
広告と異なる粗悪品が…相次ぐ“ウソの宣伝”注意を
ネット上にあふれる“偽の動画広告”。
今、続出しているのが大手メーカーや大学と共同で開発したとうたっているケースです。こうしたウソの宣伝をする偽の動画広告に誘導されて家電製品を購入し、広告とは異なる粗悪品が届いたという相談が、国民生活センターに相次いでいることが分かりました。

偽の動画広告はSNSやYouTubeなどで表示され、実際には無関係の大手メーカーや大学と共同で、家電製品やおもちゃ、日用品などを開発したとうたっています。
国民生活センターによりますとことし6月以降、偽広告から誘導された通販サイトで商品を購入したという人から、広告とは異なる粗悪品が届いたなどの相談が、相次いでいるということです。

このうち50代の女性は、先月、SNSの広告で有名メーカーや大学と、共同開発したとうたうサーキュレーターを、送料含めて9000円で購入しましたが、届いた商品はおもちゃのような粗悪品で、広告に書かれていたAIセンサーや自動の首振り機能は搭載されていなかったということです。
こうした偽の広告に名前を勝手に使われていたのはアイリスオーヤマ、東芝、パナソニックなどの大手メーカーや大阪大学、東京工業大学現在の東京科学大学や、東京大学医学部附属病院などで、いずれのメーカーや大学も製品とは無関係だとして、ホームページで注意喚起しています。
国民生活センターは、広告をうのみにせず、お得感を強調する表示や大幅な値引きには注意するほか、日本語に不自然な点がないか、販売事業者の住所や連絡先が正しく記載されているかを検索して調べたり、問い合わせたりして確認するように注意を呼びかけています。
“ダニが除去できる布団クリーナー”購入した女性は

都内に住む40代の女性は、ことし6月、YouTubeを閲覧していたときにダニを除去できる布団クリーナーの偽の動画広告が表示されたといいます。
偽広告では、実際には無関係の東京工業大学、現在の東京科学大学と共同開発したとうたい、吸引力の強さを強調していたということです。
広告から誘導された通販サイトでは、価格は1台6990円、2台目は3000円で販売と表示されたため、女性は梅雨時期のダニ対策として、2台購入したということです。

商品はおよそ2週間後に届きましたが海外メーカーの製品で、実際に使用してみると広告とは異なり、電源ボタンがうまく作動しない上、ほこりなどもなかなか吸引できなかったということです。
女性は通販サイトの連絡先に問い合わせましたが連絡は取れず、返品先と書かれていた住所に送り返しましたが、受け取りを拒否されて、再び戻ってきたということです。
女性
「大学との共同開発なら安心できるなと思って買ってしまいました。動画で見たものと違っていて、商品が届いてびっくりしました。ほとんど吸引力はなく、本当にだまされたという思いで許せないです」
偽広告から誘導される通販サイトには中国の事業者が運営していると記載されていました。

NHKでは、事業者の連絡先として記載されていたメールに連絡しましたが、これまでのところ回答はありません。
また、女性のもとに届いた商品の伝票の依頼主の欄に書かれていた電話番号にも問い合わせましたが、つながりませんでした。
布団クリーナーの偽の動画広告については別のものも確認されていて、その広告では、大手電機メーカー東芝と20年かけて開発したなどとウソの宣伝をしていました。

東芝ライフスタイルは「当社とは一切関係がなく、共同開発し、製品化したという事実は一切ございません。このような偽広告について大変遺憾に感じており、消費者の皆様を混乱させる重大な問題と受け止めております」とコメントしています。
偽の動画広告 YouTubeやTikTokなどで確認
偽の動画広告にはさまざまな種類があり、YouTubeやTikTokなどで表示されるケースが確認されています。
このうちサーキュレーターの偽広告では「東京工業大学の省エネ技術とAI冷却チップを搭載」、「起動1分以内に20度も室温を下げられる」などと、うその説明をしていました。

また、サンダルの偽広告では「東京大学整形外科が推薦するリハビリ矯正シューズ」と表示し、へん平足などの足の悩みを解決すると説明をしていました。
こうした偽広告が表示されることについて各社は次のようにコメントしています。
YouTubeを運営する「グーグル」
「ユーザーを誤解させたり欺いたりすることを意図した広告は、ポリシーに違反します。弊社のシステムは継続的に広告を審査し、問題のある広告が検出された場合は直ちに削除する措置を講じています」
TikTokを運営する会社の日本法人
「すべての偽広告の報告について適切に審査・対応を行っています。より多くの人材と技術を投資することで、プラットフォーム上の広告が当社の基準を満たすよう努めてまいります」
専門家“偽広告は有名なメーカーや大学との連携をかたる”

偽情報対策に詳しい国際大学の山口真一准教授は次のように指摘しています。
「偽広告は有名なメーカーや大学との連携をかたるなど、信頼性を高めるためにあらゆるものを使っている。また、動画の方がより訴求力が高く、AIを使うことで、ある程度自然な日本語で、偽広告をつくることができるようになってきている」
消費者ができる対策について「大手の動画サイトやSNSなどでも詐欺的なネット広告が紛れていることがあるということをまず知っておくことが大切です。現段階では、生成AI的なナレーションの声で、日本語の不自然さもありますので、そういうところで違和感をもつことが大事だと思います」
広告を配信するプラットフォーム事業者について
「広告が主な収益源であり、責任は重いです。AI時代で、今後より被害が拡大していく可能性もあり、しっかりと広告の審査体制を強固なものにして、技術と人を組み合わせて、入念にチェックをしていく。それもグローバルな基準で、しゃくし定規的にやるのではなくて、日本語を理解したうえで、おかしい広告は差し戻すといった観点を含めて、しっかりとした審査をやっていただく必要がある」