広島に原爆が投下されてから80年となった6日、アメリカで原爆の開発を指揮したロバート・オッペンハイマーを題材にした英語による能が東京で上演されました。
6日夜、東京の喜多能楽堂で上演された能「オッペンハイマー」は原爆の開発を指揮した科学者の後悔や苦悩を描いた作品で、世界各国から集まった能のアーティスト集団「シアター能楽」が英語で演じました。
舞台では、オッペンハイマーの亡霊が原爆が広島で悲惨な結果をもたらしたことを語り、苦悩にさいなまれる様子が演じられます。
そして、人類に与えた苦痛を自分が引き受けることを誓い、不動明王から渡された剣と縄を手に、苦しみの中にある人々を救うため力強く舞うという内容です。
作品は、2015年にシドニー大学の研究者が書き下ろしたもので、戦後80年の原爆投下の日に作品の意図を深く伝えようと日本では初めて上演されました。
「シアター能楽」の設立者、リチャード・エマートさんは「80年前に起こったことの影響を今も皆、感じている。もう一度、同じことが起きたら絶対いけない。これからもずっと忘れないようにしたい」と話していました。
オッペンハイマーを演じたジョン・オグルビーさんは「過去に起きたひどい出来事で、作品を作り共有することは、誰にとっても苦しいことです。でも、私たちは痛みも覚えておかなければならないのです」と上演する意義について話していました。
舞台を見た東京の50代の男性は「心にズシンと来る内容でした。戦後80年で僕たちがこの思いを次の世代にもつなげなくてはと思いました」と話していました。
能「オッペンハイマー」は長崎に原爆が投下されて80年となる今月9日にも上演されます。
「シアター能楽」とは
「シアター能楽」は日本の能を海外に広く紹介しようと武蔵野大学名誉教授のリチャード・エマートさんが2000年に設立した国際的な能のアーティスト集団です。
メンバーは、現在、アメリカやイギリス、インドなど世界各国から集まった22人が在籍し、創作した能を中心に英語で演じる「英語能」の形で主にアメリカやヨーロッパで公演を行っています。