ガソリン税暫定税率廃止法案 専門家 “丁寧な議論と説明必要”

税制改正

先週、召集された臨時国会に野党側は、ガソリン税の暫定税率を廃止するための法案を提出しました。専門家は、暫定税率が廃止されれば家計にとって年間7000円程度の負担軽減が見込まれるとする一方、金融市場では財政への懸念がくすぶっているとして、丁寧な議論と説明が必要だとしています。

今回の「暫定税率」を廃止する法案は、1リットル当たり53.8円が課されているガソリン税のうち、本来の課税額に上乗せされた25.1円を11月に廃止するという内容です。

ニッセイ基礎研究所の上野剛志主席エコノミストは、これまで行われてきたガソリン価格を抑えるための補助金をやめて、暫定税率を廃止したと仮定し、家計調査で公表されている去年1年間の2人以上の世帯のガソリン使用量をもとに計算すると、1世帯当たり平均7000円程度の負担軽減が見込まれるとしています。

上野氏は「よりガソリンを使う、地方の車のユーザーにとって恩恵が大きくなる。間接的な効果として、企業の輸送コストも低下し、家計にとっての物価上昇圧力も緩和されることが期待される」と話しています。

一方、暫定税率を廃止すると、ガソリン税では国・地方合わせて年間1兆円程度、同様の仕組みとなっている軽油引取税を含めると1兆5000億円程度の減収が見込まれます。

上野氏は「金融市場では財政への懸念がくすぶっていて、国債の利回りが上昇したり円安に振れたりする場面が出てきている。参議院選挙でも与党が過半数を割り込んだあと、野党が主導する形で初めて出されるという象徴的な位置づけの法案であるだけに、市場が財政への懸念を強め、悪い金利上昇などが起きるリスクも否定できない」として、財政への影響について丁寧な議論と説明が必要だとしています。

また、上野氏は「これまで補助金でガソリン高をしのぐ場当たり的な対応をしてきたが、今回は税制の根幹に切り込むことになる。そもそも『暫定』税率のままで、およそ50年も続けてきたあいまいさが問題だった。日本の自動車課税のあり方や国土開発のあり方をどうしていくべきかを含め、ふかん的な視点で議論をしてほしい」と指摘しています。