参議院選挙 国民と参政が躍進 背景には“戦略的なSNS活用” | NHK

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今回の参議院選挙で、大幅に議席を増やした国民民主党参政党

私たちは支持者の声を徹底的に取材するとともに、両党が力を入れるSNSの分析を専門家とともに行いました。そこから浮かび上がった支持拡大の背景にあったものとは。
(参院選取材班)

既成政党には期待できない

今回の選挙期間中、私たちは東京都内などで参政党の候補者の街頭演説に何度も足を運びました。

そこで、集まっていた人たちに、支持する理由を聞いて回りました。

東京 北区の赤羽駅前・40代男性
「これまでは自民党だったり、国民民主党に入れていました。社会保障と税の負担を抑えてほしいという思いです」

20代男性
「参政党を知ったのはTikTokだったと思います。既存政党は長く政権をやっているからか、体制が古かったり、考え方が今風ではないと感じることがあります」

30代男性
「選挙は人で選んでいて、無党派層です。1番いいのは『日本人ファースト』で、当たり前に日本人が安心して暮らせる、安心して遊びに行っておいでと言える日本になってほしい」

東京 文京区 後楽園駅前・30代女性
「自民党が変えてくれるのではないかと期待をこめて入れていたが、声が通らずに30年間、経済的にも低迷してきた」

このように、これまで与野党の既成政党を支持してきたが、今回は参政党に期待して投票したいと話す人たちが多かった印象でした。

きっかけはYouTubeやSNS

また、こうした演説を聞きにきた人たちに参政党を知ったきっかけを聞くと、ほとんどの人がYouTubeやSNSを挙げました。

演説会場で出会った東京・西東京市の40代の男性です。

これまでは特定の支持政党はない、いわゆる「無党派層」だったといいますが、今回、XやYouTubeの動画をきっかけに参政党を支持。

みずからのXのアカウントで、参政党や党に近い考えの発言を引用するなどして拡散しているといいました。

40代男性
「SNSなどはテレビや新聞が報道していないことも伝えてくれます。Xなどで投稿されてる内容、政治の方針を見て、この人たちに託したいと思いました。日本人を第1に考えてくれるところに共感しました。毎日毎日、政治のことが気になって、皆さんの投稿を見て、広めたいことは『いいね』などをして、少しでもみんなに届くようにしています」

フォロワー増やした人も

参政党の演説を配信することでSNSのフォロワーを増やした人もいます。

5年ほど前から選挙や国際情勢の解説など、政治に関わる動画を配信してきた佐川さん。10万人以上のフォロワーをもちYouTubeのほかに今回、「TikTok」での発信も行いました。

選挙戦最終日には、東京 港区で行われた参政党の最後の訴えを生配信。開始時は30人ほどだった視聴者が2時間ほどの配信の間に一時、1500人を超えたということです。

YouTuber 佐川さん
「何がバズるか分からないので、今勢いのある参政党を取り上げています。現地に行けないが生の声を聞きたいという人は多く街頭演説を配信すると、コメントやフォロワーが増えて配信者としてもうれしいし、選挙への意識が高まるのもいいと思います」

所属議員がフルに発信

参政党は今回の選挙で全国比例に10人と、45あるすべての選挙区に候補者を擁立しましたが、NHKは、これらの公認候補と所属議員あわせて210人について、XやインスタグラムなどのSNSの利用状況を調べました。

その結果、1人を除く209人が少なくとも1つのSNSアカウントを所有し、およそ93%にあたる194人が少なくとも1度は自ら発信したり参政党の政策や支援する投稿を拡散したりするなど、どの議員も積極的にSNSを使って情報発信していました。

拡散された内容や投稿の多くは、神谷代表の投稿を引用したものや各地の候補者の街頭演説の告知でした。

「現役世代」政策に共感

もう1つの躍進した政党、国民民主党です。

投票日前日の土曜日に、玉木代表や榛葉幹事長らの街頭演説に集まった人たちに話を聞くと、「手取りを増やす」など現役世代を重視した政策などに共感するという声が多く聞かれました。

40歳 会社員の男性
「手取りを増やすというところにやっぱり共感しています。若い人の声を聞いている点や『対決より解決』というメッセージもよいと思っています。この30年間、日本は変われていませんが変えてくれるんじゃないかと期待を持って応援しています」

28歳 会社員の男性
「手取りを増やすということで注目していて、SNSなどでもいろんな動画を見るようになり、政治にだんだん興味を持ち始めました。人口の比率を考えると、高齢者向けの政策を中心にする政党が多いと思うのですが、国民民主は現役層の声を拾ってくれるので応援したいと思っています」

34歳 会社員の女性
「掲げている政策は納得できるものが多く、特にガソリン減税は実家が田舎で車がなければ生活できない中、価格が上昇していたので心に響きました。選挙や政治は固いし面倒くさいしいい印象がありませんでしたがサポーターになっても、そこまでお金もかからず意外とライトで楽しいなと感じました」

19歳 男子大学生
「103万円の壁を178万円に引き上げるというところが政治を動かそうとしていると感じています。飲食店でアルバイトをしていますが、収入が増えることが期待できるし、上限を気にせず働けるようになるというのがいいなと思います。演説をきくと、玉木代表、榛葉幹事長の熱い人柄も伝わるし、親しみやすい野党というイメージを強く感じます」

31歳の管理栄養士の女性
「個人事業主として働く中、稼いでも納税額が大きくていつもがっかりしますし、社会保障もこの先、心配です。今回私なりに勉強した結果、国民民主党が1番納得できて応援したいと思い、ボランティアに参加しました。最近は1人1人がしっかり考えて投票することで政治が変わるという実感を持つことができています」

両党のSNS戦略を調べると

躍進した国民民主党と参政党。共通するのが、YouTubeやSNSの戦略的な活用です。

今回、分析ツールの「BuzzSumo」などを使って調べたところ、この1年間で
▽国民民主党に関する動画は少なくともおよそ7600本あり、6億4200万回余り再生。
▽参政党に関する動画は少なくともおよそ8000本あり、3億7500万回余り再生されていました。

いずれの党も、再生回数が多いのは第三者が政治家の発言や街頭演説などを切り抜いた動画でした。

国民は都議選以降 減少傾向 参政は国民上回る 再生回数

国民民主党は去年10月の衆議院選挙に際して、YouTubeでの発信が注目を集め、切り抜き動画も多く作られるようになり、去年11月には関連動画の再生回数は9000万回を超えました。

ただ、東京都議会議員選挙が行われた6月以降は再生回数の減少傾向が目立ち、7月は18日の時点で2300万回余りでした。

一方の参政党。もともと党の公式チャンネルや支持者らによる発信が多かったのが2025年5月ごろから切り抜き動画が増え、関連動画の再生回数は6月には国民民主党を上回って9700万回近くとなり、7月は18日の時点で、1億5500万回となっています。

参政党に関連する動画は参議院選挙での演説を切り抜いたものが特に多い一方、参政党に批判的な動画や、テレビ局やネットメディアなどによる動画も増えていました。

中には、もともと国民民主党の切り抜き動画を発信していたチャンネルが、参議院選挙の時期には内容を変えて、参政党の動画の発信を中心にするケースも複数みられました。

専門家が読み解く 2つの政党のSNS戦略

両党のこうしたSNS戦略。

SNS分析に詳しい東京大学の鳥海不二夫教授に聞きました。

東京大学 鳥海不二夫教授
「新しい政党や規模の大きくない政党がインターネットをうまく使うことによってアピールすることに成功した選挙だったと言えるのではないか。当初は国民民主党がSNSをうまく使って支持を伸ばしていたが途中で失速があり、その後は参政党がSNSでの存在感を大きくしていった」

鳥海教授によると、こうした政党の情報を拡散させるXのアカウントを分析すると、ことし3月の時点では、国民民主党の情報を拡散させるアカウントが7万近くと最も多くなっていましたが、今月中旬にはおよそ2万に減っていました。

一方で、参政党は3月には4万ほどでしたが、今月には9万近くと最多になっていました。

さらに、今月中旬の段階で参政党の情報を拡散させているアカウントを詳しく見てみると、ことし3月の時点では、およそ20%は国民民主党に関する投稿を拡散させていたほか、半数余りは、どの政党の情報も拡散させておらず、鳥海教授は「政治にあまり興味がなかった層がかなり入ってきた可能性が高いのではないか」と指摘しました。

こうした状況の背景について鳥海教授は、SNSやYouTubeの動画などを生かした選挙戦が3年前の参議院選挙や、去年の東京都知事選挙や衆議院選挙、兵庫県知事選挙を経てノウハウが蓄積され、今回の参議院選挙でも使われるようになったと分析しています。

その一方で、注意すべきこととして、SNSの特性として、注目を集めると優先的に表示され、収入に直結する「アテンションエコノミー」の仕組みになっていることや、センセーショナルな情報や、ときには誤った情報で関心を集めようとする発信者もいること、それに、YouTubeなどではAIの推薦システムによって最初に見た政党の情報など同じものばかり表示され、異なる情報が入りにくくなることを指摘しました。

東京大学 鳥海不二夫教授
「現在の情報空間はアテンションエコノミーに支配されているところがあるが、情報は民主主義の根幹なので、ゆがめられない仕組みを作っていく必要があるのではないか。たとえば、選挙期間中に選挙に関する動画で収益を得られないようにすることは他の国でも行われており、そうすることでもう少し健全な情報空間が実現するのではないか」

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