| NHK

|-nhk

万博の大屋根リング 閉幕後も一部残し 周辺を市営公園に整備へ

大阪・関西万博

大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」について、万博の閉幕後も北東部分およそ200メートルを残したうえで、大阪市が周辺を市営公園として整備することで関係機関が合意しました。

大阪・関西万博の「大屋根リング」をめぐっては、博覧会協会と大阪府・市、それに経済界などでつくる検討会が、閉幕後の活用について協議を進めてきました。

16日開かれた検討会では、北東200メートルを人がのぼれる原型に近い形で残し、リングとその周辺を大阪市が万博を記念する市営公園として整備することで合意しました。

改修などに必要な費用については、市の支出に加えて、大阪府の負担や、国の交付金や補助金、万博の収支が黒字になった場合の「剰余金」の活用を検討するほか、協力する企業を探すとしています。

大阪府と大阪市は当初、リングの保存や管理を含めて会場の跡地を開発する民間の事業者を募集する計画でしたが、木材の傷みなどの調査に時間がかかることなどから、市が管理していく方針となりました。

改修と10年間の維持管理に必要な費用は、合わせておよそ55億円を見込んでいるということです。

博覧会協会の副事務総長「意義が大きい」

博覧会協会の小野平八郎副事務総長は記者会見で「万博のシンボルの大屋根リングを原型をとどめる形で残すことになったのは、意義が大きいと感じている。大阪市が保存を引き受けてくれるのは、安心感があるのでよかった。残さない部分についても、木材を再利用していきたい」と述べました。

大阪府 吉村知事「大きなハードレガシーに」

大阪府の吉村知事は、記者団に対し「当初は批判だらけだったが、万博が開幕すれば多くの人が大屋根リングを評価すると思っていた。原型に近い形で残るのは大きなハードレガシーになると思う。閉幕後、またリングにのぼって万博の時に見上げていた空と同じ空を見上げてもらいたい」と述べました。

大阪市 横山市長「レガシーを感じてもらえる施設に」

大阪市の横山市長は記者団に対し「民間の事業者による保存を模索したが、現実的に不可能となり、市として新しい提案をした。皆さんの知恵で200メートルを都市公園として残していく方針が固まったことをうれしく思う。この場所で万博が行われたというレガシーを感じてもらえる施設になると思う」と述べました。

万博会場を訪れた人は

大屋根リングの保存について、万博会場を訪れた人たちに話を聞きました。

東京から訪れた20代の女性は「万博のシンボルが残って、うれしいと純粋に思います。みんなが戻ってきたときに、ここで涼んだなと万博のことを思い出せれば」と話していました。

東京から訪れた男性は「炎天下の中を支えてくれた大屋根リングなので、200メートルとは言わず、もっと残してほしいです。絵になるくらい残してくれたほうが思い出に残ると思います」と話していました。

また、70代の男性は「これだけ来場者が来れば、もっと生かして残す方法があると思います。大部分を壊すことはすごく残念です」と話していました。

万博ほぼ毎日訪問の男性「全体を残すのがいちばんいい」

大阪 住之江区の藤井秀雄さん(67)は、1970年の大阪万博以来、国内外の17の国際博覧会を訪れていて、今回の万博もほぼ毎日訪れているということです。

大屋根リングについて、藤井さんは「全体を残すのがいちばんいいと思います。大屋根リングは柱どうしが『貫工法』でちゃんと抜けないようにつながっていて、世界の国々、世界のみんなが1つになっていることを表しているので、それを形として残していくことが大事だと思います」と話していました。

専門家「跡地のまちづくりの中での位置づけ議論を」

万博の研究をしている関西大学の岡田朋之教授は、大屋根リングについて「万博のテーマと意義、それに日本の伝統的な工法などを体現している重要な存在だ。日よけにも雨よけにもなり、休憩と憩いの場として、ほぼすべての来場者が体験できる類を見ない施設だ」と評価しています。

そのうえで、リングの保存については「来場した人や近隣の人たちの印象や思いが込められていないと、愛されていかないし、負の遺産になりかねない。閉幕後に大屋根リングをどうしていくかというプランがないまま、ここまで来たことが問題で、保存するリングの一部を会場跡地のまちづくりの中でどのような位置づけにしていくのか、全体の議論を早急に進めていかなければならない」と指摘しました。

大屋根リングの保存 これまでの経緯

大屋根リングの保存に向けた具体的な検討が始まったのは、ことし4月でした。

5月には、大阪府の吉村知事や博覧会協会のトップを務める経団連の十倉会長なども参加して閉幕後のリングの活用方法を協議する検討会の初会合が開かれました。

吉村知事は、「石にしがみついてでも、後世のために一部を残したい」などとして、リングの保存に強い意欲を示します。

しかし、関係者の足並みはそろっていませんでした。

最大の課題は、改修や維持管理に必要な費用負担でした。

大屋根リングの保存には、一部を残すとしても改修に数十億円、維持管理には10年間で10億から20億円かかると見込まれていました。

費用負担について、大阪府・市は、「多額の税金の投入に府民や市民の理解を得るのは難しい」として、国や経済界にも負担を求めていました。

経済界は、会場の建設費が当初よりも膨れ上がり、資金集めに尽力してきたことなどから、「これ以上、寄付をする余力はない」などとして「新たな負担には応じられない」と主張していました。

博覧会協会も、「財源はない」としていました。

また、保存するリングの維持管理を誰が行うかも見通しが立っていませんでした。

万博の閉幕後の会場跡地は、公募で選ばれた民間企業が開発を行うことになっていて、大阪府・市はリングの改修や管理についても民間企業が行うことを想定していました。

ところが、協議の中で、企業が保存や管理を行う場合に重要な判断材料となる木材の傷みの調査に想定以上の時間がかかることがわかりました。

調査結果によっては改修費が大きく上振れする可能性もあり、大阪市などは、会場の跡地利用のうちリングの維持管理については民間企業からの応募は難しいと判断します。

最終的に、保存するリングとその周辺のエリア、およそ3.3ヘクタールについては、大阪市が市営公園として整備し、管理していくことで関係者が合意しました。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *