
「学童保育」を利用できない待機児童の数は全国的に減少していますが、東京23区のうち6つの区では利用対象を原則、小学3年生以下とするなど制限していることがわかりました。こうした自治体に住む4年生以上の子どもは希望していても学童保育が利用できず、待機児童として把握されない状況も生じています。
小学生が放課後の時間を過ごす「学童保育」は共働き家庭の増加などで利用のニーズが増えています。
一方で受け皿の整備が進んだ結果、今年度、定員に空きがないなどの理由で学童保育を利用できない待機児童の数は、全国的に4年ぶりに減少しました。
ただ、課題も出ています。
小学4年生になると学童保育が利用しづらくなる、学童の「小4の壁」ともよばれるものです。
学童保育の利用対象は、児童福祉法で以前は「おおむね10歳未満」とされていましたが、平成27年度からは全学年に対象が広げられ、国も自治体に対し、6年生までが対象となることを周知しています。
一方で、NHKが東京23区の自治体に聞き取り調査を行ったところ、文京区、墨田区、江東区、世田谷区、中野区、北区の6つの区で、受け皿に限りがあることなどを理由に、学童保育の利用対象を原則、小学3年生以下としていました。
また、学年で制限していないものの、小学3年生以下を優先し、実質、4年生以上の子どもは学童保育に申し込めない自治体もあり、希望していても利用できない高学年が待機児童として把握されていない状況も生じています。
学童保育の問題に詳しい新潟県立大学の植木信一教授は、「4年生なんだから学童保育を卒業して放課後は1人で過ごせるだろうと思われるかもしれないが、必ずしも全員がそうとは限らない。小学校にあがる節目で支援を途切れさせないために1年生の利用を優先するのは大事なことだが、そこで終わらせず、ほかの学年の子どもたちへの対応も丁寧にみていく必要がある」としています。
カウントされない“隠れ待機児童”
都内に住む30代の女性の長女は、ことしの春に4年生へ進級しました。
夫と共働きの女性にとって、長女が3年生までは放課後、安心して預けられる学童保育が生活の支えとなっていましたが、4年生となり、状況は一変したといいます。
自宅がある区では、学童保育の利用対象を学年で制限していませんが、低学年の申請を優先していて長女のような小学4年生以上が申請できるのは利用希望が定員に達しなかった一部の施設だけです。
自宅近くの学童保育では、今年度、低学年の利用で埋まったため、女性は長女の利用の申請ができませんでした。
区は、こうしたケースの場合、学童保育の利用を希望していても待機児童としてカウントしていません。
女性の長女は、いわば“隠れ待機児童”の状態になっているのです。
女性が仕事を終えて帰宅するのは夜7時半ごろで、近所に頼れる人もおらず、それまで長女は1人で過ごさざるをえないといいます。
女性は、本来あるはずの高学年の子どもがいる家庭のニーズが見逃され、今後、受け皿の整備を進める際に考慮されないのではないか、不安を感じています。
女性は「4年生以上の待機児童数を集計に入れていないということは、今後も4年生以上が利用できる学童クラブが用意されないか、用意される見込みがないように見えてしまいます。本当に心配で不安です。娘は来年は学童クラブに入りたいと強く言いますが、それに対して今は安心できる言葉をかけてあげることもできません。自治体には4年生以上の利用のニーズを把握して、受け皿の拡充などを検討してほしいです」と話していました。