すべての都道府県で時給1000円を超えることになった最低賃金は、10月1日から順次、適用が始まります。大幅な引き上げで企業の準備期間を十分に確保する必要性があるなどとして、現在の制度になって初めて年を越えて適用されるところも出ています。
最低賃金は、企業が労働者に対して最低限支払わなければならない賃金です。
今年度の改定で、最低賃金は全国平均の時給で66円引き上げられて1121円となり、すべての都道府県で初めて1000円を超え、10月1日から順次、適用が始まります。
66円の引き上げ額は、現在の制度になった2002年度以降で最大です。
引き上げ後の時給が最も高くなるのは
▽東京都の1226円で
最も低いのは
▽高知県、宮崎県、沖縄県の1023円です。
今回は物価の高騰や地域間格差の是正、人材流出への危機感などを背景に、九州や東北を中心に引き上げ額が大きくなり
▽82円の熊本県
次いで
▽81円の大分県
▽80円の秋田県
▽79円の岩手県
▽78円の福島県、群馬県、長崎県となっていて
合わせて18の県で70円以上の引き上げとなりました。
例年はほとんどの地域で10月中に新しい最低賃金の適用が始まりますが、今年度は大幅な引き上げにより企業の準備期間を十分に確保する必要性があるなどとして、現在の制度になって初めて年を越えるところがあり
▽福島県、徳島県、熊本県、大分県は来年1月に
▽秋田県と群馬県は来年3月にそれぞれ適用されます。
【Q&A】最低賃金とは
Q. そもそも最低賃金とは。
A. 「最低賃金法」という法律で決められ、全国のどこの事業所にも適用されます。
都道府県ごとに最低額が決められ、労働者に支払う賃金がそれを下回ることがあれば、経営者や事業主などに50万円以下の罰金が科せられます。
最低賃金は時給で示されますが、パートやアルバイトだけでなく、月給制で働く正社員や契約社員など、名称や雇用形態にかかわらず原則として雇われて働くすべての人が対象になります。
Q. なぜ、九州や東北で特に大きな引き上げになったの?。
A. 九州や東北は現在、最低賃金が全国平均より低く、物価の高騰や地域間格差の是正、それに人材流出の危機感などを背景に大幅な引き上げとなりました。
最低賃金はまず国の審議会が目安を示し、それをもとに各都道府県で実際の引き上げ額を決めます。
昨年度はこの目安を上回る引き上げ額となったのが27県でしたが、今年度はそれが39道府県に増え、競うように最低賃金が引き上げられている形です。
Q. 今年度は、新しい最低賃金の適用が年を越えるケースもあるが影響は?。
A. 労働者側にとっては一定期間、増えた分を受け取れないということになります。
例えば最低賃金が現在、最も低い秋田県は今回の改定で80円引き上げられ1031円になりますが、適用されるのは来年3月31日なので、それまでは951円のままです。
例年はほとんどの地域で10月中に適用される新しい最低賃金ですが、今回は10月の適用開始が20都道府県で、年を越す6県を含めて11月以降の適用が27府県です。
Q. 最低賃金の引き上げは企業にとって負担では?。
A. 特に中小企業は大きな負担です。
必要な設備投資の後回しや、雇用の調整につながりかねません。
国も支援策を打ち出していますが、最低賃金に詳しい法政大学経営大学院の山田久教授は「政府や都道府県などが中小企業の生産性の向上に対しての支援をきめ細かにやっていく。そうして底上げしやすい環境を整えていくことが非常に重要だ」と話しています。