実在が確認できない医師を名乗って医療や健康に関する情報を語るAIで作られたとみられる動画が動画投稿サイト「YouTube」に多数、投稿されていることがわかりました。厚生労働省は「医師免許のない人が動画を作成したとすれば、医師法違反の可能性がある」としています。 目次 動画に登場する“医師”は実在するのか 専門家「広告収入目的の可能性 極めて危ないコンテンツ」 「YouTube」に投稿されているこれらの動画はAIで映像や音声を作ったとみられ、「大学病院の元部長」や「心臓病の専門医」などと称する人物が長生きや健康の秘けつなどを語るものであわせて100本以上投稿されています。 このうち再生回数が1万回以上の動画に登場する50人について、名前から医師免許があるか確認できる国のシステムで検索したところ、およそ6割にあたる31人は該当者がいませんでした。 このシステムは同姓同名の医師がいる場合区別が難しいこともありますが、名前の登録があった大学病院の元部長と称する1人について大学病院に取材すると過去に在籍はないという回答でした。 また、心臓病についての動画の一つを専門家が確認したところ、医学的に不正確な内容が含まれていてそのまま従うと治療に悪影響が出るおそれがあるということです。 NHKはこの動画の投稿者に取材を申し入れましたが19日までに回答はなく、こうした動画の一部はサイト側から公開を停止されました。 厚生労働省医政局医事課は「動画の詳細は把握していないが医師でない人が医師を名乗ってはならないとする医師法の規定に違反する可能性がある。医療の情報は信頼できる情報源にあたってほしい」としています。 動画に登場する“医師”は実在するのか 動画に登場する医師は実在するのか、このうち4人について詳しく調べました。 医師は2年に1度、勤務先などを国に届け出ることが法律で義務づけられていて、厚生労働省はこの届け出の情報をもとに名前などを入力すると医師免許があるか確認できるシステムを一般公開しています。 このシステムを使って動画で「81歳の現役の心臓病の専門医」と称していた1人について名前を検索したところ、該当者はいませんでした。 また、心臓病に関わる専門医を認定している2つの組織、「日本循環器学会」と「心臓血管外科専門医認定機構」にもそれぞれ取材しましたが、同じ名前の専門医はいないということです。 このほか、「100歳の現役医師」や、「精神医学の権威」も国のシステムで該当者がなく、「東京大学病院の内分泌内科の元部長」は、国のシステムに同姓同名の登録がありましたが、東京大学医学部附属病院に問い合わせたところ、同じ名前の医師が過去に内分泌内科で部長を務めた事実はないということです。 医学的に不正確な内容も含まれるか さらに、動画には医学的に不正確な内容が含まれているという指摘もあります。 このうち「81歳の現役の心臓病の専門医」が登場する動画では、胸に痛みがある場合血が固まりにくくなる薬をすぐにかみ砕いて飲むよう勧めていますが、循環器内科が専門の東邦大学医学部の中村正人教授によりますと、心筋梗塞以外の病気だった場合、逆に症状が悪化するおそれがあるということです。…