
東京 熱中症疑いの搬送 過去最多ペースで増加 救急隊に密着
厳しい暑さが続く中、東京都内でこの夏、熱中症の疑いで搬送された人はあわせて6700人余りと、過去最多だった去年を上回るペースで増えていることが分かりました。東京消防庁は、お盆が明けてからも年齢や場所にかかわらず症状を訴える人が相次いでいるとして、対策の徹底を呼びかけています。

東京消防庁によりますと、都内でことし6月以降、熱中症の疑いで搬送された人は、8月17日までに速報値で6727人に上っています。
これは、6月から9月までの搬送者の数が過去最多(7996人)となった去年の同じ時期を上回っているということです。
ことしの搬送者を年代別に見ますと、
▽70代以上が3289人と最も多く、次いで
▽60代が706人、
▽20代が657人、
▽50代が644人、
▽40代が466人、
▽30代が450人、などとなっています。
搬送者のうち、34人が重篤、150人が重症で、この中には高齢者だけでなく、10代や20代の若い世代も含まれているということです。
また、熱中症の疑いで死亡するケースも相次いでいます。
東京都監察医務院によりますと、東京23区ではことし6月以降、20日までに30代から90歳以上までのあわせて90人が亡くなりました。
このうち室内で亡くなった人は86人で、エアコンがあったものの使用していなかったケースが、およそ7割の60人に上っていたということです。
お盆が明けてからも都内は厳しい暑さが続き、8月18日から21日までに、およそ370人が熱中症の疑いで搬送されています。
東京消防庁は、年齢や場所にかかわらず症状を訴える人が相次いでいるとして、のどが渇く前にこまめに水分を補給することや、室内ではエアコンを適切に使用することなど、対策の徹底を呼びかけています。
搬送に追われる救急隊 お盆明けも高い救急車の出動率

東京消防庁には、日中の時間帯に限って、都心部などで集中的に活動する救急隊があります。
NHKは21日までの3日間、この救急隊に密着し、熱中症の疑いがある人の搬送を担う最前線を取材しました。
東京消防庁の「本部機動救急隊」は、消防署の管轄にとらわれず、人が多く集まる都心部を中心に、熱中症や感染症、それに多数のけが人がいる事故などで救急搬送が必要な人たちの対応にあたっています。
5つの隊にあわせて60人が所属していて、全員が救急救命士の資格を持っているということです。
NHKは今回、このうち日中の時間帯に限って集中的に活動する「本部機動デイタイム救急隊」を取材しました。
5人の隊員が所属し、8月は午前8時から午後5時前まで、新宿区にあるビルの1室などを拠点に活動しています。
部屋では、通報が入ると、本部の総合指令室からその内容が伝えられ、隊員たちがパソコンに表示された地図を確認したあと、すぐに救急車に乗り込み、現場へ向かっていました。

この救急隊では、平均で1日当たり6件ほどの救急搬送を担っているといいます。
今回取材した3日間では、あわせて15人が搬送され、女性3人が熱中症の疑いだったということです。
このうち、20日の昼すぎには、文京区の屋外で50代の女性が倒れたと通報があり、救急隊は現場におよそ5分で駆けつけて女性を担架に乗せ、近くの病院へ搬送しました。
一緒にいた夫によりますと、女性は路上で突然うずくまって動けなくなり、救急隊の処置を受けるまでは、会話をしたり、水を飲んだりすることもできない状態だったといいます。
救急車の車内はエアコンが効いた環境で、隊員たちは女性に話しかけながら熱や血圧を測ったり、搬送先の病院に電話で状況を伝えたりしていました。
女性は、病院で検査したところ脱水症状があり、医師からは「熱中症の可能性が高い」と説明を受けたということです。
女性は点滴などの治療を受け、その日のうちに帰宅しました。
夫は、「妻がこんなことになるのは初めてでびっくりしました。熱中症は誰でもなりうるのだという意識を日頃から持っておくことが大事だと感じました。厳しい暑さはしばらく続くので、日中に屋外へ出ることは控えようと思います」と話していました。
東京消防庁によりますと、お盆が明けてからも日中は救急車の出動率が高い状態が続き、80%を超えた時などに出される「救急車ひっ迫アラート」を、22日にかけて3日連続で発表するなど、対応に追われているということです。

東京消防庁救急部の小林孝之 救急指導係長は「熱中症はこれまで高齢者がなりやすいとされてきたが、この暑さの中では年齢や屋外・屋内にかかわらず症状が出るおそれがある。意識がなくなったり動けなくなったりした場合は、脱水症状が並行して進んでいることがあるので、すぐに救急車を呼んでほしい。お盆が明けても厳しい暑さは続いており、いつどこで熱中症になってもおかしくないという意識で、水分補給などの対策を徹底してほしい」と話していました。
東京消防庁は、症状が重くなく、救急車を呼ぶかどうか迷った場合は、
▽インターネットの『救急受診ガイド』や
▽専用の相談ダイヤル「#7119」
に問い合わせるなど、適正な利用を呼びかけています。
搬送された50代女性 “初めての症状で怖かった”
20日、東京・文京区で熱中症の疑いで搬送された50代の女性が治療を受けて帰宅したあと、NHKの取材に応じました。
女性はおとといの午後0時半ごろ、スーパーに立ち寄った後、外に出て数分歩いたところで気分が悪くなり、その場に座り込んだといいます。
この時、東京都心の気温は34.1度でした。
一緒にいた夫が水をくれたものの、一口飲んだところで意識がもうろうとなって倒れ、多量の汗と手足のしびれに襲われたということです。
女性はこの時の状況について、「少し前まで涼しいところにいたので、よけいに外の暑さを感じました。ちょっとつらいなと思ったら、すぐにしびれなどの症状が出て、自分でもどうしたらいいのか分からなくなりました。そんな状態になるのは初めてだったので、この先どうなってしまうのだろうという怖さがありました」と話しています。
夫がすぐに救急車を呼び、女性は駆けつけた救急隊員に担架で運ばれて、車内で手当てや検査を受けました。
エアコンが効いた環境で横たわり、隊員とやりとりしているうちに症状はしだいに落ち着いてきたといいます。
搬送先の病院で血液検査を受けたところ、脱水症状があり、熱中症と診断されたということで、女性はそのまま点滴などの治療を受けました。
現在は回復し、自宅で静養しているということです。
女性は、倒れた当日はもともと体調がすぐれませんでしたが、水分が足りていないという自覚はなかったといいます。
女性は、「夫とよくゴルフにも出かけていて、自分は暑さに強いと思っていたのでびっくりしました。もしあの時ひとりでいて、誰も声をかけてくれなかったらどうなっていたのだろうと思います。自分は大丈夫と過信せず、これまで以上に気をつけて生活しなければならないと感じました」と話していました。
専門家 “一度暑さに慣れても 耐性が落ちるので注意を”

お盆が明けた後も熱中症の疑いで搬送される人が相次いでいることについて、熱中症に詳しい、日本医科大学大学院 医学研究科救急医学分野の横堀將司 教授は、「体はいちど暑さに慣れても、1週間から2週間すると耐性が落ちてくると言われている。先週は雨が多く気温も下がったが、その後、急激に気温が上がったことで、熱中症の症状が出やすい状況になったと考えられる。今後も台風や豪雨のあとの気温の上昇には注意が必要だ」と指摘します。
その上で「高齢者が室内でエアコンを使用せずに搬送されてくるケースが目立つが、若い人でも屋外で仕事や作業をしていて搬送されることが多い。作業する場合はこまめに休んで水分を補給するほか、できれば2人でペアを組み、お互いの体調を気にしてほしい。また、寝不足や疲れが残っている場合も症状が出やすいので、体調管理をしっかり行うことが大切だ。熱中症は手足のしびれや、足がつる、なまあくびが出るといった初期症状があり、この段階で涼しいところに移動して水分を取れば、重症化しにくい。熱中症は予防できるということを認識し、対策を徹底してほしい」と話していました。