
登下校の熱中症対策 スクールバスやポロシャツ“すそ出し”も
暑い日が続き通学中の児童の熱中症対策として、ことし初めて期間限定でスクールバスを走らせている兵庫県加西市では、1日から新学期が始まり、子どもたちがバスで元気に登下校しました。
期間限定でスクールバス初運行
兵庫県加西市は、小学校の児童の保護者から通学中の熱中症を心配する声が複数、寄せられ、熱中症対策として期間限定のスクールバスをことし初めて運行していて、新学期が始まった1日から再開しました。

送迎の対象は、集団登校の集合場所から学校まで距離が3キロ以上ある市内の8つの小学校の108人で、このうち西在田小学校では、始業式を終えた1年生から6年生11人が帰宅するため、午前11時に学校からバスに乗り込みました。
この学校の通学路は日陰が少ない直線道路が1キロ以上続く場所があり、送迎が始まる前は子どもたちが汗だくになりながら通っていたということです。
バスの運行はことし7月に始まり、今月22日までの予定です。

自宅から学校まで片道で4キロ以上あるという6年生の男の子は「これまで通学路の途中で水筒の水がなくなることがありとても大変でしたが、バスはエアコンが効き体も楽で、勉強に集中できる感じがします」と話していました。

加西市教育委員会学校再編室の中村洋平主事は「バスの導入で保護者から『子どもたちが安心して通学できる』という声もあがっている。課題を検証しながら来年度以降も運行を続けていきたい」と話していました。
日傘や帽子 ポロシャツの“すそ出し”も

東京 府中市では、これまで8月の最終週に2学期を開始していましたが、暑さを少しでも避けるためことしから夏休みを延長し、1日、市立の小中学校、合わせて33校で一斉に始業式が行われました。
学校ごとにさまざまな熱中症対策も進められていて、このうち府中第二中学校では、登下校の際の日傘や帽子、ネッククーラーなどの使用に加え、学校指定以外のポロシャツも着用できるようにしました。

また、熱がこもらないようポロシャツに限って「すそ出し」することも認めたということです。
1日朝は、こうした対策を取った生徒たちが続々と登校し、厳しい暑さが続く中、2学期を迎えていました。
3年の男子生徒は「すそを出して登校したところ、服の中に風が通るので以前より暑さを感じなかった。学校が生徒の安全を第一に対応してくれてうれしい」と話していました。

府中第二中学校の成清敏治 校長は「身だしなみの観点からすそ出しを認めるかどうか職員間でも議論があったが、熱中症は命に関わるため柔軟に対応しようと考えた。生徒の意見も踏まえ、今後も対策を検討していきたい」と話していました。
熱中症の発生場所「道路」が増加傾向
通勤通学や買い物など、私たちが日常使っている「道路」では、熱中症に改めて注意が必要です。
総務省消防庁は全国の熱中症患者の搬送データを公表しています。
このうち、「発生場所」のデータ9年分をNHKが分析したところ、「住居」が最も高い割合を占めた一方で、「道路」の占める割合は、年々、増加傾向にあります。
ことしは5月から8月24日までの速報値で、全体に占める割合は、「住居」が38.9%、次いで「道路」が19.7%となっています。
これを発生場所別の集計が始まった2017年と比べると、「住居」が1.9ポイントの増加だったのに対し、歩道などを含む「道路」は6.2ポイント増加し、すべての発生場所の中で最も大きく増加していました。
新学期が始まりましたが、学校に通う子どもの道路での熱中症に注意が必要です。
日本スポーツ振興センターが授業や通学などの学校の管理下で熱中症になったと申請を受けて医療費を給付したケースのうち、場所が「道路」だったのは2023年度までの5年間に合わせて▽小学生が108人、▽中学生が294人、▽高校生などが419人でした。
また、2023年度には中学生1人が死亡し、2021年度には高校生1人が熱中症による障害が残り、いずれも見舞金を給付しているということです。
【Q&A】子どもの熱中症 どう防ぐ

登下校など子どもの「道路」での熱中症をどのように防げばいいのか。
子どもの熱中症に詳しい国立成育医療研究センターの植松悟子 副院長に聞きました。
Q. 「道路」での熱中症 なぜ多い
A.熱中症は基本的に気温・湿度・ふく射熱が高い時に起きやすいといわれてます。
体育などの運動中に起きることが圧倒的に多いと思いますが、登下校中も暑い環境であればリスクがあります。
子どもは大人よりも体温調整の機能が未熟で、背も低く地面に少し近いので、コンクリートやアスファルトからのふく射熱の影響をより受けるのではないかなと思います。
Q. リスクが高い場所は
A.やはり気温と湿度が高い場所。
土よりは、コンクリートやアスファルトの方がリスクが高いです。
また、通学時間が長くなると暑い環境にさらされる時間も長くなるので、リスクになると思います。
夏休みに涼しいエアコンの効いた家の中にいる時間が長いと体が涼しさに慣れてしまっているので、登校することで体に影響が出て、熱中症になりやすいということがあるかもしれません。
Q. 対策は
A.体調がよくないと熱中症になりやすいので、暑い外に出る前に睡眠をしっかりとって、朝食をしっかり食べて水分もとり、体調を整えることが大事です。
服装にも気をつけてほしいです。
薄手で風通しがよく、熱を集めにくい色の明るい生地を選んでください。
日傘は帽子の代わりになると思うので悪くないと思います。
そして、子どもが、どうしても長い距離を歩かなくてはいけない場合は、車での一時的な送迎など周囲の大人や自治体が考えていくことも必要ではないでしょうか。