ビール販売強化の動きが活発 来秋の“ビール減税”を前に
ビール大手のサントリーは9月29日、いわゆる「第3のビール」にあたる主力商品を来年10月以降、「ビール」につくりかえて販売する方針を発表しました。
来年の酒税改正でビールとそのほかのビール系飲料の税率が統一されるのを前に、各社の間では減税対象となるビールの販売を強化する動きが活発になっています。
サントリー “第3のビール” をビールにつくりかえへ
サントリーは29日、都内で会見を開き、第3のビールにあたる主力商品「金麦」を、来年10月以降、ビールにつくりかえて販売する方針を明らかにしました。
この商品は会社が販売するビール系飲料の数量の半数を占める主力商品ですが、ビールにつくりかえるため、原料の比率などを大幅に見直すということです。
ビールの税率は酒税改正に合わせて段階的に引き下げられていて、来年10月の改正ではビール系飲料の税率は54.25円に統一されます。
こうした中、ビールをめぐっては、キリンビールが去年4月に17年ぶりに新ブランドを発売したほか、アサヒビールがことし4月、新ブランドを発売するなど、各社の間で販売を強化する動きが活発になっています。
サントリーとしては今回、主力商品のブランド名は変えずにビールにつくりかえることで、拡大を見込むビール市場のニーズを獲得するねらいがあります。
会社によりますと、新たな商品は価格帯の安いビールとして販売していきたい考えで、現在の商品よりは増税分の7円ほど価格が上がることを想定しているということです。
サントリーの多田寅常務は「販売量があるブランドをビールに変えていくのは非常に大きな決断だったが、ビール市場における価格帯の安い市場の活性化がビール市場全体の活性化にもつながると考えている」話していました。
酒税改定の経緯
ビール系飲料をめぐっては、発泡酒や第3のビールの普及に伴い、税の公平負担の観点から2020年以降、税率の改定が段階的に行われています。
改定が始まる前は、350ミリリットル換算でビールの税額が77円、第3のビールの税額が28円と49円の差がありましたが、2020年の1回目の改定でビールの税率が引き下げられた一方、第3のビールが引き上げられたことでその差は32.2円に縮小しました。
2023年の2回目の改定では、ビールの税率が下がった一方、第3のビールは引き上げられて、税額の差は16.36円とさらに半分ほどに縮小しました。
この際、第3のビールと発泡酒の税額は同じになりました。
来年10月の3回目の改定では、ビール系飲料の税額は54.25円に統一されます。
ビール系飲料の市場規模は縮小傾向
ビール各社の推計によりますと、ビール、発泡酒、第3のビールを含むビール系飲料の市場規模は1994年をピークに縮小傾向が続いていて、去年はピーク時のおよそ6割の規模になりました。
一方、2020年と23年に行われた酒税改正では、いずれの年も最も高いビールの税率が下がり、第3のビールの税率が上がったことで、税額の差が縮小。
こうした状況を受けてビールの需要が再び高まり、ビールの出荷量はこのところ増加傾向が続いています。
これに対して改正前に比べて最も税率が上がる形となった第3のビールは酒税改正が行われて以降、出荷量の減少傾向が続いています。
スーパーでは
横浜市保土ケ谷区にあるスーパーの売り場ではビールを15種類、発泡酒といわゆる「第3のビール」を合わせて9種類販売しています。
店によりますと、これまで割安な発泡酒が人気だったため、ビールよりも多くの種類を販売していましたが、おととし、ビールの税率が下がって以降、しだいにビールの売れ行きが伸びてきたため、ことしに入ってからは取り扱うビールの種類を増やしたということです。
店の仕入れ担当者は「酒税改正までは発泡酒が圧倒的に人気で、ビールの2倍売れていたが、最近は売り上げの差が縮まっている。消費者のニーズにあわせてビールの種類をさらに充実させていきたい」と話していました。
消費者の選択は
酒税の改正でビールとビール系飲料の税額の差が縮まっていることについて、横浜市内で話を聞きました。
50代男性の会社員
「スーパーに行ったときにビールと発泡酒の価格の差が縮まったことを知った。昔は発泡酒だったが、やっぱりビールの泡立ちが好きだ」
60代女性
「価格の差がそれほどなくなったので今はビールを買う。少しでもおいしい商品を買いたい」
建設業界で働く30代男性
「物価は高くなっているが仕事を終えて毎日のように飲んでいるので、今は少しでも財布に優しい発泡酒を選んで買う」
ノンアルコール飲料の販売強化の動きも活発に
ビールメーカーの間では、健康志向の高まりなどを背景に市場の拡大が続くとして、ノンアルコール飲料の販売を強化する動きも活発です。
ビール大手の「キリンビール」は9月、ノンアルコールビールの新商品を発表しました。
ビールと同じ製法で製造した後、アルコールを抜く新しい手法を取り入れたということで、従来の手法で製造したものよりビールのうまみなどを保つことができたとしています。
キリンビールマーケティング本部の木村正一主幹は「価値観やライフスタイルの多様化などが進む中、今後伸びるであろうノンアルコール市場でポジションを確保していくことはビジネス上の優先順位が高い」と話していました。
メーカーの間では、このほかにもアサヒビールが去年、サントリーが今月、それぞれノンアルコールビールの新商品を発売するなど、新たな需要を掘り起こすための取り組みが活発になっています。
国内のノンアルコール飲料の市場は健康志向の高まりなどを背景に拡大傾向が続いていて、サントリーによりますと、去年の市場規模は数量ベースで10年前と比べておよそ1.6倍に拡大しています。