
熱中症の発生場所 「道路」の割合が増加傾向 データ分析で判明
通勤通学や買い物など、私たちが日常使っている「道路」での熱中症に改めて注意が必要です。国が公表している熱中症患者が搬送された「発生場所」のデータをNHKが分析したところ、「住居」が最も高い割合を占めた一方で、「道路」の占める割合が年々、増加傾向にあることが分かりました。自治体別では東京が最も増えていて、専門家は、炎天下では道路のアスファルトの温度は60度以上にもなるうえ、都市部は徒歩で移動する機会も多いとして注意を呼びかけています。
記録的な暑さが続く中、熱中症で搬送された人の数はことしは5月から今月17日までの累計で7万5300人余りにのぼり、過去最多だった去年に匹敵するペースとなっています。
総務省消防庁は全国の熱中症による救急搬送の状況について2017年から熱中症が発生した場所を「住居」「仕事場」「教育機関」「道路」など8つに分類して集計していて、NHKは今月17日までの9年分のデータをもとに、どこで熱中症が発生しているか、傾向を調べました。
それによりますと、最も割合が高かったのはいずれの年もエアコンの適切な利用など、注意が呼びかけられている「住居」で、ことしは39.5%でした。
次いで「道路」が19.7%となっています。
一方で、2017年と比べてそれぞれの割合がどれだけ増えたのか、変化を見てみると、「住居」が2.5ポイントの増加だったのに対し、歩道などを含む「道路」は6.2ポイント増加し、8つの発生場所のなかで最も大きく増加していました。

そのほかの学校などの「教育機関」や道路工事や農作業などを含む「仕事場」など、6つの発生場所は横ばいか、または減少していました。
さらに、「道路」の割合を都道府県別で見てみると、東京が最も増加し、2017年の13.5%からことしは27.9%と14.4ポイント増えていたほか、徳島で12.6ポイント、京都で11.6ポイント、大阪で9.2ポイントなど44の都道府県で増加していました。
熱中症に詳しい埼玉慈恵病院の藤永剛副院長は「近年の気温の上昇によって、炎天下では道路のアスファルトの温度が60度以上になる場合もある。建物やガラスなどからの照り返しも加わり、熱中症の危険性が高まっている。特に都市部では駅やバス停に行く間など炎天下を歩くことも多く、各自の対策だけでなく、自治体の道路の環境整備も必要だ」と指摘しています。
神奈川の病院 “道路で熱中症”の患者が例年より目立つ

神奈川県川崎市にある病院の救急現場では、連日、熱中症の疑いで救急搬送される患者が相次ぎ、ことしは5月から1日に平均3人ほど、今月に入ってからは多い日には6人ほどが運ばれてくるということです。
医師によりますと、救急搬送されてきた人は自宅からの高齢者が最も多いということですが、ことしは道路上で発見されて運ばれてくる若い人が例年より目立つということです。
この病院に先月運ばれてきた人の中には、20代の男性が、朝、出勤の途中に頭痛や脱力状態になって道路上に座り込んでいたケースがあったほか、配達員の30代の男性が、炎天下で4時間ほど配達をしたあと、バイクの運転中にめまいなどの症状が出て道路上で1時間ほど動けなくなったケースがあったということです。
医師によりますと、2人はいずれも前の日の夜から食事をせず、水分補給が十分でなかったため、脱水状態となり熱中症になったとみられるということです。
新百合ヶ丘総合病院救急センターの伊藤敏孝センター長は「特に都市部では、公共交通機関に乗る前や乗った後も歩かなくてはいけないので、若い人でも通勤途中などに道路上で熱中症になる人が多く重症化する可能性もある。搬送された人で『水分をとった』と話す人もいるが、話を聞くと全然、量が足りていない。暑さが続くので、食事や水分をしっかりとって規則正しい生活をするほか、外出中につらくなったら近くのコンビニなど涼しいところでこまめに休憩を取ってほしい」と話していました。
“日陰が多くなるルート”を表示するアプリ

外出するときに少しでも涼しい場所を歩いてもらおうと、スマートフォンのアプリの中には日陰が多くなるルートを表示する機能があります。
このアプリの機能を開発したのは出発地から目的地までの経路を探す「経路探索」のサービスを提供する都内のIT企業です。
社員の「夏の暑い日ざしを避けたい」というアイデアをもとに、自社で提供しているウォーキング用のアプリを改良して、2022年に日陰となる場所を全国の地図上に表示する機能を追加したということです。
太陽の位置と建物の高さから日陰を割り出す仕組みで、その後、目的地まで日陰が多くなるルートを表示する機能や、自治体が指定している冷房が効いた「クーリングシェルター」や、水飲み場や給水機のある場所を表示する機能も加えられました。
このIT企業の高橋雅士事業部長は「日傘だけだと照り返しなどが防げない場所も出てきます。ぜひ日陰を歩いてもらい、安全に移動してほしい」と話していました。
埼玉 熊谷 道路で暑さ対策

今月5日に日中の最高気温が40.7度を観測した埼玉県熊谷市では、市内の道路での暑さ対策が行われています。
このうち、市内の3か所の交差点には信号待ちをする人を直射日光から守ろうと歩道に「藤のパラソル」と呼ばれる藤棚が設けられています。
今の時期は一面に葉が生い茂り、通りがかった人が日陰となった場所で足を止めて信号が変わるのを待っていました。
熊谷市によりますと市内には街路樹が少なく少しでも市民に涼しんでもらおうと、2014年に設置したということです。
また、市役所前のバス停には、特殊な素材が使われたテントを今月12日から22日まで設置しています。

テントの下には3人掛けのベンチが置かれていて、利用した人は「中で蒸れることがなく、外にいるより涼しいです。疲れたらすぐ日陰に行きたいのですごくありがたいです」と話していました。
熊谷市では効果を確認しながらイベントや休憩所などでも活用する予定にしています。