
記録的な大雨となった熊本県内では多くの車が水につかり、JAF=日本自動車連盟熊本支部には動かなくなった車などの救援要請が相次いでいます。
熊本県内では、記録的な大雨によって広い範囲が浸水し、自家用車やタクシーなど多くの車が水につかる被害を受けました。
JAF熊本支部によりますと、県内で水につかって動かなくなった車などの救援要請は、13日までの3日間で2785件に上っているということです。

このため、JAFでは大阪や広島などから職員が応援に駆けつけ、通常よりもレッカー車を増やして対応にあたっています。
14日も朝から各地で対応にあたっていて、熊本市西区の住宅では、浸水被害を受けた2台の車をレッカー車で整備場に運んでいました。

応援に駆けつけたJAF関西本部の端康宏さんは「全国から集まった職員が途切れなく対応している状況です。水が入った状態でエンジンをかけると、故障するおそれがあるのですぐに連絡してほしい」と話していました。
車の浸水被害で暮らしに大きな支障が出た人は
記録的な大雨で車の浸水被害を受けた人たちは日々の暮らしに大きな支障が出ています。
熊本市西区小島の石川利貴さん(43)は、8月11日の未明ごろ、近くの川から水があふれ出て、自宅周辺がつかりました。
自宅の駐車場にあった3台の車のうち、2台が車体の半分ほどの高さまで水につかり、修理ができないため廃車にせざるをえないということです。
石川さんと妻は、通勤や買い物などで毎日、車を使用していたため、日々の暮らしに大きな支障が出ているといいます。
石川さんは「いまは会社の同僚が水や食料を家まで持ってきてくれているが、車がないと暮らしが成り立たない。新たな車の購入費用もかなりの負担で、当面はレンタカーでしのぎたいと思っている」と話していました。
【その時何が】タクシーが冠水した道路で立往生 浸水するまで
九州で記録的な大雨となった際に熊本市内を走行していたタクシーのドライブレコーダーには、冠水した道路で立往生し、浸水するまでの一部始終が写っていました。

今月11日の午前2時ごろ、熊本市中央区付近で客を乗せて走行するタクシーのドライブレコーダーの映像です。
徐々に道路に水がたまり始め、水しぶきがあがっていました。
そして橋を渡り、交差点を左折すると、突然、水かさが増した場所にさしかかります。
ボンネットの付近まで水が迫る中、しばらく走行しますが、動かなくなり、立往生してしまいました。
また、車内を撮影した映像には、後ろの座席にいた乗客の足の部分にまで水が迫ってくる様子や、あわてて車外に飛び出す運転手などの緊迫した様子が写っていました。

別のタクシーのドライブレコーダーです。今月10日の午後11時半ごろ、熊本市中央区出水の周辺を走行していました。
フロントガラスに打ちつける雨で前方の視界が悪くなっていて、交差点を左折した直後、冠水した場所にさしかかります。
運転手が「やばい」と声をあげた直後、タクシーは大きな水しぶきをあげ、立往生してしまいました。
このタクシー会社によりますと、今回の大雨で走行中だった7台のタクシーが浸水し、このうち数台は廃車となる見込みだということです。
【JAFに聞く】大雨で車が浸水したら どう対応?
大雨で車が浸水した場合、どう対応したらいいのでしょうか。JAF東京支部の谷宗一郎さんに注意するポイントを聞きました。
車が浸水してしまった場合、エンジン部分に水が入っている可能性があり、すぐにエンジンをかけると故障につながるおそれがあるということです。
ハイブリッド車やEV=電気自動車の場合も何らかの不具合が出るおそれがあります。
このため、車を動かす前に業者を呼んで点検することが重要で、すでに車を動かしている場合、異音がするなどいつもと違う状況があればすぐに運転をやめてほしいとしています。
また、車の点検を自分で行う際は漏電によるトラブルが起きないようバッテリーを絶縁する処置を確実にしてほしいとしています。
車両保険で補償される場合も
日本損害保険協会によりますと、大雨などの災害によって車が浸水した場合、所有者が任意で加入する「車両保険」で被害の程度に応じて補償されるケースが多いということです。
一方で補償の範囲によっては対象とならない可能性もあり、保険会社に確認するよう呼びかけています。
また、契約した保険会社がわからない場合でも車の購入にあわせて保険に加入しているケースが多いため、購入した店に確認するとわかる可能性があるとしています。
その後の手続きにあたっては車の状況を細かく撮影しておくと役に立つということです。