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福島第一原発 処理水

福島第一原子力発電所にたまるトリチウムなどを含む処理水について、東京電力が基準を下回る濃度まで薄めた上で、海への放出を始めて2年となりました。海や水産物など環境への影響はどうなっているのか?専門家にも取材してまとめました。

Q1.処理水の放出で、海や魚などに影響は出ていないの?

A.処理水の放出による海への影響について、東京電力や国などは原発周辺で海水や水産物のモニタリングを行い、トリチウムの濃度を公表しています。

このうち海水については、東京電力が原発から3キロ以内の海域で放出期間中は毎日、放出していない期間は週に1回、海水を採取してトリチウムの濃度を分析しているほか、原子力規制庁や環境省、福島県もモニタリングを行っています。

これらの分析結果では、この2年間で検出された海水に含まれるトリチウムの濃度は、最大で1リットルあたり61ベクレルでした。

これは東京電力が自主的に放出の停止を判断する基準としている700ベクレルや、WHO=世界保健機関が定める飲料水の基準の1万ベクレルを大きく下回っています。

水産物については、水産庁が福島県や近隣で水揚げされたヒラメやカレイなどに含まれるトリチウムの濃度を調べています。

これまでに分析が終わった422の個体すべてで、機器で検出できる下限値の1キロあたりおおむね10ベクレルを下回りました。

Q2.放出されたトリチウムは、人や魚に蓄積したり濃縮したりしないの?

A.SNS上では、おととしの処理水の放出開始の前後に「トリチウムが生き物に蓄積するのではないか」といった内容の投稿が見られました。

茨城大学大学院理工学研究科 鳥養祐二教授

トリチウムについて30年にわたり研究している茨城大学大学院理工学研究科の鳥養祐二教授は「これまでの研究では、トリチウムが生物の体内から排出されずに蓄積するといったデータは確認されていない」と話しています。

トリチウムの化学的な性質は水素とほぼ同じで、地球上にあるほとんどのトリチウムは水の一部として存在することがわかっています。

鳥養教授作成の資料より

鳥養教授によりますと、海水にはもともと1リットルあたり0.1ベクレルほどのトリチウムが含まれているといいます。

このため、処理水が計画通りに大量の海水で薄められて海に放出されれば、放出口から2キロから3キロほど離れた場所では、もともと海水に含まれているトリチウムの濃度と変わらなくなると指摘します。

また、体の中に取り込まれた水がやがて体の外に排出されるように、トリチウムも人や魚の体内に取り込まれても最終的に排出されるということです。

トリチウムが魚に影響を与えないか確認するため、東京電力は2022年からことし3月まで、海水で薄めた処理水を入れた水槽でヒラメとアワビ、海藻を飼育する試験を行いました。

ヒラメの飼育試験の様子

Q3.処理水の放出で廃炉は進んでいるの?

A.福島第一原発のタンクにたまっている処理水の量は、8月7日時点で約127万トンで、保管するタンクは1000基余りあり、敷地南側の大半を占めています。

国と東京電力は廃炉作業を進める上で敷地を最大限利用する必要があるため、タンクが敷地をひっ迫させている状況は、廃炉作業を進める上で課題になっているとしています。

こうした中、処理水の海への放出が行われ、タンクで保管する処理水も減り、一部は空になりました。

ことし2月からはタンクの解体作業が始まり、約半年で11基の解体が終わりました。

これによって約1600平方メートルの空きスペースが確保されました。

ただ、1号機から3号機にある「核燃料デブリ」の冷却や建屋に流れ込む地下水の影響などで、今も1日あたり70トンのペースで汚染水が発生し、それに伴い新たに処理水も生じています。

このため、タンクで保管する処理水の減少量は、海に放出した処理水の量を下回っています。

東京電力によりますと、この2年間で13回の処理水の放出が完了し、累計の放出量は10万1000トン余りだったのに対し、タンクで保管する処理水の減少量は約5万8000トンでした。

タンクで保管する処理水の量は、放出が始まる前と比べて、約4%減少したということです。

こうした影響で空になるタンクも限られ、ことし2月からの1年余りで解体に着手できるタンクは21基となる見込みです。

東京電力によりますと、敷地内にあるすべてのタンクの解体が終わる時期は未定で、処理水とタンクの管理は引き続き課題となっています。

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