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続く物価高 住宅選びや家計見直しの動き広がる

物価高騰

長引く物価高騰に家計の厳しさを訴える声が増えています。こうした中で、住宅選びや家計を見直す動きも広がっています。

家賃値上がり 人気エリア隣接地で問い合わせ増

都市部では賃貸物件の家賃の値上がりが続いています。不動産ポータルサイトの運営会社によりますと、東京23区や大阪市、それに福岡市など、都市部の中心市街地にある賃貸物件の家賃は、去年よりおよそ10%から20%近く値上がりしているということです。

東京23区のファミリー向け物件で、最も問い合わせが多いのは、17万円ほどの価格帯ですが、実際の家賃は平均で21万円ほどになっています。

物件問い合わせ数(2024年)

家賃の値上がりが続く中、人気エリアにも変化が出始めています。

例えば複数の鉄道路線が乗り入れ、利便性が高いとされる下北沢駅は人気エリアの1つでしたが、少しでも家賃を抑えようと、隣接する東北沢駅や世田谷代田駅などの問い合わせが急増しているということです。

さらに若い世代で人気を集めているのが「スペパ」=スペースパフォーマンスと呼ばれる、限られた空間を効率的に活用する考え方です。

例えば、浴槽を無くしてシャワーだけにしたり、料理を電子レンジだけでするのを念頭にガスコンロをなくしたりして、家賃を安く抑えた物件が人気だということです。

不動産ポータルサイト運営会社 中山登志朗さん
「今後も、都市部での家賃が下がる可能性は極めて低い。家賃を抑えるために条件を下げてでも生活を守ろうとしている人が増えている」

手取りも伸び悩む 5年前から約2万円の減少

物価高が続く中、給料から税金と社会保険料を差し引いた「手取り」を示す「可処分所得」も伸び悩んでいます。

ことし7月に公表された、厚生労働省の「国民生活基礎調査」では、おととし時点で、1世帯あたりの「可処分所得」の平均は、415万6000円でした。

これは5年前の2018年と比べると、およそ2万円の減少で、5年間の推移でみてもほぼ横ばいとなっていました。

FPに相談相次ぐ「個人でできる節約には限界」

物価高の影響が続く中、お金のプロとされるファイナンシャルプランナーのもとには、家計を見直したいと相談に訪れる人が増えています。

東京・中央区のファイナンシャルプランナーのもとには、去年から家計の見直しなどの相談に訪れる人が増えているほか、将来に備えるための資産運用のセミナーでは、参加希望者が殺到するということです。

今月19日も八王子市の30代の夫婦が家計の見直しの相談に訪れていました。結婚6年目で会社員として勤続13年の夫と看護師の妻の手取りは、あわせて850万円ほどで、昇給に応じて社会保険料が増える一方、手取りは大きく変わらず、暮らしは厳しくなっているといいます。

ガソリン代を抑えるため、車通勤から自転車に変えたり、家庭菜園をして食費を抑えたりしていますが、節約には限界を感じています。また将来への備えとして、貯蓄もしていますが、物価高で支出がかさむ中、思うように増えていかないといいます。

相談に訪れた女性
「生活はできていますが、決して余裕があるわけではありません。将来的には子どもを授かって、マイホームを持ちたいという夢がありますが、終わりが見えない物価高にどんどん家計が厳しくなっていると感じています」

ファイナンシャルプランナー 清川英哲さん
「手取りが増えない中、なんとかお金を増やしたいという相談が相次いでいます。個人でできる節約には限界があり、正しい知識をもとに資産運用をしていかないと物価高には対応できない」

専門家「所得底上げへ長期的な戦略必要」

手取りが伸び悩む理由や現状について、経済政策に詳しい明治大学の山田知明教授に聞きました。

明治大学 山田知明教授
「調査時点のおととしでは一部の企業でしか賃上げが始まっていないほか、年金暮らしの高齢者などもいて全体的に手取りが増えていないのではないか。現在も、手取りは大きく増えていないとみられる中、さらに物価高が追い打ちをかけていて、暮らしの厳しさが増している」「長いスパンでみたとき、GDP=国内総生産はあがっているのに、手取りが増えないというのは異常事態ともいえるおかしな状況だ。手取りが増えないと、結婚が子育てを諦める若い世代が相次ぎ、少子化を加速化させる要因となりかねない。根本的に解決するためには所得の再分配ではなく、国民全体の所得を底上げするような長期的な経済成長の戦略を考える必要がある」

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