トランプ大統領 就任半年「アメリカ第一主義」国内外で影響 | NHK

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トランプ大統領 就任半年「アメリカ第一主義」国内外で影響

トランプ大統領

アメリカ・トランプ大統領の2期目の就任から20日で半年となります。
各国に対して厳しい関税措置を打ち出すなど、「アメリカ第一主義」に基づく自身の政策を推し進めていて、国内外で大きな影響を与えています。

トランプ大統領 「アメリカ第一主義」に基づき政策 次々と実行

トランプ大統領がことし1月に2期目の政権をスタートさせてから20日で半年となります。

この半年間に署名した大統領令は171に上り、バイデン前大統領が4年間に署名した162をすでに上回っていて、「アメリカ第一主義」に基づき、自身が訴えてきた政策を次々と実行に移しています。

トランプ大統領は同盟国や友好国を含む各国に対して厳しい関税措置を打ち出し、アメリカが抱える貿易赤字の削減などを求めて交渉を進めています。

日本に対しては来月1日から輸入品に25%の関税を課すとしていて、日本との自動車の貿易などをめぐって繰り返し不満を表明し、圧力を強めています。

また、NATO=北大西洋条約機構について、トランプ大統領は、加盟するヨーロッパ各国がアメリカに防衛を依存していると批判し、加盟国は先月行われた首脳会議で国防費などの割合をあわせてGDP=国内総生産の5%に引き上げることで一致しました。

さらに、ロシアによるウクライナ侵攻をめぐっては、ゼレンスキー大統領と激しく口論するなど一時、ウクライナとの関係が悪化しましたが、最近はロシアへの圧力強化に乗り出していて、双方に揺さぶりをかけながら停戦の実現を目指しています。

一方、国内では最優先課題の1つとして掲げる不法移民対策のほか、政府支出の削減に向けて助成金の打ち切りや連邦政府職員の削減などを進めています。

トランプ大統領は自身の政策を推し進め、国内外で大きな影響を与えていますが、大幅な政策転換を急速に進めていることに対して反発の声も上がっています。

最優先課題は「不法移民対策」

トランプ大統領は、就任から半年の間にバイデン前政権からの大幅な方針転換を次々と打ち出してきました。

【不法移民対策・入国制限】
大統領選挙で最優先課題の1つとして掲げた不法移民対策では就任初日に南部国境の非常事態を宣言しました。

不法入国を即時かつ完全に阻止するとしてメキシコとの国境地域に軍の部隊を増派し、滞在資格のない移民を強制送還するなどの措置をとっています。

また、3月には裁判所の手続きなしに外国人の拘束や追放を可能にする戦時下の「敵性外国人法」などを適用して南米ベネズエラのギャング組織のメンバーだとして230人あまりを中米エルサルバドルの巨大刑務所に送る措置をとり、人権団体や弁護士などから懸念や批判の声が上がっています。

そして、先月、西部カリフォルニア州ロサンゼルスで、滞在資格のない移民の一斉摘発が行われ、反発した住民と移民当局との間で衝突が起きました。

一部が暴徒化して、暴動や略奪が起き、これに対処するためとしてトランプ大統領が州兵や海兵隊を派遣したのに対し、地元の知事や市長は緊張を高めると反発しました。

民主党の政治家が主導し、移民に寛容な政策をとるロサンゼルス市などの自治体と、トランプ政権との対立が鮮明になっています。

さらに先月には、外国のテロリストからアメリカを守るためとして、イランやリビア、ソマリアやスーダンのほか、ミャンマーやアフガニスタンなど12か国からの入国を原則として禁止、キューバなど7か国についても入国を制限すると明らかにしました。

対象となった国々からは反発や懸念の声が出ています。

【大学との対立や留学生ビザ問題】
トランプ政権は、名門ハーバード大学に対しパレスチナ支持の学生を監視することや、DEIと呼ばれる多様性などの推進をやめることなど、政権の方針に従うよう求めていて、留学生を受け入れるための認定を取り消し、連邦政府からの資金をすべて打ち切ると警告するなど締めつけを強めています。

これに対し、大学側は措置の撤回を求めて提訴するなど対立が深まっています。

また、トランプ政権は5月からアメリカへの留学を希望する人たちの学生ビザの取得に向けた大使館などでの面接の新規受け付けを一時停止しました。

先月には面接の新規受け付けを再開する見通しを示しましたが、「徹底的な審査を行う」として、ビザ申請者のSNSの投稿内容の審査を強化するとしています。

アメリカのメディアによりますと、各国の大使館などへの通達文では「アメリカ国民や政府などに敵対的な態度を持つ人物や国家安全保障上の脅威を助長する人物、違法な反ユダヤ主義的な嫌がらせを行う人物などを特定するためだ」と説明しているということで、留学生の受け入れの厳格化が進んでいます。

前政権とは異なる外交姿勢

「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ政権は、2期目の政権発足直後からバイデン前政権とは異なる外交姿勢を相次いで打ち出しています。

ただ、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突をめぐっては、停戦の実現への道筋を示すことができていません。

さらに、イスラエルに加勢してイランの核施設に対して軍事攻撃に踏み切るなど、中東地域の緊張も続いています。

【ウクライナ情勢】
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐっては、トランプ大統領は早期の終結に意欲を示してきました。

ただ、戦闘は続いていて、トランプ大統領は、今月3日にプーチン大統領と行った電話会談について「非常に失望している。プーチン大統領は停戦するつもりはなく大変残念だ」と述べるなど、いらだちを強めています。

そして今月14日にはトランプ大統領はロシアが50日以内に停戦に応じなければ厳しい関税措置をとると表明しました。

ロシアの製品を輸入する国に対してアメリカが関税を課すとしていて圧力強化に踏み出しました。

一方、ゼレンスキー大統領とは2月にホワイトハウスで行われた首脳会談で激しい口論に発展し、関係が悪化しましたが、4月にはバチカンで会談を行うなど、協議を重ねています。

そして、14日、ウクライナに対し、NATO=北大西洋条約機構の加盟国を通じて防空システム「パトリオット」を含む兵器を供与すると表明しました。

トランプ政権は和平案のとりまとめを急いでいますが、ロシアとウクライナ双方の溝は埋まっていません。

【ガザ情勢】
トランプ大統領は就任後からイスラエルのネタニヤフ首相との会談を重ねていて、今月もホワイトハウスでパレスチナのガザ地区の停戦などをめぐり協議を行いました。

1期目に続いて、イスラエル寄りの姿勢を鮮明にしています。

ガザ地区での60日間の停戦に向けた条件にイスラエルが同意したと明らかにし、停戦の実現に向け、関係国などとの協議を続けています。

【イラン】
核開発をめぐり、トランプ政権は4月からイランと協議を始めましたが、ウラン濃縮活動の扱いをめぐって両国の隔たりは埋まりませんでした。

協議は難航しているという見方が出ている中、先月にはイスラエル軍がイランの核関連施設などを攻撃し、それをきっかけに双方による攻撃の応酬が続きました。

そして、トランプ大統領はイランの核の脅威を阻止するためとして、イランの主要な核施設3か所に攻撃を行いました。

衝突の拡大が懸念される中、攻撃の3日後には、トランプ大統領がイスラエルとイランが停戦に合意したと明らかにし、戦闘が停止しました。

また、イランと核開発をめぐる協議を再び行いたい考えを示していますが、事態打開の見通しは立っていません。

【ヨーロッパ】
6月に行われたNATOの首脳会議で、加盟国は国防費などの割合をあわせてGDP=国内総生産の5%に引き上げることで一致しました。

トランプ大統領は、ウクライナ侵攻などでヨーロッパ各国がより役割を果たすべきだとして、5%への引き上げを主張していて、その求めに各国が応じたかたちとなりました。

政権の外交や安全保障を担う要職に対中強硬派とされる人材を起用し、政権発足当初から厳しい姿勢を示しています。

トランプ大統領は先月、2期目に入って以降初めて、中国の習近平国家主席と電話で会談しました。

主に関税をめぐる措置について協議したとしています。

また、今月にはルビオ国務長官と王毅外相による初めての対面での会談が行われ、ルビオ長官は対面での首脳会談の実現について「可能性は高い」としています。

日米安全保障条約に不満にじませる

【日本】
トランプ大統領は2月に首都ワシントンで石破総理大臣と初めて会談し、日米同盟をインド太平洋地域の平和と安全の礎と位置づけ、同盟の抑止力と対処力を強化することで一致しました。

また、トランプ政権は就任してから2回、日米豪印4か国のクアッドの外相会合を開き、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力の強化を確認しています。

一方、トランプ大統領は日米安全保障条約について「私たちは彼らを守るが、彼らは私たちを守る必要はない」と述べ、重ねて不満をにじませています。

トランプ大統領の支持率 就任直後と比べ低下

アメリカの政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によりますと、各種世論調査の平均値で、トランプ大統領の支持率は就任直後と比べて4.7ポイント下がっています。

政権発足直後の1月27日の時点で、「支持する」と答えた人は、50.5%だったのに対し、「支持しない」と答えた人は、44.3%でした。

その後、「支持する」と答えた人は次第に下がっていき、3月中旬には「支持しない」と答えた人が上回りました。

そして、今月19日の時点では、「支持する」と答えた人は45.8%、「支持しない」と答えた人は51.5%となっています。

このうち経済政策をめぐっては各種世論調査の平均値で、「支持する」と答えた人は42.9%、「支持しない」と答えた人は、54.3%となっています。

また、外交政策をめぐっては、「支持する」と答えた人は42.3%、「支持しない」と答えた人は、54.5%となっています。

一方、移民政策をめぐっては、「支持する」と答えた人は46.9%、「支持しない」と答えた人は、50.4%となっています。

また、全国紙「USAトゥデー」は、世論調査の結果を伝える記事の中で、トランプ政権の半年を振り返り、関税措置や連邦政府職員の解雇、DOGE=“政府効率化省”の取り組み、不法移民対策、そして、イランの核施設への攻撃などを挙げ「トランプ政権の2期目は、議論を呼ぶ政策ばかりで、経済的にも社会的にも、アメリカ国民はローラーコースターに乗っているようなものだ」と伝えています。

専門家「変化は前例のない規模」

保守系シンクタンク、ハドソン研究所の非常勤研究員で、アメリカ政治に詳しいポール・スラシック氏は、トランプ大統領の就任後の半年間の動きについて、「予算から外交、貿易政策まで多くの違った分野で抜本的な方針転換を行い、同時に多くのことを進めている。大学が偏向しているといった批判や公共放送への攻撃、各国に対する異例の高い関税措置やイランへの爆撃など、毎日、新しいニュースが飛び込んでくる状況で、この変化の激しさは本当に驚くべきものだ」と指摘しました。

そして、「トランプ氏とその支持者たちは、アメリカが危機的な状況にあると考えていた。トランプ氏が『すべてを変えないとこの国は終わる』と述べたことをわれわれは真剣に受け止めるべきだった。現在、起きている変化はほぼ前例のない規模だ」と述べました。

さらに「トランプ氏は2026年に行われる中間選挙という期限が近づいていることを認識している。民主党が下院を掌握した場合には、トランプ氏が望む法案は通らないだろう。だからトランプ氏は『この2年間はやりたい変革を実行する期間だ。できるだけ早く行動しなければならない』と考えているのだろう」と述べて、連邦議会議員などを選ぶ来年秋の中間選挙で、野党・民主党に議会の多数派を奪還されるリスクを踏まえ、政策の実行を急いでいるとの見方を示しました。

また、スラシック氏は、アメリカ国民の間ではトランプ氏の政策に対して反発は起きているものの、現時点で、経済が堅調に推移していることなどから、支持率が大きくは低下せず、おおむね安定しているとの認識を示しました。

ただ、関税措置による経済への影響が今後、出てくる可能性があると指摘し「物価の上昇や企業が従業員を解雇する可能性もある。経済は人々の最優先事項だ。私はトランプ氏の支持率が経済の低迷を乗り切るとは思えない」と述べて、経済の状況が支持率に大きな影響を与えるとの考えを示しました。

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