心臓 人工弁カテーテル手術 長期治療データ 調査へ | NHK

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心臓 人工弁カテーテル手術 長期治療データ 調査へ

医療・健康

大阪大学医学部附属病院のグループがカテーテルを使って心臓に人工の弁を埋め込む手術の経過を調べたところ、10年以内に弁がうまく機能しなくなり、再手術が必要になったり死亡したりしたケースがあわせて30例近くあったことがわかりました。この手術は高齢者を中心に普及していますが、グループは長期の治療成績のデータが十分でないとして全国の医療機関と調査することにしています。

この手術は心臓の弁がうまく開かず血液が流れにくくなる「大動脈弁狭さく症」という病気の患者に太ももなどの血管からカテーテルと呼ばれる細い管を通して人工の弁を埋め込むもので、高齢者を中心に全国で年間1万件以上行われています。

開胸手術より負担が少ないとしてこの10年ほどで急速に普及したこともあり、国内での長期の治療成績はまだ詳しくわかっていません。

このため大阪大学医学部附属病院のグループが院内で手術した1500件余りを検証したところ、4年から9年たってから埋め込んだ弁がうまく機能せず血液が流れにくくなり、再手術が必要になった患者が28人いたことがわかりました。

このうち15人は症状が悪化し1年以内に亡くなったということです。

グループは手術の方法を選ぶ際に開胸手術と比べた治療成績のデータが必要だとして、全国およそ40の病院と共同で患者の経過を10年間追跡する調査を始めることになりました。

大阪大学大学院医学系研究科の前田孝一特任講師は、「体力的に問題のある患者でも受けられるのは画期的で爆発的に普及したが、長期の治療成績について国内のデータが十分でないのは問題だ。どんな患者に勧めるべきか判断するためのデータを集めたい」と話していました。

TAVI 国内外の状況

カテーテルを使って心臓に人工の弁を埋め込む手術はTAVIと呼ばれ、国内ではこの10年ほどの間に急速に普及しました。

TAVIと開胸手術のどちらを選択するかについて、日本循環器学会などが2020年に改訂した診療指針では、すべての患者に最新情報に基づいた十分な説明を行い、年齢や体力、希望などを考慮して決めるべきとしています。

指針では「確固たるエビデンスが現時点ではない」などとした上で、年齢の目安として80歳以上はTAVIを、75歳未満は開胸手術をそれぞれ優先的に考慮するとしています。

また、75歳から80歳未満は医療チームで議論して決められるということです。

国内の手術件数は2013年に公的な医療保険が適用されて以降増え続けていて、関連する学会などの調査によりますと5年前に開胸手術を上回り、去年は1万6000件を超えています。

大阪大学などが始める調査について、TAVIの診療に関わる学会で作る協議会は、「国に承認されてから十数年という新しい治療なので、このような調査は重要と考える。これまでも手術の適応について医療チームで十分検討するよう呼びかけてきた。調査結果によっては診療指針の内容に影響する可能性があると考えている」とコメントしています。

TAVIを受けたあと再手術が必要になったケースは海外でも報告されていて、アメリカの胸部外科学会のデータベースに登録された症例を分析した論文では、こうしたケースが2023年3月までの10年余りの間に全米でおよそ5500件あったとされています。

アメリカでは2019年から2020年にかけてガイドラインなどが変わって手術の適応が広がり、主な対象となる患者の年齢は65歳以上とされました。

論文ではこの時期に再手術が必要になったケースが急速に増加したと指摘しています。

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