
参議院選挙 ネット上の選挙戦を分析 結果は?
与野党どちらが全体の過半数を制するかが最大の焦点となった参議院選挙。ネットではどのような政策や発信が関心を集めたのか?徹底分析しました。
SNSで関心集めた政策テーマは
まずは、今回の参議院選挙の政策テーマへの関心をデータで見ていきます。
各党の公約から主なことばを抽出して、ネットの検索数やSNS投稿数の推移を分析しました。

こちらは選挙期間中に検索が多かったことばです。
自民党が公約にかかげていた1人2万円を迅速に給付するために活用するとした「マイナンバー」のほか、小泉農林水産大臣がPRしていた「備蓄米」が検索されていました。

一方、SNSでの関心は別のところにありました。
こちらはXでこの1か月に「参院選」とともに投稿された政策ワードをテーマごとに分類したものです。
2万円給付を含む「物価高・給付」や「消費税」は公示日をピークにその後の投稿はあまり増えませんでした。「コメ」については選挙期間中、あまり投稿されていませんでした。
一方、選挙期間中は「外国人」に関する投稿が急増していきました。
参政党が訴えた「日本人ファースト」への賛否をめぐる投稿が相次いだほか、各党が外国人に関する政策について言及したことなどが影響したとみられます。
外国人に関する政策 なぜ関心?
なぜ外国人に関する政策が関心を集めたのか?
こうしたテーマが関心を集める土壌ができていたのではないかと考えられます。
選挙期間中の「外国人」に関することばの検索状況を見ていきます。

最も多かったのが「オーバーツーリズム」でした。ほかにも「生活保護」や「外免切替」などに関心が集まっていました。

「オーバーツーリズム」は観光客が集中して住民生活などに影響が出ることですが、ここ3年の検索状況を見るとコロナ禍が明けたおととしから検索が急増していて、近年多くの人が身近な問題として捉えていたことがうかがえます。

こちらは、各政党の党首が第一声の街頭演説で外国人に関する政策に触れたかまとめたものです。
7月3日の公示日は、自民党、公明党、立憲民主党は触れていませんでした。
一方、SNS上の関心が高まる中、選挙期間中の7月15日に内閣官房に外国人に関する政策の事務局が設置されるなど与党側にも動きが出ていました。
参議院選挙 党首の演説で多く使われたことばは? 徹底分析

選挙期間中見られた動画は?
今回の参議院選挙でも、各党はSNSや動画配信に力を入れました。

こちらは各党のYouTube公式チャンネル再生数です。自民党は4000万回以上、立憲民主党は2000万回以上再生されていました。
中には広告としても表示され、数百万回再生された動画もありました。

一方、こちらは動画に寄せられたコメント数です。最も多くコメントがついていたのは参政党で、6万件以上でした。
今月19日の最後の訴えの動画には4000件寄せられ、繰り返し書き込む支持者もみられました。
また、参政党は「切り抜き動画」も多く作られていて、再生数の合計は少なくともおよそ1億回に上っています。
政党の公式アカウントではなく、第三者が編集して投稿した動画です。
切り抜き動画の舞台 街頭演説は?

その切り抜き動画の素材としてよく使われるのが「街頭演説」。
今や街頭演説は重要な動画コンテンツになっていて、スケジュールはSNSで盛んに告知されています。
SNSで支持を拡大してきた国民民主党・玉木代表と参政党・神谷代表の街頭演説の動きをみていきます。
参政党はすべての選挙区に候補者を擁立し、全国47都道府県で演説。国民民主党は2人を擁立した東京で重点的に演説していました。
また、街頭演説の様子はSNSに投稿するよう呼びかけていました。
また、ネットでの空中戦だけでなく、リアルな街頭演説を各地でこなせる組織力も、躍進を支えた原動力になったとみられます。
フェイク情報も課題に
SNSが選挙に影響力を与える中、今回の選挙期間中フェイク情報もみられるなど課題も見えてきました。

たとえば「外国人への生活保護は違憲だ」といった投稿です。
厚生労働省によりますとこれまでに外国人への生活保護の支給が憲法違反だとする判断はこれまで行われていないということで、誤った情報です。
また、憲法違反や違法といった根拠に「生活保護法が保護の対象とする『国民』に外国人は含まれない」とした2014年の最高裁判所の判決をあげている投稿もありますが、この判決では「外国人は自治体の裁量による事実上の保護の対象になりえる」ともしていて、自治体の裁量での支給が行われています。
厚生労働省は「支給はあくまで行政措置で憲法に違反する取り扱いを行っているわけではない」としています。
このほか「男女共同参画の予算を削れば減税できる」といった投稿も拡散されていましたが、不正確な情報です。
この予算は、さまざまな省庁の施策や事業の関連予算が取りまとめられて額が積み上げられたもので、その大半は介護保険や福祉などの社会保障にかかる費用や、児童手当や保育、大学の就学支援などの子育て・教育に関する費用です。
「外国人増加で治安が、賃金が…」広がる情報を検証 誤りも

有権者も真偽を見極めるのが難しくなるなか、今回、報道機関がファクトチェックとして選挙期間中の政治家の発言やSNSで出回った情報を検証する機会も増えました。
「夫婦別姓が導入されると戸籍がなくなる」、「期日前投票は書き換えられる」などといった根拠のない主張について検証されていました。

選挙期間中に「ファクトチェック」という言葉とともに、Xに投稿されたハッシュタグを分析すると「参政党」に関連することばが多くみられました。
この1か月の政党名を含んだXの投稿数の推移をみると、最も多かったのが参政党です。
神谷代表は、ファクトチェックへの反論もSNSなどで投稿していて、それがまた拡散していました。結果として、ネットでの注目が参政党に集中する状況が生じていたといえます。
(※分析結果は、20日の開票速報番組で詳しくお伝えします)
(機動展開プロジェクト・金澤志江、斉藤直哉、ニュースメディア部・穐岡英治、中尾絢一、メディアイノベーションセンター・吉水優里子)