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福島第一原発の処理水放出 基準下回るも 長期の安全管理が課題

福島第一原発 処理水

福島第一原子力発電所の廃炉作業で課題となっているタンクに保管された処理水の海への放出が始まって24日で2年となり、これまでのところ、原発周辺の海水から検出されたトリチウムの値は基準を大きく下回っています。

原発の敷地内では空になったタンクの解体も行われていますが、東京電力は処理水の海への放出は2051年まで続くとしていて、放出の監視や原発周辺の海水のモニタリングなど、長期間にわたり安全管理を続けていくことが求められます。

海や水産物など環境への影響は?【Q&A】

福島第一原発では、汚染水を処理したあとに残るトリチウムなどの放射性物質を含む処理水が敷地内の1000基余りのタンクで保管されていて、東京電力は政府の方針に従い、2023年8月24日から基準を下回る濃度に薄めた上で海に放出しています。

この2年間で13回の放出が完了し、累計の放出量は10万1000トン余りとなっていて、現在は25日までの計画で14回目の放出が行われています。

東京電力や国などは、原発周辺で海水を採取しトリチウムの濃度を分析していて、これまでに検出された最大値は1リットルあたり61ベクレルと、東京電力が自主的に放出の停止を判断する基準の700ベクレルや、WHO=世界保健機関が定める飲料水の基準の1万ベクレルを大きく下回っています。

こうした処理水の放出に伴い、福島第一原発では、敷地南側の大半を占め、廃炉作業に支障をきたすおそれがあると指摘されているタンクの解体作業が進められています。

東京電力によりますと、ことし2月からの約半年で、直径約9メートル、高さ約12メートルの円筒型のタンク11基の解体が完了しました。

原発の敷地内には今月7日時点で約127万トンの処理水がタンクで保管されていますが、東京電力は2030年度ごろまでに約40万トンを放出してタンクの解体を進め、空いたスペースに「核燃料デブリ」の取り出しに必要な施設などを整備する計画です。

ただ、「核燃料デブリ」の冷却や建屋に地下水などが流れ込む影響で、今も1日あたり70トンのペースで汚染水が発生し、それに伴い、新たに処理水も生じることなどから、東京電力は処理水の総量を減らすには時間がかかり、処理水の海への放出は2051年まで続くとしていて、放出の監視や原発周辺の海水のモニタリングなど、長期間にわたり安全管理を続けていくことが求められます。

処理水放出 背景と手順は

政府は2021年、福島第一原子力発電所の敷地が処理水をためるためのタンクでひっ迫し、廃炉作業を進める上で処分は避けて通れないとして、処理水を基準を下回る濃度まで薄めた上で、海に放出する方針を決めました。

この方針に従い東京電力は2023年8月から、処理水に含まれるトリチウムの濃度を、国の基準の40分の1にあたる1リットルあたり1500ベクレルを下回るように大量の海水と混ぜ合わせた上で、原発から1キロほど離れた海中から放出しています。

東京電力によりますと、1年間に放出するトリチウムの総量は、原発事故が起きる前に福島第一原発で目安とされていた22兆ベクレルを下回るように設定され、昨年度1年間に放出されたトリチウムの総量は約12.7兆ベクレルだったということです。

処理水の放出に伴い、東京電力は原発から3キロ以内の海域で放出の期間中は毎日、放出していない期間は週に1回、海水を採取してトリチウムの濃度を分析していて、海水1リットルあたりのトリチウムの濃度が700ベクレル以上になった場合は、放出を停止することにしています。

廃炉の最新現場は

今月20日、福島第一原子力発電所では、14回目となる処理水の放出が行われていて、放出を管理する集中監視室では、東京電力の社員がタンクの水位や、処理水を薄めるために混ぜ合わせる海水の量に異常がないか監視していました。

さらに、この部屋には緊急時などに処理水の放出を停止する弁を操作する機器があり、先月30日には福島県の沿岸部に津波注意報が出されたことを受けて、事前に定められた手順に従い、放出を手動で停止しました。

また、処理水放出後の海水モニタリングの一環として、「化学分析棟」という施設では特殊な薬品を使って、原発周辺で採取した海水に含まれるトリチウムの濃度の分析が行われていました。

福島第一廃炉推進カンパニー「建設・運用・保守センター運用部」の田村章さんは「処理水の放出は長期にわたる取り組みなので、一つ一つの手順を確認しながら緊張感を持って安全確保に努めたい」と話していました。

一方、敷地内では処理水の放出に伴い、空になったタンクの解体作業も行われていて、作業員が重機を使って直径約9メートル、高さ約12メートルのタンクを解体していました。

これまでに11基のタンクの解体が終わり、約1600平方メートルの空きスペースが確保されたということです。

処理水の課題と今後は

福島第一原子力発電所でトリチウムなどの放射性物質を含む処理水とそれを保管するタンクは、最大の難関とされる「核燃料デブリ」の取り出しなど、廃炉作業を進める上でも大きな支障になるおそれがあると指摘されてきました。

福島第一原発で発生するトリチウムなどの放射性物質を含む処理水は、今月7日時点で敷地内にある1000基余りのタンクで保管され、処理水の量は約127万トンとなっています。

東京電力によりますと、こうしたタンクは原発の敷地南側の大半を占め、国と東京電力は処理水を基準を下回る濃度まで薄めて海に放出した上で、空になったタンクを解体し、空いたスペースに「核燃料デブリ」の取り出しに関連する施設などを設置する計画を示しています。

処理水の海への放出で、タンクで保管する処理水は減少する一方、「核燃料デブリ」の冷却や建屋に地下水などが流れ込む影響で、今も1日あたり70トンのペースで汚染水が発生し、それに伴い新たに処理水も生じています。

このため、タンクで保管する処理水の減少量は、海に放出した処理水の量を下回っています。

東京電力によりますと、この2年間で13回の処理水の放出が完了し、累計の放出量は10万1000トン余りだったのに対し、タンクで保管する処理水の減少量は約5万8000トンでした。

タンクで保管する処理水の量は、放出が始まる前と比べて約4%減少したということです。

こうした影響で空になるタンクも限られ、ことし2月からの1年余りで解体に着手できるタンクは21基となる見込みです。

東京電力によりますと、敷地内には1000基余りのタンクがありますが、すべてのタンクの解体が終わる時期は未定で、処理水とタンクの管理は引き続き課題となっています。

また、解体されたタンクは廃棄物となりコンテナに入れられた状態で保管されていますが、敷地内で処分する必要があることから、原子力規制委員会は、解体が進むにつれ廃棄物の量が増えるとして、具体的な処分方法を検討するよう東京電力に求めています。

漁業者「今後も安全に」

放出を始めて2年となる中、福島県の漁業者からは、今後も安全に行うよう求める声が聞かれました。

福島県相馬地方の沖合では今月からシラスの漁が始まっていて、22日、相馬市にある松川浦漁港では、漁を終えた16隻の漁船が港に戻り、漁業者とその家族らが銀色に光るシラスを水揚げし、港は活気づいていました。

この地域で50年以上にわたりヒラメやイカなどの漁を続けている相馬市の漁業者 松本浩一さん(70)は、福島第一原発の事故後、一時、漁の自粛を余儀なくされましたが、その後復興に向けて漁を続けてきました。

処理水の海への放出が始まり2年となる中、松本さんは「放出される前は、新たな風評被害や魚への影響がないか不安が大きかったが、2年がたち買い控えも感じなくなり、海や水産物のモニタリングで放射性物質による悪影響も出ていないので、心配は少なくなった」と話しました。

その上で、「ただ地元で漁業をしていて、不安が全くないということではない。今後も放出を安全に行い、一日も早く廃炉ができる形にしてほしい」と話していました。

《韓国 中国のこれまでの対応は》

韓国では、東京電力福島第一原発の事故を受けて、福島県など8県の水産物の輸入が禁止され、現在も解除の見通しは立っていません。

イ・ジェミョン(李在明)大統領は、かつて野党の代表として処理水の放出について、日本政府や当時のユン・ソンニョル(尹錫悦)政権の対応を厳しく批判してきました。

おととしの放出開始時には、処理水を「核汚染水」と呼んだうえで、「日本は人類最悪の環境災害の道を選んだ。第2次世界大戦のとき、銃と刀で太平洋を踏みにじったとすれば、いまは放射性物質で人類全体を脅かす形だ」と非難しました。

こうした影響もあり、当時韓国では水産物を買い控える動きが出たほか、放出が始まる直前には、海水を天日で干した塩が相次いで品切れ状態になるなど、混乱もみられました。

一方、23日に行われた日韓首脳会談の共同記者発表などで、水産物の輸入禁止措置について韓国側からは触れられず、大統領府のウィ・ソンラク(魏聖洛)国家安保室長は24日の記者会見で、「会談で水産物の問題は具体的に議論されなかった」と明らかにしました。

対日関係に詳しい韓国政府の元高官は「国民感情が整っていないうえ、解除には大統領が相当な政治力を費やす必要がある。禁止措置の解除はしばらく無理だろう」と指摘しています。

中国への輸出再開 時期は見通せず

中国の税関総署はことし6月、福島県や宮城県、東京都など、10都県を除いて、日本産水産物の輸入を再開すると発表しました。

先月には、北海道と青森県にある合わせて3業者の施設の再登録を認め、日本産のマグロやホタテ、カニなど、計449種類の水産物の輸入を許可しました。

輸出の再開には、日本の政府機関が発行する放射性物質の検査に関する文書などが必要ですが、農林水産省によりますと一定の期間が必要で、具体的な輸出再開の時期は見通せないということです。

上海の日本料理店は期待

中国・上海にある日本料理店は、刺身やすしのネタなどに長崎県産のマグロなどを使っていましたが、おととしの輸入停止後は、スペイン産などを使っています。

30代の客は「消費者として中国の選択を支持したい」と、輸入再開に向けた動きを歓迎していました。

別の30代の客は「放出の問題があったので、少し心配です。水産物に影響があるかもしれない」と話していました。

経営する毛雲※ヒョウさんは、「中国の客の中には、日本の海産物を食べない、日本料理店には行かないという人もいて、大きな影響があり、この2年は大変でした。中国政府がチェックするなら安全だと思います。日本産水産物の輸入が再開したら、もちろん使いたいです」と期待を示しました。

※ヒョウは、「風」へんに「火が3つ」の「えん」

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