神戸市のマンションで24歳の女性が殺害された事件で逮捕された容疑者とよく似た人物が、事件の3日前に、市内で別の女性のあとをつけていたことが捜査関係者への取材で分かりました。容疑者は、事件の3日前から神戸を訪れていて、警察は、対象とする女性を探していた可能性もあるとみて調べています。
東京 新宿区の会社員、谷本将志容疑者(35)は、8月20日、神戸市内にあるマンションのエレベーターの中で、24歳の会社員の女性をナイフで刺して殺害した疑いが持たれています。
これまでの調べで、容疑者は事件の日に、勤務先から帰宅する女性のあとを、およそ50分間にわたってつけていたとみられ、女性の勤務先付近の防犯カメラには、当日と前日の19日に加え、事件の2日前の8月18日にも、容疑者によく似た人物が写っていました。
また、容疑者は事件3日前の8月17日に神戸市に入り、現場近くのホテルに宿泊していましたが、その後の捜査関係者への取材で、17日に、このホテル付近で容疑者とよく似た人物が、別の女性のあとをつけていたことが分かりました。
この人物は、今回の事件と同じように、女性のあとに続いてオートロックのドアが閉まる前にマンションに侵入しましたが、不審に思った女性がエレベーターに乗らず、入ってきた人物がいなくなるまで待ったため、被害はなかったということです。
警察は、この人物は谷本容疑者とみられ、対象とする女性を探していた可能性もあるとみて調べています。
事件に至るまでのいきさつ
これまでの警察の捜査で、事件に至るまでのいきさつが徐々に明らかになっています。
【ことし7月】
容疑者は、7月に「関西に帰省したい」として、東京都内の勤務先に対し、8月17日から21日までの休暇を取得。
7月下旬には、この日程に合わせて東京駅と新神戸駅を往復する新幹線の切符を入手していたということです。
【8月17日】
そして、8月17日、神戸市に入ります。
市内のホテルにチェックインし、8月21日にチェックアウトする予定になっていたということです。
その日以降、ホテル周辺を、容疑者とみられる人物が歩き回っている様子が防犯カメラに写っていて、容疑者が対象となる女性を探していた可能性もあるということです。
また、神戸に入った初日に、容疑者とよく似た人物が、今回の事件の被害者とは別の女性のあとをつけて、オートロックの扉が閉まる前にすり抜ける形でマンションに入ったということです。
この女性は、不審な人物に気付き、エレベーターに乗らずに、いなくなるまで待ったということです。
【8月18日】
翌18日からは、事件で亡くなった女性の勤務先付近に現れる様子が、近くの防犯カメラに連日、写っていました。
18日は、近くの歩道を歩きながら、女性の勤務先の方に顔を向けるような様子が確認できました。
【8月19日】
さらに8月19日の夕方には、近くの歩道で携帯電話を耳にあてるようなしぐさをしながら歩く様子や、道路脇にしゃがみ込む様子などが確認できました。
【8月20日】
事件当日の8月20日には、女性が退社した午後6時半ごろ、容疑者とみられる人物が横断歩道がない場所で、車をよけながら小走りで道路を横切る様子が写っていました。
この人物は、反対側に渡ったあと、突然、向きを変えて歩き出し、被害者とみられる女性が通り過ぎたあとに、角から現れて、あとを追っていくような様子も写っていました。
このあと一緒に電車に乗るなどして、およそ50分間にわたって女性のあとをつけた疑いがあり、マンションに帰宅したところで襲ったとみられています。
専門家 “「略奪型」のつきまとい 被害者側で防ぐのは難しい”
今回の事件で、容疑者は、被害者のあとをおよそ50分間にわたってつけていたとみられ、警察の調べに対し、被害者の女性について「全く知らない人です」と供述しているということです。
また、女性からは警察への相談の履歴はなく、これまでのところ、2人の具体的な接点は確認されていません。
ストーカー問題に取り組むNPO「ヒューマニティ」の理事の小早川明子さんによりますと、見知らぬ人を一方的にターゲットにしたストーカーは、SNSの浸透などを背景に増加傾向にあるということです。
また、一般的に加害者の性的欲求が根底にあり、一方的にターゲットを見つけて狙うため、被害者は、こうした「略奪型」のつきまといに気付かないことが多く、被害者の側から防ぐのは非常に難しいということです。
そのうえで、小早川さんは「遅い時間帯は1人で外を出歩かないなど、最低限の自衛は有効だが限界がある。被害自体をなくすためには、加害者の過度な衝動を抑えるような治療プログラムが必要で、裁判所が治療を命じるなど、司法と医療が連携して検討する必要がある」と指摘しています。
神戸市 事件受け増設計画の防犯カメラ さらに100台追加
神戸市のマンションで24歳の女性が殺害された事件を受けて、神戸市は、市内で増設を計画していた防犯カメラをさらに100台追加する方針を決めました。
神戸市は、昨年度までに市内の駅周辺や通学路などに3200台余りの防犯カメラを設置していて、来年度までに5400台に増やすことを計画していました。
こうした中で今回の事件が起き、市は治安対策として、増設する防犯カメラをさらに100台追加する方針を決めました。
追加するカメラについて、市は、中心部の三宮地区などへの設置を想定していて、必要な費用を盛り込んだ今年度の補正予算案を9月に開かれる定例市議会に提出することにしています。
今回の事件で、警察は各地の防犯カメラの映像から足取りを調べる「リレー捜査」などによって、容疑者の逮捕につなげていて、市もカメラの映像を警察に提供したということです。
神戸市は「強盗や特殊詐欺などへの対策も課題になっており、安全・安心なまちづくりを進めていきたい」としています。