
陸上自衛隊の輸送機オスプレイは9日から佐賀県への配備が始まります。防衛省は「飛行の安全を最優先に配備を進めていく」としています。
防衛省は、千葉県の木更津駐屯地に暫定的に配備しているオスプレイ17機について、佐賀空港の西側に新たに整備した佐賀駐屯地に9日から移して配備する計画です。
9日は最初の1機を経由地の熊本県の高遊原分屯地から佐賀駐屯地に移す予定で、残りの機体についても来月中旬にかけて順次、配備するとしています。
オスプレイは、2007年にアメリカ軍で運用が開始されて以降、機体が大破するなどの重大事故が繰り返し起きていて、おととしには鹿児島県屋久島沖でアメリカ軍の機体が墜落し乗員8人が死亡しています。
防衛省は、オスプレイの佐賀県への配備について、南西地域の防衛体制を強化するためとしていて「飛行の安全を最優先に配備を進めていく」としています。
佐賀駐屯地に配備するねらい
防衛省は、中国軍が海洋進出の動きを強める中、南西地域の防衛体制の強化を進めていて、その一環として、輸送機のオスプレイを佐賀駐屯地に配備するとしています。
オスプレイでの輸送を想定しているのが、離島の防衛を主な任務とする「水陸機動団」です。
水陸機動団は長崎県佐世保市の相浦駐屯地に主力部隊が置かれていて、佐賀駐屯地からは直線距離でおよそ60キロと近いことから、オスプレイを使ってより迅速に部隊を離島に運ぶことができるとしています。
オスプレイは最高速度がおよそ500キロ、航続距離がおよそ2600キロで、CH47輸送ヘリコプターと比べ速度はおよそ2倍、航続距離はおよそ3倍あります。
防衛省によりますと、佐賀駐屯地から日本の最も西にある沖縄県の与那国島へは、CH47輸送ヘリコプターが途中の給油も含めておよそ7時間かかるのに対して、オスプレイは給油をせずにおよそ3時間半で移動できるということです。
中谷防衛大臣は8日の記者会見で「わが国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しており、南西地域を含む島しょ防衛能力の強化は喫緊の課題となっている。オスプレイの佐賀駐屯地への配備は、水陸機動団の部隊と一体的に運用できる体制を構築し、島しょ防衛能力の強化を実現する上で極めて大きな意義を持つ」と述べています。
10年越しの配備計画
防衛省がオスプレイの佐賀県への配備計画を明らかにしたのは、11年前の2014年7月です。
佐賀空港は、離島の防衛を担う水陸機動団が配備されている長崎県佐世保市に近く、オスプレイの運用に必要な滑走路を有していることなどが理由でした。
当初は2021年度までの配備を目指していましたが、機体の安全性への不安や、漁業への影響の懸念などから地元との協議は難航しました。
このため防衛省は、千葉県木更津市に協力を要請し、陸上自衛隊のヘリコプター部隊が置かれている木更津駐屯地に5年以内を目標として暫定的な配備を行いました。
木更津駐屯地にオスプレイが暫定配備されたのは2020年7月10日からで、7月9日は、5年以内とした目標の期限となります。
これまでのオスプレイ事故
オスプレイは、2007年にアメリカ軍で運用が開始されて以降、乗員が死亡したり機体が大破したりした、最も重大な「クラスA」の事故が繰り返し起きています。
2007年以降、防衛省が把握しているアメリカ軍のオスプレイの「クラスA」の事故件数は、空軍が12件、海兵隊が15件だということです。
このうち、おととし11月には鹿児島県屋久島沖でアメリカ空軍の機体が墜落し、乗員8人が死亡していて、アメリカ軍はエンジンからの動力をプロペラに伝えるギアボックス内部の故障や、操縦士の判断ミスが原因だったとしています。
一方、陸上自衛隊では、去年10月、与那国駐屯地を離陸しようとした際に、パイロットの操作ミスで機体の一部が地面に接触して損傷する事故が起きています。