去年、埼玉県の首都高速道路で、大型トラックを運転して渋滞の列に突っ込み、6人を死傷させた罪などに問われている元運転手の裁判で、検察は「尊い命を奪った刑事責任は極めて重大だ」として懲役8年を求刑しました。一方、弁護側は寛大な判決を求めました。
運転手をしていた降籏紗京被告(29)は去年5月、発熱などの症状があったのに大型トラックを運転し、埼玉県戸田市の首都高速道路で渋滞の列に突っ込み、3人を死亡させ、3人にけがをさせたとして、過失運転致死傷の罪などに問われています。
17日の裁判で「被害者参加制度」で審理に参加している遺族が意見陳述を行い、このうち、夫を亡くした船本恵津子さんは「深い悲しみ、憎しみ、苦しみでいっぱいだ。被告は被害者のことを考えていない。最も重い刑を与えてほしい」と訴えました。
検察は「3日前から体調不良だったが、運転を継続した。走る凶器と化した大型トラックを衝突させ、3人の尊い命を奪うなどした刑事責任は極めて重大だ」として懲役8年を求刑しました。
一方、弁護側は「真摯(しんし)に反省している。当時勤めていた会社の勤務管理がずさんだったことは、責任をいくらか小さくする事情だ」として寛大な判決を求めました。
最後に被告は「どのような刑でも受ける覚悟です。けがを負わせた3人と亡くなられた3人、そして遺族の方々には、大変申し訳ないことをしました」と謝罪しました。
判決は11月4日に言い渡されます。
遺族「ほっとした一方で喜べない気持ちも」
事故で亡くなった3人のうち、夫の裕紀さんを亡くした杉平智里さんが裁判のあと会見を開きました。
杉平さんは裁判で意見陳述をしたことについて、「夫とのエピソードを文章にすることがとてもつらかった。被告はきょうの裁判でもずっと無表情で、ひと事のように聞いていたように感じた。言いたいことを訴えたつもりだが、被告が最後に『1日も早く社会復帰をしたい』と言っていて、怒りを通り越してあきれた」と話していました。
そのうえで、検察が法廷で「重い刑を求刑した」と説明したことについて、「ほっとした一方で喜べない気持ちもある。より刑罰の重い危険運転致死傷の罪が適用されないことに、どこかふに落ちない部分もあると感じる人も多いと思うので、みんなで考える時期なのではないか」と話していました。
また、夫の宏史さんを亡くした船本恵津子さんはNHKの取材に対し、「検察の求刑には感謝していますが、悪質な運転がこれだけの刑罰で済んでしまうことには、納得できません。悪質な運転に対しての刑罰をより重くしてもらいたい」と話していました。