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全国各地でクマによる被害が相次ぎ、環境省によりますと、ことし4月から7月末までに、クマに襲われてけがをした人や、死亡した人は全国で55人で、年間で過去最多の被害となった2年前とほぼ同じ水準となっています。

環境省のまとめでは、ことし4月から7月末までにクマに襲われてけがをするなどの被害にあった人は、
▽長野県が13人、
▽岩手県が12人、
▽秋田県、福島県、新潟県で、それぞれ4人などの、合わせて55人で、
このうち北海道と岩手県、長野県で、それぞれ1人が死亡しました。

過去の同じ時期と比べると、年間を通じて過去最多の被害者数となった2023年度は56人で、今年度はほぼ同じ水準となっています。

一方で、九州と沖縄、北海道を除いた6月までのクマの出没件数は、全国で7248件で、2023年度の同じ時期の5691件より1.2倍余り増えています。

環境省によりますと、この時期は、山の中でクマの食べ物が少なく、出没情報が増加する時期だとして、生ゴミなどを長時間、外に出さないことなどを呼びかけています。

専門家 “気象の変化が影響か 接近させない対策を”

クマによる被害が相次いでいることについて、クマの生態に詳しい東京農工大学大学院の小池伸介教授は、気温や梅雨の期間などの気象条件の変化が影響している可能性があるとしたうえで、食べ物を求めて近づくクマを接近させないため、畑に電気柵を設けたり、倉庫に鍵をかけたりするといった対策が必要だと指摘しています。

小池教授は、ことしのクマ被害の傾向として、人が重篤な被害を受けるケースが市街地の中で立て続けに起きている点をあげています。

長期的な要因として、40年ほどかけてクマの生息域が拡大し、人とクマの距離が縮まっていると考えられると分析したうえで、
▽3月から5月にかけての気温が北日本では平年よりかなり高くなったほか、
▽地域によっては梅雨が短かったなど、
例年とは異なる気象状況が影響している可能性があるとしています。

クマの主食の植物や果実の成育の時期が早まり、この時期に食べ物が少なくなり、それによって、クマが食べ物を求めて例年と違う行動を取っている可能性があるとみています。

一方で、岩手県北上市と北海道福島町で、人がクマに襲われて死亡したケースでは、いずれも事前にクマが周辺で出没するなど、前兆があった中で被害が発生したとして、クマは、徐々に警戒心を緩めて大胆になっていったのではないかとしています。

小池教授は、食べ物を求めて近づくクマを接近させないための対策が重要だとして、
▽畑に電気柵を設けたり、
▽農作物などを保管する倉庫には鍵をかけたりするほか、
▽生ゴミなどのゴミ収集場所は、専用の箱を設置するなど、
地域で厳重に管理することなどが有効だとしています。

小池教授は「まさかクマがわざわざ来ないだろうという意識は捨てて、『来るかもしれない』という意識を持って、管理などをしていくことが大事だ」と話しています。

駆除めぐり自治体に抗議も 対応に苦慮

クマの被害が各地で相次ぐ中、駆除をめぐる抗議などが自治体に相次ぎ、対応に苦慮する事態が起きています。

北海道福島町では、7月に新聞配達中の52歳の男性がヒグマに襲われて死亡し、その後、駆除されました。

駆除が行われる前後に、北海道庁や町役場には、「クマを殺すのはかわいそう」「山へ返すべきだ」という内容のほか、「クマをすべて駆除しろ」などの抗議の電話やメールなどが、合わせて200件以上寄せられたということです。

中には、2時間以上にわたる長い電話や、職員の人格を否定するようなメールもあり、職員がその対応に追われたということです。

こうした事態を受けて、浅尾環境大臣は、8月5日の閣議後の記者会見で「過度な苦情は、職員数が限られギリギリの体制で対応する自治体の活動を制限し、自治体職員やハンターの活動を萎縮させ、新たな事故につながりかねない。クマが連日出没して不安な生活を送る人々の状況や、人身被害を防止するための対策の必要性について、ご理解をいただいて、節度のある行動をお願いしたい」と理解を求めました。

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