おととし、脅迫などの疑いで大阪府警に2度にわたり誤って逮捕された男性が、犯人と決めつけた違法な取り調べで苦痛を受けたなどとして、24日、大阪府や国などに賠償を求める訴えを大阪地方裁判所に起こしました。
訴えを起こしたのは、当時、大阪市に住んでいた20代の会社員の男性です。
男性はおととし、SNSで知人の女性に危害を加えるようなメッセージを送ったなどとして、大阪府警 守口警察署に脅迫やリベンジポルノ防止法違反などの疑いで2度にわたり逮捕されました。
しかし、その後の捜査で、メッセージは別の人物のアカウントから送信されていたことが分かり、男性は釈放されたうえで警察や検察から謝罪を受けました。
この事件では、男性になりすましてメッセージを送っていたなどとして、被害者の知人がその後、逮捕・起訴され、有罪判決を受けています。
訴えによりますと、男性は調べに対し容疑を一貫して否認していましたが42日間にわたって拘束され、この間、警察官や検察官から「犯人はあなたしかありえない」とか「100%犯人だと思っている」などと言われ、うその自白を強要されたということです。
男性は「警察や検察は必要な捜査を尽くさなかった。その結果、身体を拘束され、犯人と決めつけた違法な取り調べによって精神的苦痛を受けた」などとして、24日、大阪府や国などに合わせて1900万円余りの賠償を求める訴えを大阪地方裁判所に起こしました。
提訴の後、男性は代理人の弁護士を通じて「経緯を明らかにし、自分のようなずさんな捜査による誤認逮捕が二度と起きないようにしてほしい」とするコメントを出しました。
誤認逮捕をめぐる経緯
男性はおととし4月、SNSで知人の女性に危害を加えるようなメッセージを送ったなどとして、大阪府警・守口警察署に脅迫と強要未遂の疑いで逮捕されました。
さらに、その翌月には女性のわいせつな画像を別の知人に送ったとして、リベンジポルノ防止法違反の疑いで再逮捕されます。
当時の調べに対し、男性は容疑を一貫して否認していました。
大阪府警によりますと、その後の捜査で、男性が送ったとされたメッセージや画像は別の人物のアカウントから送信されていて、何者かが男性になりすましたとみられることが分かったということです。
男性は42日間拘束された後、いずれも処分保留で釈放され、不起訴になりました。
大阪府警はおととし7月、いずれの事件とも無関係で誤認逮捕だったとして、男性に謝罪しました。
そのおよそ3か月後のおととし10月、被害者の女性の知り合いで、当時31歳の美容師が男性になりすましてメッセージを送ったとして脅迫などの疑いで逮捕されました。
調べに対し、「嫌がらせをして気を引きたかった」などと供述していたということで、美容師はその後起訴され、去年3月に執行猶予の付いた有罪判決が確定しています。
代理人の弁護士「裁判通じて捜査の問題点を明らかに」

代理人を務める秋田真志弁護士によりますと、男性は誤って逮捕されてから2年余りがたった今も、テレビで事件に関する報道を見ると不安を感じ、仕事にも影響が出ているということです。
提訴後の記者会見で秋田弁護士は「客観的な証拠を収集していれば男性が犯人でないことは明白で、誤認逮捕は容易に防げた。裁判を通じて捜査の問題点を明らかにし、二度と同じようなえん罪が繰り返されないよう求めていきたい」と話していました。
大阪府警「お答えは差し控える」

大阪府警察本部は「近く訴訟が予定されているとの報道に接しているので、お答えは差し控えさせていただきます」とコメントしています。
大阪地検「コメントはありません」

大阪地方検察庁の上野正晴次席検事は「訴えが提起されたとの連絡に接していないので、コメントはありません」としています。