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お盆を過ぎても各地で猛烈な暑さが続いていますが、ことしも残暑が厳しく、秋も暑くなる見込みです。気象庁の3か月予報では季節の進行が遅く、9月と10月は平年より気温が高いと予想されています。気象庁は「暦の上では秋でも高温が予想されているので、熱中症対策を続けてほしい」と呼びかけています。

記事後半では、熱中症対策の注意点について医師のQ&Aをお伝えします。

7月は全国の平均気温が明治時代に統計を取り始めてから最も高くなったほか、8月5日には群馬県伊勢崎市で41.8度を観測して過去最高を更新しました。

気象庁が19日発表した来月から11月の3か月予報では、フィリピン付近などで海面水温が高いことなどから太平洋高気圧とチベット高気圧が張り出しを続け、上空の偏西風は平年より北寄りを流れる見込みで、日本付近は引き続き暖かい空気に覆われやすくなると予想されています。

平均気温 9・10月は全国的に「高い」

このため季節の進行が遅く、3か月を通して平均気温は全国的に「高い」と予想されています。月別に見ると特に9月と10月は全国的に「高い」と予想されています。

11月は北日本で「高い」と予想され、東日本は「平年並みか高い」、西日本と沖縄・奄美では「ほぼ平年並み」と予想されています。

降水量 10月は前線影響受けやすく

また、降水量は9月は全国的にほぼ平年並み、10月は平年より遅れて秋雨前線の影響を受けやすくなる見込みです。

東日本と西日本の太平洋側、それに沖縄・奄美は「平年並みか多い」と予想され、それ以外の地域は「ほぼ平年並み」と見込まれています。

11月は、全国的に「ほぼ平年並み」と予想されています。

気象庁異常気象情報センター 及川義教所長
「秋の深まりといった季節の進行が遅い傾向が予想されていて、夏が長く、冬がすぐに来たという体感になる可能性もある。暦の上では秋でも高温が予想されているので、油断をせずに熱中症対策を続けてほしい」

「台風から湿った空気が秋雨前線に供給されるというパターンもある。『出水期』は秋にかけても続くので、最新の気象情報に注意してほしい」

《厳しい残暑見据え 各地で対策も》

2学期の始業式遅らせる学校も

東京・府中市の市立小中学校では、これまで2学期の始業式を8月下旬に行っていました。

厳しい暑さの中、子どもたちが登下校中などに熱中症になるリスクを減らそうと、ことしは2学期のスタートを遅くして、33校の小中学校すべてで始業式を9月1日に行うことにしました。

このうち小柳小学校では去年は8月29日だった始業式が3日遅くなります。夏休みが増えた分、減ることになる授業時間については、1日5コマの授業を6コマにするなどして対応する予定で、冬休みは例年と同じ日数を確保するということです。

しかし、暑さは9月も続くとみられます。学校は子どもたちに対して、登下校中に帽子を着用したり必要に応じて日傘を差したりするよう指導しているということです。

府中市の小中学校では、ほかにも熱中症対策を強化していて、今年度から夏休み期間中のプールの開放をとりやめたり、運動会の実施時期を「5月中か10月以降」に見直したりしています。

小柳小学校 内井利樹校長
「熱中症のリスクをいかになくしていくかが学校の課題だ。やれることをやっていくことが今後も必要だと思う」

夏休み延長の学校 増加傾向

厳しい暑さの影響で夏休み期間を延長する学校は年々、増加傾向にあります。

文部科学省によりますと、4年前に夏休みを延長したり、臨時休業日を設けたりしたのは全国の小中学校などで2%あまりでしたが、2年前には10ポイントあまり増えて13%にのぼっていたということです。

都道府県別でみると、最も多いのが北海道で80.1%、山形県が41.3%などとなる一方、沖縄県が1.7%、宮崎県が2.5%と西日本に比べ東日本の方が多い傾向にあることがうかがえます。

文部科学省はことし5月、熱中症対策として夏休みを柔軟に運用するよう通知を出していて、夏休みを延長する代わりに冬休みを短縮して授業時間を捻出することも検討してほしいとしています。

高齢者への自宅訪問 9月末まで継続へ

東京・大田区では、毎年夏の時期に、1人暮らしの高齢者などの自宅を地域包括支援センターの職員などが訪問して、熱中症への注意を呼びかけています。

18日はセンターの職員が区内に住む82歳の女性の自宅を訪れ、エアコンが使われているか確認し、室温が適切に保たれているかチェックしました。その上で職員は、来月も暑さが続くことをふまえて引き続き冷房を使って、水分をいつもより多めにとることや、少しでも体調がおかしいと思ったらすぐに病院へ行くように呼びかけました。

この住宅の女性は今月、寝ているときに寒くなったため冷房を切ったところ、その後、めまいや手のしびれを感じるようになり、軽度の熱中症だと診断されたということです。その後は冷房を常に使用しているということで、女性は「この暑さが続くと大変だが、なるべく外に出ず、すぐに水を飲むように気をつけたい」と話していました。

センターでは、9月になると外出の機会が増えたり冷房を使わなくなったりして、高齢者の熱中症リスクが高まるおそれがあるとして、来月末までこの訪問活動を続けることにしています。

大田区地域包括支援センター新蒲田 社会福祉士 窪園美音さん
「8月は熱中症に気をつけて過ごしていた人が、『秋だから大丈夫』と思い込んで対策を怠ってしまうのが心配だ。これからも気温が30度以上になる日があると思うので、対策の呼びかけを続けたい」

遊泳期間延長の海水浴場も

宮城県気仙沼市の大島にある「小田の浜海水浴場」は、白い砂浜が続く遠浅の海で、風が沖合の島に遮られるため、波が静かで青い水面が広がる美しい景観で知られています。

宮城県内の多くの海水浴場は遊泳できる期間が今週末までになっていますが、ここでは近年の猛暑の影響と観光客などからの要望を受けて去年から遊泳期間が延長され、ことしも来月15日まで延長するということです。

横浜市から帰省で訪れていた女性は「暑くてしょうがなかったので海に来ました。こどもの熱中症が心配なので、少しでも涼しく過ごせるところがあると助かります」と話していました。

この海水浴場では今月24日までは毎日、25日から来月15日までは土日祝日に限って遊泳が可能な時間を設ける予定だということです。

海水浴場を運営 気仙沼市観光協会大島支部 村上敬士支部長
「昔は8月、お盆を過ぎると風が冷たくなったりしたが、ここ数年はまったくそういった気配もなく暑さがどんどん後ろ後ろへ行っているような感じだ。暑い中だと泳いでも体力だけ消耗して疲れしか残らないが、これから涼しくなってくれば楽しく遊べる感じになると思う」

建設現場 熱中症対策を強化

建設現場もこれまで以上に熱中症の対策を強化しています。東京・大田区の高層マンションの建設現場では、19日も炎天下でおよそ20人が作業にあたっています。

熱中症対策として、現場には送風機が設置され、気温を下げるための水が定期的にまかれているほか、作業員たちは会社から貸与された空調ファンがついたベストを着用しています。

それでも作業員からは「暑さがきつくてこのベストがなかったら死んでしまう」といった声や「サウナに入って仕事しているようだ」という声が上がっていました。

この現場では、ことしから始めた新たな対策として、気温や湿度だけでなく「暑さ指数」を測る気象計などが設置されました。

「暑さ指数」が厳重警戒の基準の28を超えるとLEDライトが赤く点滅するしくみになっていて、19日もライトが点滅していました。「暑さ指数」などのデータは現場をまとめる責任者のスマートフォンにも表示され、一定の基準を超えると作業員に休憩をとるよう促します。暑さ指数が28以上になると1時間に1回以上、31以上になると30分に1回以上休憩を取るということです。

現場の1階部分には冷房2台や冷蔵庫のほか給水器や製氷機が設置された休憩所があり、作業員たちは体を冷やしてからふたたび作業に向かっていました。

「大東建託」現場所長 鈴木徹さん
「ことしは早い時期から暑くなり始めたので疲労の蓄積を心配している。秋になってもまだまだ真夏のような暑さが続くので、熱中症の危険がなくなる時期までは無理をせずにいきたい」

“残暑バテに要注意” 医師Q&A

秋も厳しい暑さが予想される中、熱中症対策に詳しい済生会横浜市東部病院の谷口英喜医師に今後の対策を聞きました。

谷口医師が指摘したのは“残暑バテに要注意”です。

Q 来月以降も厳しい暑さが予想されていますが、注意点はなんですか。

例年、暑さが落ち着くお盆すぎの時期から残暑によって起こる“残暑バテ”になる人が多くなります。

しかし、ことしは例年よりも暑い日々が続きました。“猛残暑バテ”といえるほど例年よりも疲れが体に蓄積されているおそれがあります。

さらに、秋にかけてもまだまだ厳しい暑さが予想される中、暑さに弱いとされる高齢者をはじめ、対策を緩めないでほしいです。

Q 気をつけるべき症状はなんですか。

“残暑バテ”の症状は大きく3つです。

疲れが取れない、食欲の低下や胃腸の調子が悪くなる食欲の不振、寝つきの悪さや熟睡できないなど睡眠障害があります。

こうした症状が起きる理由は、暑さが長期間にわたり、体力が消耗していつまでも疲れが残ることや冷たいものを取り過ぎることで胃腸の調子が悪くなること、エアコンの使用が長時間に及ぶと、自律神経の働きに支障をきたして睡眠障害などが引き起こされることなどがあげられます。

Q どんな対策が有効ですか。

なにより自律神経を整えることが大切です。

具体的な方法としては、朝日を浴びて生活リズムを整えること、体温よりも少し高い38度ぐらいのぬるめのお風呂にゆっくり入ることが有効です。

また例年であれば朝夕が涼しくなってくる時期に徐々にエアコンの使用を避けていくことも大切ですが、ことしはまだまだ厳しい暑さが続きます。エアコンを避けるよりも、むしろ適切に使って熱中症にならないことが大切です。

厳しい暑さが長い期間にわたり体力的にも精神的にもダメージがきていると思います。9月になり秋が近づいてきても、屋外での活動の場合は、こまめに水分補給や休憩を取るなど、熱中症対策を続けてほしいと思います。

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