ガザ地区 支援物資の投下も…十分に行き渡っていない実態が | NHK

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ガザ地区 支援物資の投下も…十分に行き渡っていない実態が

イスラエル・パレスチナ

パレスチナのガザ地区では、食料不足の解消に向けてイスラエル軍が限定的に攻撃を停止する措置を始めてから3日で1週間となります。この間、支援物資の陸上での搬入や空からの投下が行われていますが、NHKが現地で取材すると、物資が十分に住民に行き渡っていない実態が見えてきました。

ガザ地区ではイスラエル軍が先月27日から攻撃を限定的に停止し、国連などによる支援物資の輸送の安全を確保する措置を始め、連日、トラック200台分以上の支援物資が配布されたと発表するなど、成果を強調しています。

ただ、現地を取材すると、物資が十分に住民に行き渡っていない実態も見えてきました。

NHKガザ事務所が先月30日中部ヌセイラトにある市場で取材をしたところ、およそ3週間前に比べて、より多くの露店が営業し、食料を買い求めようとする住民の姿が見られました。

露店の中には、支援物資の袋に入った豆などをそのまま販売しているところもあります。

取材に応じた露店の店主の男性によりますと、販売する豆やコメなど食料の多くは国連などが搬入した支援物資で、別の人物から買い取り、利益を上乗せして転売しているということです。

男性
「私も、物資を人から買って転売することでお金を稼ぎ、家族を支えています。もちろん、気持ちのよいことではなく、食料の価格が元どおりになってほしい」

ガザ地区での戦闘が始まる前は、食用油1リットルの価格は日本円にして400円余りでしたが、現在は2600円程度となるなど、さまざまな食料品の価格が大きく値上がりしていて、多くの住民にとって手が届かない状態が続いているということです。

イスラエルのメディアは、支援物資が略奪され、転売されることもあると伝えています。

食料を買い求めていた女性
「果物は高価で買えず、手が届くのは生きるためのこの小麦粉だけだ。ガザでは本当の飢きんが起きていて自分が死ぬ順番を待っているようなものだ」

また、UAE=アラブ首長国連邦やヨルダンなど各国が上空から物資を投下する支援も行われています。

現地では連日、各国の輸送機が上空からパラシュートを使って支援物資を投下していますが、物資が落下した場所では殺到した住民たちによる奪い合いが起きていて物資を手にすることができない人も少なくありません。

住民の男性のひとり
「こんな支援は屈辱的だ。ガザ地区への検問所を開放し尊厳を持って支援を受け取れるようにしてほしい」

アメリカ主導の「ガザ人道財団」が食料を配給

ガザ地区では、支援物資がハマスの手に渡るのを防ぐためとしてイスラエルが国連による搬入を制限する一方、ことし5月からはアメリカ主導の「ガザ人道財団」が食料の配給を行ってきました。

今月1日にはこれまでに1億食を配ったとアピールし、この日、アメリカの中東担当特使とともに配給センターを訪れたハッカビー駐イスラエル大使も「信じられない偉業だ」などとSNSに投稿しました。

ただ「ガザ人道財団」が配給を行う場所は、最も多いときでも4か所と、国連が主導で行っている配給の場所と比べると100分の1程度にとどまります。

国連は、住民を何キロも歩かせることになり、相当な労力を強いていると指摘しています。

また、ガザ地区の当局によりますと、配給場所の周辺で殺到した人たちがイスラエル軍に銃撃されるなどして、これまでに1400人以上が死亡したということです。

「ガザ人道財団」について、ガザ地区の支援にあたるUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は「欠陥があり、人道危機に対処するために作られたものではない」と指摘したうえで、財団による食料配給を「死の罠」と呼んで、厳しく批判しています。ガザ地区の住民は、生きるために死と隣り合わせの配給場所に向かわざるを得ない状況に追い込まれています。

栄養失調などが原因で死亡する住民が急増

ガザ地区の保健当局によりますと、イスラエル軍によって支援物資の搬入が制限される中、先月、栄養失調などが原因で死亡する住民が急増しました。

栄養失調などで死亡した人は、戦闘が始まったおととし10月からことし6月28日までの時点では66人でしたが、1か月後の先月28日の時点では2倍以上の147人に増え、そのうちおよそ6割が子どもとされています。

イスラエルのネタニヤフ首相は「ガザ地区に飢餓はない」などと述べ、支援物資の搬入を認めてきたと主張しましたが、メディアなどを通じてやせ細った子どもの映像などが広く伝えられるようになると、国際的な非難が高まりました。

先月21日には、日本やイギリスなどおよそ30か国とEU=ヨーロッパ連合の外相らが、25日にはイギリス、フランス、ドイツの3か国の首脳が共同声明を発表しイスラエル政府に対して支援物資の搬入を制限するのをやめ、国連やNGOによる活動を認めるよう求めました。

こうしたなかでイスラエル軍は27日、支援物資の搬入拡大に向けた新たな措置を打ち出し、それ以降、連日、新たに搬入された物資の量を発表するなど成果をアピールしています。

一方で、28日にはアメリカのトランプ大統領がガザ地区の状況について「子どもたちは本当の飢餓状態だ。でっちあげることはできない。だから、われわれは関与を深める」と述べて、イスラエル側とは異なる見解を示し、ガザ地区に「食料センター」を設置する計画を明らかにしました。

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