19年前の2006年、福岡市で飲酒運転の車に追突されて亡くなった幼い3人のきょうだいの母親が11日、初めて講演を行い、高校生に対して「飲酒運転を選ばない大人になってください」と呼びかけました。 2006年8月25日、福岡市東区の「海の中道大橋」で家族5人が乗っていた車が飲酒運転の車に追突されて海に転落し、当時4歳と3歳、それに1歳の幼い3人のきょうだいが亡くなりました。 事故から来月で19年となるのを前に、11日、3人の母親、大上かおりさん(48)が、初めての講演を福岡市東区の高校で行いました。 およそ1200人の生徒たちに、大上さんはまず、出産を経験して母親になり命の尊さを実感したことを語りました。 そのうえで、事故当時の状況について「追突されたあと、子どもたちは大丈夫かなと後ろを確認して一瞬安心しましたが、次の瞬間には車の中が真っ暗になり、海の水が入ってきました。ありったけの声で子どもの名前を呼びました。絶対に生きて帰るぞと思っていましたが、海面に出ると絶望の光景がありました」と語りました。 そして「こんなむごい死を迎えることになったその原因が飲酒運転です。飲酒運転はみずから選んで犯す犯罪で、尊い命が絶対に奪われてはいけない。飲酒運転を選ばない大人になってください」と呼びかけました。 この事故の翌年の2007年、道路交通法が改正され、飲酒運転に対する罰則が強化されました。 参加した生徒は「自分だったらと状況を想像し、つらくなりました。飲酒運転をしないよう、周りにも伝えていきたいと思います」と話していました。 講演のあと、大上さんは「聞き入っている姿をみて、何か感じ取ってくれたのかなと思いました」と話していました。 きょうだい3人が亡くなった事故と飲酒運転の厳罰化 事故は2006年8月25日の夜、福岡市東区の「海の中道大橋」で起きました。 当時の福岡市職員が酒を飲んで運転し、大上さんの一家5人が乗る車に追突。 車はおよそ15メートル下の海に転落し、長男の紘彬ちゃん(当時4)、次男の倫彬ちゃん(当時3)、長女の紗彬ちゃん(当時1)の3人が亡くなりました。 事故を起こした元職員は危険運転致死傷などの罪で懲役20年の判決が確定しています。 この事故などをきっかけに飲酒運転は厳罰化が進み、事故の翌年の2007年には道路交通法が改正されて酒酔い運転や酒気帯び運転の刑が重くなったほか、ドライバーに酒や車を提供した人や飲酒を知りながら車に乗せるよう要求した同乗者なども罰則の対象となりました。 大上かおりさん 初の講演を前に 伝えたいのは命の尊さ 初めて講演に臨んだ大上かおりさんは先月、NHKの取材に応じ、事故当時を振り返るとともに、講演に向けた思いを語りました。 事故が起きた2006年8月25日、子どもたちに初めてお使いを頼み、夜は一緒にカレーを作ったということです。…