『映える』(ばえる)や『課金する』、『エモい』といったSNSを中心に見られることばについて、実際に使うことがあると答えた人がおよそ半数に上り、社会に浸透してきていることが文化庁の調査でわかりました。
「心が揺さぶられる感じがする」といった意味で使われる「エモい」ということば。
平成に流行した文化も、懐かしく、レトロな点が「エモい」と人気を集めています。
“平成に流行したものがエモい”
去年11月に渋谷にオープンしたカフェ「平成レトロカフェRETOPO」は、平成に流行したキャラクターのぬいぐるみや雑誌、ゲーム機などを展示していて、「エモい」写真を撮ろうと若者たちが訪れるといいます。
店では当時のデジタルカメラや、シールなどでデコレーションした「ガラケー」と呼ばれる携帯電話などを貸し出していて、画質が粗く色が濃い写真や白っぽい写真が「エモい」と、女子高校生たちに人気だということです。
高校1年生の女子生徒
「画質が古い感じがかわいくてエモいです。平成のキャラクターものなど、小学校や幼稚園の時にはやったものは、懐かしいと言われるから、見せたくなります」
高校3年生の生徒
「SNSに写真をあげたいと思って来ました。ぼやけた画質の写真や、フラッシュをたいて色がはっきりする写真が新鮮味があってかわいいです」
川浦敦也オーナー
「平成に生まれた文化は令和に比べてごちゃごちゃしていて、今の時代にはないポップさやかわいさがあるので、世代を超えて愛されている。大衆的に流行ったものは今の若者にも刺さるのでは」
SNSを中心に見られることばが社会に浸透
こうした『エモい』や『映える』(ばえる)、『課金する』といったSNSを中心に見られることばが、社会に浸透してきていることが文化庁の調査でわかりました。
文化庁は毎年、ことばの使い方の変化などを調査していて、ことしは1月から3月にかけて全国の16歳以上の6000人に調査し、3498人から回答を得ました。
◇『映える』『課金する』◇
この中で、SNSを中心にみられることばを実際に使っているか尋ねたところ、写真に写すときなどにきれいでおしゃれに見えるといった意味で『映える』を使う人は50.4%、本来の「料金を課す」という意味ではなくネットの有料サービスを利用するといった意味で『課金する』を使う人は46.2%に上り、若い世代を中心に社会に浸透してきていることがわかりました。
◇『エモい』◇
心が揺さぶられる感じがするといった意味の『エモい』を使うことがあると答えた人は17.8%でした。
全体の半数以上の人は、『エモい』をほかの人が使っていても気にならないと答えたということです。
◇『ポチる』◇
ネットで商品を買うといった意味の『ポチる』を、使うことがあると答えた人は32%でしたが、7割近くの人がほかの人が使っていても気にならないと答えました。
◇そのほか◇
このほか、辞書などで本来の意味とされてきたものとは違う使い方をされることがある慣用句についても調査が行われ、『にやける』を「薄笑いを浮かべている」と答えた人は81.9%に上り、本来の「なよなよとしている」という意味だと答えた人は10.5%にとどまりました。
また『潮時』(しおどき)を「ものごとの終わり」だと答えた人は46.7%で、本来の「ちょうどいい時期」と答えた人の41.9%を上回りました。
文化庁は「言葉は年を経るごとに変わるものだ。一定程度の方が違った意味で使っていることばがあり、コミュニケーションを取る上で少し注意が必要だ」と話しています。
《詳細》
意味や使い方が辞書にも記載されるようになってきたこれらのことば。
実際に使うことがあると答えた人の割合は「映える」が50.4%、「課金する」が46.2%、「ポチる」が32%、「エモい」が17.8%でした。
一方で、ほかの人が使うのが気にならないと答えた人の割合は「映える」が81.1%、「課金する」が80.7%、「ポチる」が69%、「エモい」が56.7%で、いずれも半数以上となっています。
「エモい」若い世代ほど浸透している傾向
年齢別に見ると若い世代ほどことばが浸透している傾向がみてとれます。
例えば「エモい」を使うことがあると答えた人の割合は、全体では17.8%と低いものの、16歳から19歳が69.2%、20代が61%と高くなっています。
ほかの人が使うのが気にならないと答えた割合も若い世代ほど高く、16歳から19歳が89.7%、20代が82.3%と8割を超えた一方、70歳以上では37.9%となっています。
“「エモい」が購入につながる” 多くの企業が取り入れ
「エモい」をキーワードに商品やサービスの企画やPRを行っている会社の今瀧健登代表(27)は、「エモい」ということばはいわゆる「Z世代」の若者にとっては、当たり前に使う身近な形容詞だといいます。
商品やサービス、それらに関する情報がSNSなどであふれている現代では、共感してもらうこと、「エモい」と思ってもらうことが購入につながるということで、「エモ消費」と呼ばれ、多くの企業が取り入れているとしています。
今瀧健登代表
「昔から『エモ』は必要だったが、今は情報量が多くなりすぎたので、一番最初にエモで判断しなければ、そもそも選択肢のテーブルに乗らない。良い商品なのは当たり前で、情報がさらにどんどん飽和していくので、よりエモ消費、感情消費がポイントになってくると思う」
街の人はどう使っている?
SNSを中心に広まっていることばや、ことばの使われ方の変化について街の人に聞きました。
◇「映える」(ばえる)について◇
都内に住む40代女性
「食べ物の写真を撮るときやイルミネーション、ハロウィンの飾り付けなどが点灯したときに『映える』といいます。若者ではなくても使います」
◇「課金する」「ポチる」について◇
福井県に住む50代女性
「推しに課金しています。CDが出たときにはポチるのでよく使うことばです」
◇本来「ちょうどいい時期」という意味の慣用句、「潮時」(しおどき)について◇
都内に住む20代男性
「『引き際』という意味で、ギャンブルで勝っているとき、このあたりでやめておこうと『潮時だ』と話していました。正直、あまり意味を理解して話せていないんだなと思いました」
SNSの普及がコミュニケーションに与える影響は
文化庁の調査では、SNSの普及がコミュニケーションに与える影響についても尋ねました。
SNSの普及がことばの使い方に影響があるか尋ねたところ、「大きな影響があると思う」または、「多少影響があると思う」と答えた人が89.3%に上りました。
影響があると答えた人に、ことばの使い方にどのような影響があるか尋ねたところ、「短い言葉でのやりとりが増える」と答えた人が73.1%、「十分に吟味されないまま使われる言葉が増える」が67.2%、「相手の思いやりに欠けた言葉遣いが増える」が48.9%などとなりました。
SNSでのコミュニケーションの質を社会全体で高めていく上での課題を尋ねたところ、「正確かどうか疑わしい情報がよく見られる」と答えた人が71%、「人を傷つけたり挑発したりするような言葉がよく使われている」が62.7%、「相手の立場を考えないやりとりがよく行われている」が57.3%など、多くの人がことばづかいに課題を感じている実態が明らかになりました。
文化庁は「ネガティブなことばが使われていることは皆が感じていることだと思う。そのような課題を乗り越えるようなコミュニケーションのしかたを考えてもらいたい」と話しています。