沖縄本島で収容の遺骨はアメリカ兵か「安定同位体分析」で判明
80年前に激しい地上戦が行われた沖縄本島で去年収容された遺骨を「安定同位体分析」という方法で調べたところ、アメリカ人の可能性があるという結果が出ていたことが分かりました。
この分析手法は比較的迅速に出身地を判別できますが、日本では限定的な利用にとどまっていて、今後海外で見つかった日本人とみられる遺骨の鑑定にも活用が進むか遺族の期待が集まっています。
厚生労働省などによりますと、去年4月、沖縄県西原町の山林で遺骨が収容され、炭素の同位体の比率などから出身地などを推定する「安定同位体分析」を行ったところ、ことし5月にアメリカ人の可能性があるという結果が出たということです。
連絡を受けたアメリカの専門家が来日し、15日は現場を視察したあと、県の戦没者遺骨収集情報センターを訪れ、調査結果の説明を受けた上で遺骨を受け取りました。
持ち帰ってDNA鑑定を行い、人物を特定したいとしています。
捕虜・行方不明者調査局のジョン・バード科学鑑定担当所長は「日本や関係国と協力して遺骨を遺族の元に返すよう努めていきたい」と話していました。
「安定同位体分析」は比較的迅速に出身地を判別できアメリカではDNA鑑定と並んで使われていますが、日本では研究段階にあるとして、沖縄など一部の地域での活用にとどまっています。
国内では、鑑定を待っている状態の遺骨が多数、保管されていて、数年かかるケースもあるということで、今後、海外で見つかった遺骨の鑑定などへの活用が進むか、遺族の期待が集まっています。
「安定同位体分析」とは
「安定同位体分析」は遺骨に含まれる炭素や窒素などの特徴を分析するもので、アメリカで活用が進んでいます。
これまで国が行ってきた鑑定手法である「DNA鑑定」は遺骨に含まれるDNAと希望する人のDNAを比較し、血縁関係があるかどうかを確認するものでした。
一方、「安定同位体分析」は炭素の同位体の比率を調べることで亡くなった年代を推定します。
炭素や窒素などをさらに詳細に分析すると、生まれ育った場所も推定できるといいます。
出身地の判別を迅速化できるとされますが、厚生労働省は、国内ではまだ研究段階の手法だとしていて沖縄など一部の地域でのみ活用されています。
先の大戦で、海外などで犠牲になった240万人の日本人のうち、遺骨が収集されたのは128万人。
見つかった遺骨は検体を持ち帰って国内でDNA鑑定を行い、日本人と特定できた遺骨を送還していますが、関係者によるとまだ1万4000人あまりの遺骨が鑑定を待っている状態で保管されているということです。
DNAの抽出などに時間がかかることが課題で、鑑定までに数年かかるケースもあるということです。
アメリカでは「安定同位体分析」と「DNA鑑定」の2つの方法で戦没者遺骨の鑑定を進めています。
ことし4月には、遺骨収集や鑑定などを担当するアメリカの高官が来日し、日本でも「安定同位体分析」を本格的に導入し迅速に鑑定を進めるよう要請しています。
これについて、今回、沖縄を訪れているアメリカ国防総省、捕虜・行方不明者調査局のジョン・バード科学鑑定担当所長はNHKの取材に対し「第二次世界大戦には色々な人種の人が関わっていて、どの国も多くの人が行方不明のままで困っている。人道的な観点から、命を捧げた人たちの遺骨を各国で見つけ、それぞれの家族に返すべきだと考えている」と話していました。