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海上自衛隊のイージス艦 トマホーク搭載の改修のため 米へ出港

防衛省・自衛隊

他国の基地などを攻撃する「反撃能力」としても使うアメリカ製の巡航ミサイル「トマホーク」を搭載できるよう改修するため、海上自衛隊のイージス艦がアメリカに向けて出港しました。「反撃能力」の保有に向けた自衛隊の艦艇の改修は初めてです。

改修のためアメリカに向かったのは海上自衛隊佐世保基地所属のイージス艦「ちょうかい」で、26日午後2時ごろ、補給などで寄港していた横須賀基地を出港しました。

防衛省は他国の基地などを攻撃する「反撃能力」としても使う長射程ミサイルの開発や取得を進めていて、この一環で射程およそ1600キロのアメリカ製の巡航ミサイル「トマホーク」を最大400発アメリカから取得し、海上自衛隊のイージス艦などに搭載する計画です。

「反撃能力」の保有に向けた自衛隊の艦艇の改修は「ちょうかい」が初めてです。

防衛省によりますと、派遣先のアメリカで船体の改修や訓練を行って今年度中に発射できる状態にするほか、来年夏ごろまでに発射試験などを行って任務できることを確認する予定だということです。

また、25日は横須賀基地に寄港中の「ちょうかい」で「トマホーク」の模擬弾の搭載訓練を行ったということです。

長射程ミサイルをめぐっては防衛省は、射程およそ1000キロの「12式地対艦ミサイル」の改良型と、射程数百キロの「高速滑空弾」を、来年3月以降、熊本県や静岡県の陸上自衛隊の駐屯地などに配備すると発表していて、「反撃能力」の保有に向けた動きが急速に進んでいます。

【Q&A】「トマホーク」搭載 ねらいや運用方法 課題は

「トマホーク」をイージス艦に搭載するねらいや運用の方法、課題などについてまとめました。

Q. そもそも「トマホーク」ってどんなミサイル?

A. 「トマホーク」はアメリカで開発された巡航ミサイルで、水上艦や潜水艦のほか地上からも発射できます。レーダーで探知されないよう低い高度を維持しながら飛び、GPSなどの誘導によってピンポイントで目標を攻撃することができるとされています。防衛省が取得する予定の「ブロックIV」と「ブロックV」はいずれも射程がおよそ1600キロです。

アメリカ軍は1991年の湾岸戦争で実戦で初めて使用し、2001年のアフガニスタンでの軍事作戦、2003年のイラク戦争、2018年のシリアへの軍事攻撃、それにことしのイランへの攻撃などでも使用しています。

Q. 今回、防衛省がイージス艦に搭載するねらいは?

A. 防衛省は他国の基地などを攻撃する「反撃能力」としても使うとしています。侵攻してくる部隊をイージス艦から攻撃することを想定しています。

「反撃能力」にも使うミサイルは、国産の「12式地対艦ミサイル」の改良型などがありますが、外国製の「トマホーク」を取得する理由について、防衛省は「国産ミサイルを十分な量保有するまでには時間が足りないため、取得する」としています。

Q. 「トマホーク」を搭載する計画の全体像は?

A. 防衛省は今回の「ちょうかい」を含め現在保有するイージス艦8隻すべてに搭載する予定です。さらに、「イージス・アショア」の代替策として2隻建造する予定の「イージス・システム搭載艦」からも発射できるようにする計画です。2027年度までに「トマホーク」を最大400発取得する予定で、「ブロックIV」と「ブロックV」が200発ずつの計画です。

取得のための費用として2023年度予算でおよそ2113億円を計上したほか、改修のための費用として今年度までの3年間の予算でおよそ1100億円を計上しています。

Q. どのように運用するのか?

A. 関係者によりますと、「トマホーク」の発射自体は日本でできるものの、目標物への最終的な誘導はアメリカの情報などが必要になるということです。

こうしたことから、野党の一部からは「トマホークを日米一体で運用することになれば、自衛隊が事実上、アメリカ軍の指揮統制の下に置かれるのは自明ではないか」などという指摘が出ていました。

こうした指摘に対して、防衛省は「自衛隊とアメリカ軍はそれぞれ独立した指揮系統に従って行動する。自衛隊は、憲法、国際法、国内法に従って行動することは言うまでもなく、日本の反撃能力がアメリカ軍の指揮統制の下で運用されるといった指摘はあたらない」としています。

安全保障政策に詳しい、大阪成蹊大学の佐道明広教授に聞きました。
Q. 「トマホーク」の運用、どう捉えていますか?

A. 「トマホークを持つことは一定の抑止力になると思う。一方で実戦での使用実績があって信頼性が高く、長距離の範囲をカバーできるミサイルを持つことは周辺国にとって脅威になりかねず、外交が極めて大事になってくる」

Q. 「反撃能力」の保有に向けた動きが急速に進んでいますが、国内ではどういった対応が必要ですか?

A. 「多くの国民が意識しないまま、急激に進んでいると思う。ただ、防衛体制の強化に関連した具体的な動きがすでに出てきている地域があり、どのような影響があるのかと感じ始めた人は増えてきている。防衛体制の強化は国民一人ひとりの命や生活に関わるものなので、もっと関心を持ってもらいたいと感じている。そのためにも政府はしっかりと説明する必要がある」

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