SNSは参議院選挙の結果にどう影響を与えたのか。そして今後の政権の行方はどうなるのか。政治学が専門の中央大学の中北教授と、SNSの事情に詳しい国際大学の山口准教授とともに見ていきます。
参議院選挙 ネット上の選挙戦を分析 結果は?

今回のSNS選挙の特徴は?

Q。ネットの投稿を見ますと、物価高対策など以上に外国人政策への関心が移っていったように見えました。ここにもSNS選挙の特徴が表れたと見ますか。
A(山口准教授)
今回、非常に特徴的な動きが観察されました。それはSNS戦略に非常にたけている参政党が、「日本人ファースト」というものを掲げて、外国人に関連する政策を主たる主張の1つとして掲げました。
それが大いにネット上で盛り上がったんですね。
その結果何が起こったかというと、今回SNSを非常に観察している各政党がそれぞれの立場から外国人というテーマにかなり焦点を当てて、街頭演説やSNS投稿などで訴えるというような現象が起きました。
それがまたSNSで盛り上がりといったように、SNSがアジェンダセッティング。つまり議題を設定するということをしたわけです。
ただしSNSで盛り上がっているから、社会全体としてそのテーマに非常に関心があるとは限らないのでそれも注意が必要かなと思います。
物価高対策の方が関心高いが?

Q。では実際の投票行動に影響を与えたのは何だったのか。出口調査で見ていきます。投票で最も重視した政策を聞いたところ、物価高対策が48%で最も多くなりました。外国人政策は7%でした。
ネットへの投稿と実際の投票行動これ違いが見られます。ただ、この物価高対策を選んだ人の比例投票先をみますと、自民党が20%。国民民主党が16%などと支持が分散していることが分かります。
物価高対策に関心が集まる一方で支持が分散したこの要因はどこにあると思いますか。
A(中北教授)
減税と給付と方向性は若干異なりますけれども、財政を使って物価高対策を行うという点では同じ方向性を向いていたということで、やはり分散してしまったのではないかと思います。
そもそも物価高対策という争点は大胆な消費税減税を掲げる参政党や国民民主党といった新興政党に有利な争点です。
与党は財源論に踏み込むことで巻き返しを図ったわけですけれども、論争があまり深まらなくてそれにうまくいかず支持が分かれると結果になったと考えられます。
年代による支持政党の差 SNSの影響は?

Q。一方で、顕著だったのが年代によって支持政党に差が出たことです。
比例代表の投票先を年代別で見ますと年代が高いほど自民党や立憲民主党に多くなっているのが分かります。一方で若い世代は国民民主党や参政党が多くなっています。
こうした年代で差が出たのもやはりSNSの影響が出たといえますか?
A(山口准教授)
そうですね。やはりこうSNSや動画共有サービスと親和性が高いのが若い世代です。
若い世代の中で、SNSで人気となった政党の支持率が顕著に高くなっているなというような印象を受けます。
ただしよく見るとですね、40代50代といった上の世代でも支持率がそれなりにありますので、そういった意味では、今はもう若い人だけではなくてかなり幅広い世代にこのSNSや動画共有サービスが浸透しているということも言えると思います。
いずれにせよふだん触れている情報によってどこを支持するかといったことが全く変わってくるという現実がありまして、それが今回如実に出たかなというふうに思っております。
参政党 支持伸ばした要因は?
Q.参政党が支持を伸ばした要因はどこにあると見ていますか?
A(中北教授)
基本的に見て、自民党にお灸を据えたい。しかし立憲民主党には入れたくないという人々が参政党に投票したというふうに考えられます。
特に若い方々にすれば自民党や立憲民主党はやや古い体質があると、それに対して参政党は新しい政党だとこのように映ったのではないかと思います。
ただ各種の世論調査を見ると日本社会で外国人排斥の動きが高揚しているというわけではありません。
確かに「オーバーツーリズム」など若干の摩擦現象が見られるということは言えるんですけれども、人口に占める外国人の比率は日本で必ずしも欧米に比べると高いとは言えませんので、今のところ摩擦現象も限定的だと言えるわけであります。
したがって参政党の躍進が報じられたことが、結果として外国人争点を浮上させたと、このように考えられます。