熊本市繁華街 標高低いうえ 排水追いつかず 内水氾濫起きたか
記録的な大雨で浸水被害が出た熊本市中心部の繁華街について専門家が現地を調査をした結果、周囲よりも標高が低い場所だったうえ、記録的な大雨により排水が追いつかず、「内水氾濫」が起きたとみられることが分かりました。
専門家は地域の浸水リスクを知り、それぞれが対策を進める必要があると指摘しています。
熊本市内では、今月10日の夜遅くから雨が急激に強まり、中心部にある住宅街や繁華街などでも浸水被害が相次いでいます。
気象災害が専門の山口大学の山本晴彦名誉教授は、13日、これらの被害について浸水の痕を確認したり住民から話を聞いたりして、浸水が発生した要因を調べました。
このうち、熊本市中央区の下通ではアーケード街の一部が、当時、路面が10センチ余り冠水していました。
冠水した場所は標高が周囲よりも低く、くぼ地のようになっていて、200年に1度程度の記録的な大雨が降り、雨水が低い場所に集まり排水が追いつかなかったため、「内水氾濫」が起きたとみられるということです。

今回調査した場所は、熊本市が公表している記録的な大雨になった際の内水氾濫の浸水想定区域図でも、リスクが指摘されているということで、山本名誉教授は「短時間の記録的な大雨に対しては、排水機能をいくら向上させても対応は難しい。地域のリスクを知って、止水板を設置するなどそれぞれが備える必要がある」と指摘しています。
また、繁華街から1キロ余り離れた熊本市中央区や西区の住宅街では広く浸水被害が起きて、浸水が深いところでは1メートル20センチほどに達し住宅が床上まで水につかったところもありました。
近くには井芹川が流れていて川の周辺には、堤防から水があふれたことを示す痕跡が残っていたということです。

山本名誉教授は、この地域では堤防から水があふれるとともに、降った雨が排水されない「内水氾濫」も起きて一帯が水につかったのではないかと指摘しています。
山本名誉教授は「過去の地図を確認すると周辺は水田や畑が広がっていたとみられ、標高が低く水はけが悪かった可能性がある。ハザードマップを見るとともに、その土地の成り立ちも知り備えておくことが重要だ」と指摘しています。
記録的な大雨で 川の水位も短時間で急激に上昇
熊本市では、経験したことのないような記録的な大雨が降り、川の水位も短時間で急激に上昇しました。
気象庁によりますと、熊本市では10日の夜遅くから雨が急激に強まり、11日の午前1時までの3時間には223ミリの雨が降りました。
これは、1976年に統計を取り始めてから最も多い雨量で、8月の平年1か月分を上回る記録的な大雨となりました。
大雨となった時間帯、流域で浸水被害が相次いだ熊本市内を流れる「井芹川」では水位が急上昇していました。
熊本市花園の観測点では
▽10日午後10時の水位は0.36メートルでしたが、
▽1時間後の午後11時には一気に3.08メートルに達しました。
その後、「氾濫危険水位」を超え、
▽11日の午前1時には4.16メートルにまで達していました。
水につかった場所の標高 周辺よりも2~3メートルほど低い
今回、浸水被害が起きた熊本市中心部の繁華街の標高を国土地理院のホームページで確認したところ、水につかった場所の標高は11メートル前後で、周辺よりも2~3メートルほど低くなっていることがわかります。
国土交通省熊本河川国道事務所によりますと、この付近はかつて川が流れていた場所だとみられるということです。

熊本市が公開している記録的な大雨になった際の内水氾濫の浸水想定区域図でも、浸水が起きる可能性があるエリアとなっています。
また、熊本市中央区や西区の住宅街で浸水被害が相次いだ場所は、近くを流れる井芹川などが氾濫した場合のハザードマップで、浸水が想定されている範囲と一致した地域もありました。
【動画】繁華街の防犯カメラに写った浸水の様子
記録的な大雨で広い範囲で浸水被害が起きた、熊本市中心部の繁華街の防犯カメラには、急速に浸水していく様子が写っていました。
熊本市中央区下通1丁目の酒屋に設置された防犯カメラには、11日午前3時ごろ雨が激しく地面を打ち付けている様子がわかります。
この時点ではまだ道路に水たまりができているほどですが、わずか20分後ほどで周囲を歩く人のくるぶしほどの高さまで浸水していき、店の前のゴミ置き場のゴミ袋が流されている様子が写っています。