ことし3月慶応大学などのグループがiPS細胞を使った脊髄損傷の臨床研究で症状の改善がみられた世界初のケースと報告した患者の1人が初めて取材に応じ、研究への参加を決断した際の心境を語りました。 iPS細胞をめぐっては、ことしに入り、治療の実用化を目指した研究成果の発表などの動きが相次いでいます。 このうち慶応大学などのグループは事故などで脊髄を損傷し体が動かせなくなった患者4人にiPS細胞から作った神経のもとになる細胞を移植して運動機能を評価する臨床研究を行い、重症度の同じ患者がリハビリだけ行った場合よりも改善がみられたとことし3月に報告しています。 グループはiPS細胞を使った脊髄損傷の臨床研究で症状の改善がみられた世界初のケースとしていて、今回、2年前に移植を受けた患者が初めて取材に応じました。 この男性患者は4人の中で最も改善がみられ、スプーンなどを手に固定することで食事をとれるようになったほか自分で体重を支えられるようになり、歩く練習も始めたということです。 男性は「世界で例のない手術なので受けるかどうかすぐには決められませんでした。不安が9割、期待が1割でしたが可能性にかけようと決断しました。初めて足が動いたときはうれしくてすぐに妻に伝えました。リハビリは大変で痛みやしびれに悩まされていますが、周りの励ましもあり頑張っています。今回のものを含めいろいろな治療の研究が広がればと思います」と話していました。 慶応大学の中村雅也教授は、「中枢神経は一度傷つくと再生しないと信じられてきた。研究には手応えを感じていて、今後症例を重ね確証に近づけていきたい」と話していました。 研究グループは今後、国の承認を目指した治験を行うとしています。