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SNS上でアーティストなどになりすましたアカウントによる投稿が相次ぐ中、人気アイドルグループなどが多数所属する「STARTO ENTERTAINMENT」が所属グループのライブ配信をかたった数十の「なりすましアカウント」の情報開示手続きを行った結果、すべて南アジアのバングラデシュから発信されていたことがわかりました。

誘導されたサイトでカード情報を入力してしまったという相談も寄せられているということで、会社では警察当局と情報を共有するとともに、現地政府に取り締まりや実態解明を求めるため外務省とも協議しています。

※記事の後半では、SNSでのなりすましの手口と注意点についてQ&Aで解説します。

STARTO社によりますと、所属するアイドルグループなどの「なりすましアカウント」が、去年4月ごろから「X」上で相次いで確認され、会社にはライブを生で配信するといううその情報で別のサイトに誘導され、カード情報を入力してしまったという相談も寄せられているということです。

このため会社が「X」の本社があるアメリカで法的手続きを行いアカウントの情報開示を求めた結果、13日までにIPアドレスや電話番号などの情報が開示され、ライブ配信をかたった28のアカウントはすべて、南アジアのバングラデシュから発信されていたことがわかったということです。

これについて専門家は、▽バングラデシュに犯罪グループの拠点がある可能性と、▽発信元を隠すために、コンピューターが中継地点として悪用されている可能性があると指摘しています。

会社では、警察当局と情報を共有するとともに、現地政府に取り締まりや実態解明を求めるため外務省とも協議しています。

「なりすましアカウント」によってコンサートやスポーツイベントのライブ配信をかたる手口は、コロナ禍のあと本格的にイベントが再開された2年ほど前から目立つようになっていて、業界団体や警察は、個人情報をだまし取る「フィッシング」のおそれがあるとして注意を呼びかけています。

STARTO社の代理人「重大で悪質な行為 法的手続きをとって特定」

STARTO社では、「X」上で、所属グループやアイドル本人になりすましたあわせて73のアカウントについて運営者の特定を進めています。

会社の代理人を務める中島博之弁護士
「『なりすまし行為』はファンに損害を与えかねず、タレントの権利侵害につながる重大で悪質な行為だと判断しました。法的手続きをとってアカウントの運営者を特定することはほかに例を見ない踏み込んだ対応だと考えています」

SNS上では、STARTO社の所属グループのライブ配信をかたったサイトについて、▽「カード番号入力しちゃいました。一時停止はしたのですが、3回ほど引き落としがされたみたいで、警察に報告すべきか悩んでいます」とか▽「カード利用停止しました。再発行手続きをしましたが、すぐにカード利用されていました」といった投稿が複数、確認できます。

一方、ライブ配信はかたっていないものの、所属グループやアイドル本人のようにふるまっていた残りの45のアカウントの多くは、日本が発信元で、会社では通信会社に情報開示を求めるなどして運営者本人の特定を進めることにしています。

こうした「なりすましアカウント」による投稿が相次いでいる状況に歯止めをかけるため会社では注意喚起を目的とした専用の公式アカウントを13日立ち上げました。

中島弁護士
「ファンが悪質な被害に遭わず、タレントが安心して芸能活動に専念できるよう今後もきぜんとした対応を取っていきます。ファンの方たちには、正規のアカウントかどうかよく確認してSNSを閲覧してもらいたい」

なぜバングラデシュからなのか?

なぜ今回、なりすましアカウントの多くがバングラデシュから発信されていたのか。

サイバー犯罪の捜査に詳しい元警察庁サイバー捜査課長の棚瀬誠さんは、▽犯罪グループの拠点がある可能性と、▽発信元を隠すために、コンピューターが中継地点として悪用されている可能性の2つがあると指摘します。

元警察庁サイバー捜査課長の棚瀬誠さん
「国際的なサイバー犯罪組織が日本人をターゲットに分業していて、捜査を免れるために、海外に拠点を設けていることがある。とくにバングラデシュは、政治情勢が不安定で、踏み台として悪用されている場合も含めて、日本の捜査当局が依頼しても、すぐに協力が得られない可能性もあり、犯罪グループが意図的にそこを選んだとも考えられる。実際に摘発するとなると、難しいのが実態だ」

その上で、被害にあわないために、次のように話していました。

「SNSには偽物があるんだと知ることが第一で、公式アカウントを確認したりフォロワーが数千人と少ないアカウントは警戒したりして、クレジットカード情報を入力する前に立ち止まることが重要です」

カード情報入力の女性「推し活になると気が緩んでしまった」

アーティストなどの「なりすましアカウント」をめぐっては、誘導されたサイトでクレジットカードの情報を入力してしまったという声が相次いでいます。

女性を取材する記者

神奈川県に住む30代の女性は、去年7月、女性ボーカルグループ「Little Glee Monster」が出演する能登半島地震の復興支援の音楽イベントの情報を「X」で検索していたところ、イベントのライブ配信を実施するという投稿を見つけました。

投稿に掲載されたURLにアクセスすると英語のサイトにつながり、ライブ配信の視聴権の購入のためだとしてクレジットカードの情報を求められ、女性はカード情報を入力してしまったということです。

直後に違和感を覚えてカード会社に連絡し、お金をだまし取られるといった被害には遭いませんでした。

ライブ配信をかたった投稿は「なりすましアカウント」だったとみられるということで、復興支援の音楽イベントの公式ホームページでは、公式アカウントをよそおう偽アカウントの報告が相次いでいるとして、偽アカウントの投稿に掲載されたURLを開かないよう注意を呼びかけていました。

カード情報入力の女性
「関東に住んでいる自分にとって能登は新幹線で行くような遠いところなので、配信があるのは助かると思いました。配信があるという情報を見つけた喜びもあってためらいなくURLにアクセスしてしまいました。ふだんは気をつけているほうですが、『推し活』になると気が緩んでしまったのかもしれません。英語だけのサイトでわかりにくいという率直な違和感がありましたが見たい気持ちがまさって情報を入力してしまいました。ライブ配信でもこういう怪しい投稿があることを知ってほしいです」

SNSでのなりすましの手口と注意点【QA】

SNSでのなりすましの手口と注意点について、セキュリティー会社や専門家への取材などをもとに、まとめました。

Q.そもそもなぜ、なりすますのでしょうか?

XやインスタグラムなどのSNSでは、人気アーティストやアイドルなど、著名人をかたって投稿するなりすまし行為は横行しています。

その目的はさまざまで、▽注目を集めたいという愉快犯や▽なりすまされた人の評判をおとしめるような嫌がらせのほか、▽アクセス数を集めて収益や宣伝につなげるもの、▽知名度や信頼感を悪用して詐欺に誘導するものなどがあるとみられています。

SNSの運営会社では、なりすまし行為を禁止していて、見つけた場合には報告するよう呼びかけています。

Q.今回の手口の特徴は?

STARTO社に所属するアイドルグループなどのなりすましアカウントでは、タレントの写真を無断で転載し、ふだんからテレビ番組の出演予定をこまめに投稿するなどして、巧妙に公式アカウントと誤解させるようにしていました。

その後、ライブの当日に、「無料で生配信が見られる」などとうその投稿をして、偽の配信サイトに誘導。

偽サイトでは会員登録が必要だとしてメールアドレスやパスワード、クレジットカード情報を入力するよう促していましたが、実際には入力しても配信を見ることはできないということです。

偽サイトに誘導して個人情報をだまし取る手口は「フィッシング詐欺」と呼ばれ、セキュリティー会社によると、入力した個人情報は闇サイトで売買されたり、クレジットカードの不正利用に使われたりするおそれがあるということです。

Q.なりすましにだまれないために、気をつけることは?

SNSでは簡単になりすませてしまうため、本物かどうか、疑う意識を持つことです。

開設された時期やフォロワー数などに不自然な点がないかチェックしましょう。

アーティストなどは公式サイトでSNSのなりすましへの注意を呼びかけていることもありますので、公式サイトを確認することも大切です。

またSNSから誘導されて、個人情報やクレジットカード情報の入力を求められた時には1度立ち止まって慎重に確認しましょう。

万が一、偽サイトに情報を入力してしまった場合には、すぐにカード会社に連絡して利用を停止し、再発行の手続きを取る必要があります。

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