2 | NHK

2-|-nhk

ことし5月から始まった随意契約による備蓄米の販売期限が8月末に迫るなか、大手小売店の中には、期限までに売り切れず、期限の延長を求めるところも出ています。
農林水産省は、延長された場合、本格的に出回る新米の価格に影響が出るとの見方があることから、今後の対応について慎重に検討を進めています。

販売できたのは約3割 倉庫搬出に想定より時間

九州地方を中心に店舗を展開する大手ドラッグストアは、随意契約の備蓄米2万トンの購入を申請し、ことし6月から5キロ税込み1980円で販売しています。

このうち東京 世田谷区の店舗では、18日も来店客が次々と備蓄米を買い求めていましたが、会社によりますと、申し込んだ2万トンのうち、18日までに販売できたのは3割ほどにとどまっているということです。

会社では精米や物流の体制を整えていますが、備蓄米を倉庫から出す作業に想定より時間がかかっているため、十分な量を販売できていないということです。

販売の期限は8月末に迫っていますが、割安な備蓄米の需要は一定程度あることから、会社では国に対して販売期限を延長するよう求めています。

「コスモス薬品」経営企画部の杠和大マネージャーは「2万トンすべてを5キロ税込み1980円で販売すると告知している。なんとか販売期限を延長していただき、最後の1粒まで消費者に備蓄米を届けたい」と話していました。

小売企業 購入申請の備蓄米キャンセルも

随意契約で備蓄米の購入を申請した小売企業の間では、一部をキャンセルする動きも出ています。

このうち、九州地方を中心にスーパーなどを展開しているトライアルカンパニーは、随意契約で9000トンの備蓄米の購入を申し込みましたが、6000トン分をキャンセルしました。

また埼玉県に本社を置くスーパーのマミーマートは、2000トンを申し込みましたが、このうちの一部をキャンセルしたということです。

さらに大手スーパーのイオンは、あわせて2万5000トンの購入を申し込んでいましたが、配送の遅れなどから8月中にすべてを受け取るのが難しい状況だということで、一部をキャンセルするかどうか検討しているということです。

随意契約の備蓄米の販売期限まで2週間を切る中、ほかのスーパーやコンビニチェーンなどでもキャンセルは広がっていて、企業からは販売期限を延長するよう求める声が上がっています。

ドン・キホーテ運営会社社長「今後も継続して販売したい」

大手ディスカウントストアの「ドン・キホーテ」などを運営する会社の吉田直樹社長は18日の決算発表の会見のあとNHKの取材に応じ、「当社では入荷した分は順調に売れているものの、まだすべてのコメが入荷できているわけではない。実際に店舗で販売してみると備蓄米に一定の需要があることが分かったので、今後も継続して販売させてもらいたい」と述べました。

そのうえで「今後、新米が出回ってくるがコメの価格が上がったり、量も足りなくなったりするのではないかと言われている。いったん備蓄米の販売を中断したとしても、何らかの形で復活させれば消費者は安心して、買いだめも防げるのではないか」と述べ、政府に対して、備蓄米の販売期限を延長するよう求めていました。

随意契約の備蓄米放出後 一時3500円台まで値下がり

農林水産省は高騰が続いていたコメの価格を引き下げようと、ことし5月から随意契約による備蓄米の放出を始めました。

全国のスーパーでの平均価格は最も高い時で5キロあたり税込みで一時、4200円を超えていましたが、備蓄米が5キロ2000円程度で販売されたことによって、直近で最も安い時には3500円台まで値下がりしました。

農水省 新米価格に影響の見方も 対応慎重に検討

農林水産省は随意契約で備蓄米を売り渡す小売業者に対し、当初から、8月20日までに引き取ること、そして8月末までの期限に売り切ることを求めていました。

しかし農林水産省によりますと、備蓄米を出荷する際の異物の確認作業や、販売先まで届けるトラックの手配などに時間がかかっていることから、小売業者の間では期限までに売り切れるか不透明だという見方も出ていました。

実際、8月1日時点で購入の申し込みがあったおよそ30万トンのうち、小売業者から消費者への販売量は8月10日の時点で10万7000トン余りにとどまっているということです。また、キャンセルされた備蓄米も8月1日時点で2万9000トンにのぼるということです。

販売期限が近づき、小売業者からは期限の延長を求める声が強まる一方、延長された場合、今後、本格的に出回る新米の価格に影響が出るとの見方があることから、農林水産省は今後の対応について慎重に検討を進めています。

専門家「備蓄米人気落ち着くも 柔軟に売れる環境を」

コメの生産や流通に詳しい宮城大学の大泉一貫名誉教授は、随意契約による備蓄米の販売が進んでいない状況について「メッシュチェックという品質確認や異物混入の検査に時間がかかっていると言われているが、確かにそうなのだろう。当初、随意契約の備蓄米の人気はすごいものがあったが、その人気が少し落ち着いてきた。安さや人気に乗じて試しに買ってみようという消費者の需要が一巡したのだと思う」と話しています。

そのうえで8月末に随意契約の備蓄米が販売の期限を迎えることについて「農林水産省としては随意契約の備蓄米によって新米の価格に影響が及ぶのを避けたいのだろう。ただ安いコメが並ばないと海外産が入ってくるので、備蓄米も8月末で販売を切らないで、売りたい事業者がいれば9月以降も柔軟に売れるような環境を農林水産省は作ってほしいと思う」と指摘しました。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *