織”

熊本県

9月1日は「防災の日」です。
地震や水害の被災地では専門的な機材や技術を持つNPO法人やボランティア団体が活動してきましたが、災害の規模が大きくなると、支援の“漏れ”や“ムラ”がないよう調整することがいち早い復旧のカギを握ります。

被災した人と支援団体とをつなぐ“調整役”を担うのは「災害中間支援組織」と呼ばれる組織です。

国は、2030年度までにすべての都道府県で設置されることを目指し、支援を強化することにしています。

過去の災害時の教訓踏まえ設立 ことし7月までに26都道府県

阪神・淡路大震災などを経て復旧や被災者支援に関して専門的な知識や技術を持ったNPO法人やボランティア団体が活動してきましたが、東日本大震災では団体どうしの連携が十分に取れず、支援が行き届かない地域がありました。

去年の能登半島地震でも支援団体と被災した市町との間で連携体制の構築に時間がかかったと専門家などから指摘されています。

こうした教訓を踏まえ、被災した人と支援団体とをつなぐ“調整役”を担うと期待されるのが「災害中間支援組織」です。

個人のボランティアは主に社会福祉協議会が受け入れや派遣を担うのに対し「災害中間支援組織」は専門的な技術を持つボランティア団体などの活動の調整を行います。

内閣府などによりますとことし7月までに全国26の都道府県で設立されていて、8月、記録的な大雨による被害を受けた熊本県でも、NPO法人が活動の調整を担っています。

熊本における災害中間支援組織では

地域における災害中間支援組織の活動として国や専門家が注目しているのが、熊本県での取り組みです。

2016年の熊本地震をきっかけに、その年に発足したNPO法人「くまもと災害ボランティア団体ネットワーク」は、熊本地震からの復旧をはじめ令和2年の7月豪雨でも調整を行いました。

そして8月の記録的な大雨でも、大雨特別警報が発表された翌日から情報共有するための会議を開いています。

先月29日には県の担当者や地元の社会福祉協議会、NPO法人など40人余りがオンラインなどで参加し、支援活動の状況などが報告されました。

“支援者とニーズの「可視化」を徹底”

樋口務代表理事が徹底しているのは「支援者と支援ニーズの可視化」です。

どの団体がどこでどのような支援を行っているのか、表形式でまとめたうえで共有。被災状況や支援ニーズと照らし合わせて、支援の手薄な場所がないか確認し、調整を行っています。

これまでの調整の結果、浸水した住宅の床下の水抜きや洗浄などの活動ができる団体が熊本市で不足していることがわかりました。

熊本市では浸水した住宅が先月末時点で1000棟余りに上りますが「くまもと災害ボランティア団体ネットワーク」によりますと、大雨のあと数日は専門的な技術や機材を持って活動をしているボランティア団体がいなかったということです。

そのため、福岡県のボランティア団体に相談したところ、8月20日から活動が始まりました。

この日も床上数センチの浸水があった熊本市内の住宅で、床板のカビを防ぐため、床下にもぐってぬれた断熱材をはがしたり、床下の泥を専用の機材で吸い出したりする活動が行われました。

ボランティア団体の大石英敏代表は「放置すると床がブカブカになり、その上を歩くと抜けてしまうおそれがある。高齢の方は床下にもぐっての作業はまずできないので、できるかぎり自分たちがお手伝いできればと思っている」と話していました。

「くまもと災害ボランティア団体ネットワーク」の樋口代表理事は「まんべんなく支援が届くように、どこにどの団体が入っているか把握して、調整に注力していく」と話しています。

専門家「課題は運営体制の強化 特に平時の人件費の調達」

国は、「災害中間支援組織」は水害に加え、南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの際、災害関連死の防止や速やかな生活再建のために重要だとして、2030年度までにすべての都道府県で設置されることを目指しています。

「災害中間支援組織」を担うのは、NPO法人をはじめとする民間の団体のほか、県や大学が一員となって運営するケースもあります。

被災者支援に詳しい跡見学園女子大学の鍵屋一教授は「行政と社会福祉協議会と災害中間支援組織が一緒になって、被災者支援を進めるのが望ましい」と指摘しています。

公的な支援を担う行政と災害ボランティアセンターで個人のボランティアを受け入れ、派遣する社会福祉協議会の活動だけでは災害時に増えるニーズに対応しきれないため、「災害中間支援組織」が団体の調整を行うことで、結果として早急な生活再建につながると分析しています。

一方で鍵屋教授は、今後は各地での設置に加えて運営する体制の強化が課題になると指摘しています。

特に平時の人件費の調達が課題で、常勤の職員を十分に雇えている組織は限られているといいます。

鍵屋教授は「人件費や研修の経費などをしっかり出すことが、被災時に非常に大きな力になる。行政や企業がファンドのようなものを作って支えていくのが望ましいのではないか」と提言しています。

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