台風12号は、台風に発達する予想が発表されてからわずか6時間で発生するという、急な展開をたどりました。その背景や警戒点について専門家に聞きました。
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東シナ海にあった熱帯低気圧が短時間で台風に発達した背景について、台風のメカニズムに詳しい京都大学防災研究所・横浜国立大学の伊藤耕介准教授に聞きました。
Q.なぜ急に台風に発達したのでしょうか。
沖縄より北の部分で海面水温が高くなっているということが、九州に接近してきてから発達した原因ではないかと考えています。
沖縄より北の部分は、平年より1度ほど高く、30度という高い海面水温の領域が広がっています。むしろ南の海域のほうが海面水温が低くなっています。
Q.今回の台風の特徴をどうみていますか。
台風というとどうしても中心気圧とか最大風速に注目しがちで、中心気圧という意味ではそれほど強いものではないと思われるかもしれない。ですが、どれだけ雨が降るかということとは、分けて考えていただきたいです。
海面水温が高いということは、それだけたくさん空気中に水蒸気がある=雨のもとになるものがたくさんある、ということですし、移動速度が非常に遅いことで雨が強い状態が比較的長い時間持続するのではないかみられ、懸念材料かと思います。
Q.雨の降り方には様々なものがあると思います。現状ではどのようなイメージを持っていますか。
台風がどう動くかによるところはあるとは思いますが、台風の雨というのは一般的に台風の中心に近いところの一番激しい雨と、その周辺で降る、いわゆる「レインバンド」があります。
ある程度まとまった単位、100キロくらいのサイズで雨が降る領域がありますので、これは「線状降水帯」と判定されることもあります。
一つ一つは100キロスケールですが、台風が居続けることになってしまうと、南からの湿った空気の流れ込みが続き、一日もしくはそれ以上、雨が降り続けるということも可能性として考えられます。
Q.今回の台風の警戒点はどういった点でしょうか。
すでに猛烈な雨が降り始めている場所もあり、長時間にわたって強い雨が降る可能性があると思っています。
一般的に考えられることとしては、大雨でダメージを受けたような地域にさらに雨が降ることで、さらなる被害が生じることも考えられるかと思います。
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台風12号の経緯 もとは沖縄の南の熱帯低気圧
熱帯の海上で発生する低気圧を「熱帯低気圧」といいますが、「台風」は熱帯低気圧が発達して最大風速がおよそ17メートル以上のものを指します。
この台風12号は、もとは沖縄県の南の海上にあった熱帯低気圧です。気象庁は今月18日午前中、この熱帯低気圧が沖縄県の南の海上にあった時点で「今後12時間以内に台風に発達する見込みだ」と予報を発表していました。
しかし、台風には発達せず、翌日午前10時すぎには「台風に発達する可能性は小さくなった」と発表しました。上空の乾燥した空気の影響で、台風まで発達する可能性は低くなったとしています。
熱帯低気圧はその後北上し、九州の西の海上でしだいに動きが遅くなりました。
熱帯低気圧周辺の雨雲がまとまってきたことから、21日午前4時半、「今後24時間以内に台風に発達する見込みだ」と再び発表しました。
台風が発生したと発表したのは、そのおよそ6時間後にあたる午前10時過ぎでした。