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7月下旬の記録的な高温について、研究者などで作る組織は、人間活動による地球温暖化の影響がなければ、ほぼ起こりえなかったとする分析結果をまとめました。

7月は全国の平均気温が統計を取り始めてから最も高くなりましたが、下旬は記録的な高温が相次ぎ、24日には北海道北見市で39度ちょうどを観測したほか、30日には兵庫県丹波市で41.2度を観測しました。

気象学の専門家などで作る「極端気象アトリビューションセンター」は、7月22日から30日を対象に地球温暖化が進んだ、現在の気候条件と温暖化が進んでいないと仮定した状況で、上空1500メートルの日本付近の気温がどうなるか分析しました。

その結果、現在の気候条件では、今回のような高温の発生確率がおよそ3.2%と、31年に1度程度の確率で起こりうるものだったのに対し、温暖化が進んでいない場合、発生確率はわずか0.0087%で、1万1472年に1度程度となりました。

このため「地球温暖化の影響がなければ、この高温はほぼ起こりえなかった」と結論づけました。

また、北日本の高温についても先月18日から26日を対象に同様に分析したところ、現在の気候条件では発生確率が28年に1度程度なのに対し、温暖化が進んでいないと仮定した場合は955年に1度程度で、地球温暖化によって高温のリスクがおよそ34倍になったとしています。

こうした「イベント・アトリビューション」という手法は個々の気象現象について地球温暖化の影響を数値で示すことができることから世界的に注目されています。

専門家 分析結果どう見る? 今後も続く?【Q&A】

この結果をどう受け止めればよいのか。
分析を行った東京大学大気海洋研究所の今田由紀子准教授に聞きました。

Q。この結果をどう受け止めていますか。

地球温暖化がなかった昔の世界だと起こり得ないような現象を、今われわれが経験するようになっているということを意味しますので、これ自体は非常にショッキングな結果ではあります。

この10年余り、イベント・アトリビューションという研究を続けていて、当初はこういった結果が出ると、われわれも驚いていたのですが、ここ数年、温暖化がなければ発生しなかったレベルというイベントがどんどん増えてきていて、私たちも驚かなくなってきたという状況です。

身近に起こったことを通して、地球温暖化の影響を具体的に数値で知るというのは、この問題に対する実感を得ることができる、一つの良い材料になっていると思いますし、なかなかピンとこない温暖化の影響を異常気象を通してクリアにすることで、皆さんの問題意識を高めていってほしいというのがわれわれの願いです。

Q 地球温暖化の影響は今後も続くのでしょうか。

長い目でみますと、地球温暖化は今すぐ食い止められるものではないので、どんなに人間社会が努力をしたとしても、しばらくは気温が上がり続けると考えられます。そうなると、猛暑の頻度自体は長期的にはまだ増加し続けるだろうというふうに我々も考えています。

ただ、この数年、異常なくらい世界全体の気温が高く、日本の夏もすごく暑く、毎年のように記録を更新している状況になっています。

しかし、この状態は、決して地球温暖化だけのせいではないと考えています。

例えば北日本では、現実的な気候の条件ではおよそ28年に1度の確率ですが、過去30年くらいさかのぼって平年を基準とした場合、およそ133年に1度と、100年に1度のレベルを超えています。それくらい珍しいことが、ことしは起こっていたと言えます。

Q 7月の高温は、必ずしも温暖化の影響だけではないということでしょうか。

これだけ異常なことが起こる時には、地球温暖化の底上げはもちろん効いていると思うのですが、いろいろな偶然が重ならないと、さすがに去年やおととしのような異常なことにはならないだろう、というのが専門家の見立てです。

ことしの状況も含めて、まさに今、専門家がこぞって研究をしているところで、まだはっきりと結論は出ていません。もうちょっと待っていただければと思います。

Q こうした情報発信はどういう思いで行われているのでしょうか。

「極端気象アトリビューションセンター」は、ことし活動を始めたばかりで、まずは猛暑から、ということを掲げていました。

猛暑は、やはり気温の上昇がダイレクトに効く現象なので、大抵は『温暖化の影響は確実にあります』という結果になります。

一方、大雨に関しては、実はそんなにはっきり温暖化の影響が出てこないこともあります。地球温暖化のリスクについて、決して怖がりすぎてもいけないし、軽く見てもいけない。

ちゃんと科学のエビデンスに基づいて、まずはきちんと正しく理解した上で、個々の必要なアクションをとってほしいというのが、われわれからのメッセージです。

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