農林水産省は、8月末までに収穫されたことしの新米の品質検査の結果を発表し、最も評価が高い「1等米」の割合は66.5%で、去年の同じ時期を上回りました。この夏は各地で記録的な高温になりましたが、この時点でのコメの品質はおおむね例年並みだとしています。 コメの等級は法律に基づいて見た目や品質などをもとに4つの区分に分けられていて、最も評価が高い「1等米」は、JAなどによる買い取り価格が高くなる傾向にあります。 農林水産省は30日、ことしの新米として初めてとなる検査結果を発表し、8月末までに収穫され検査を終えた全国のコメのうち、1等米の割合は66.5%で去年の同じ時期を2.8ポイント上回りました。 農林水産省によりますと、この夏は各地で記録的な高温になり、コメが白く濁ったように見えるケースも報告されているものの、全体としてこの時点での品質はおおむね例年並みだとしています。 都道府県別の1等米の割合は▽この時点で検査量が最も多かった千葉県が87.9%、▽次いで多い茨城県が71.6%で全国平均を上回った一方、▽主力産地の新潟県は序盤の段階として44.1%にとどまっています。 ことしの新米の検査結果は今後、毎月発表されますが、農林水産省は今回の検査量が年間に占める割合は全体の6%余りだとしていて、「今後、主な産地での検査が本格化していくが、9月の状況を聞き取ったところ、1等米の割合は今より高くなるのではないか」としています。 1等米の割合が高くなると、精米後のコメの流通量も増えて価格は安定するとされていることから、今後の動向が焦点になります。 専門家「考えていたより順調」 コメの品質に詳しい新潟薬科大学の大坪研一特任教授は、8月末の「1等米」の割合が去年の同じ時期を上回ったことについて、「暑さが続き、一部で水不足の地域もあり心配していたが、最後の段階で雨が降り、考えていたより順調だったという印象だ」と話していました。 今後のコメの品質については「これから遅い時期に実るコメの検査が進んでいくが、いま出ている品種より1等米の割合は上がる傾向にある」としています。 コメの品質が価格に与える影響については「1等米の割合が上がれば、精米の歩留まりがよくなる。そこで主食用米の生産量も増えれば需給が緩和され、価格はだんだん安定した方向に向かうのではないか」と話していました。 暑さに強い品種に切り替えるところも この数年の記録的な高温を受けて、コメの産地の中には暑さに強い品種に切り替えることで、品質を安定させようというところも出ています。 茨城県西部の筑西市などを管内とする「JA北つくば」では8月下旬以降、地域の農家から主力のコシヒカリなどの新米の出荷が本格化していていて、その品質検査がピークを迎えています。 JAによりますと、この夏の記録的な高温の影響で白く濁って見えるコメが多く、9月22日時点で「1等米」の割合は全体の10%にとどまり、去年の同じ時期より13ポイント低くなっています。 このJAの管内では、暑さに強い品種「にじのきらめき」の作付けを進めています。 この品種に限ると1等米の割合は53%に上昇するということで、管内の作付面積は来年、今のおよそ1.6倍に増える見通しだということです。 コメ農家の臼井俊さんは「毎年暑くなり、影響を感じている。人よりも多くいいものを収穫したいというのが目標なので、高温に耐性のある品種の導入を進めて対応していきたい」と話していました。 JA北つくば営農経済部の小島大季係長は「全体としては厳しい状況だが、なるべく品質がいいものを継続して生産できるよう取り組んでいきたい」と話していました。