トカラ列島近海の地震 専門家“数か月続く可能性 備えを” | NHK

トカラ列島近海の地震-専門家“数か月続く可能性-備えを”-|-nhk

トカラ列島近海の地震 専門家“数か月続く可能性 備えを”

地震

トカラ列島近海で続く地震活動について、専門家は、地殻変動のデータや地震の規模からマグマや熱水などの流体が上昇してきた可能性も考えられるとしています。また、一連の活動は過去に伊豆半島の沖合で起きた活発な地震活動と似ている点もあるとして、活動が数か月続く可能性も念頭に備えを続ける必要があると指摘しています。

トカラ列島近海で続く活発な地震活動では、専門家による解析で、今月2日からの3日間で小宝島と宝島が南北に10センチ近く離れるような地殻変動が起きていたことが明らかになっています。

地殻変動や火山活動に詳しい東京大学地震研究所の青木陽介准教授は、観測点も少なく判断は非常に難しいとした上で、地殻変動の状況などから、火山活動の影響を受けている可能性があると指摘しています。

地下のマグマや熱水などの流体が上昇して地殻の中を押し広げていた場合、体積はおおむね100万から500万立方メートルほどではないかと推定しています。

一方、仮にマグマが上昇していた場合、すでに日数がたっていることから、周囲の岩盤に冷やされて、現時点で噴火に至る可能性は低下しているのではないかとみています。

また、地震の発生状況や周辺に火山が多いという状況から、伊豆半島の東の沖合で起きた群発地震のうち、1980年代や90年代の活発な活動に似ていると指摘しました。

「伊豆東部火山群」の群発地震

気象庁によりますと、静岡県の伊豆半島東部やその沖合に広がる「伊豆東部火山群」では1970年代後半から2010年代にかけて群発地震がたびたび起きていました。

このうち80年代から90年代が特に活発で、1989年は地震活動が6月30日から69日間続きました。

この間、震度1以上を観測した地震は494回、マグニチュード4以上が36回で、最大規模の地震はマグニチュード5.5でした。

また、7月13日には静岡県伊東市の数キロ沖の海底で噴火が発生しました。

国土地理院によりますと、噴火の前後には地震が多発した領域を挟む2つの観測点間の距離が16センチ伸びる大きな変動が観測されました。

こうした観測データなどから、一連の地震や海底噴火は、マグマがごく浅い場所まで上昇したことで起きたと考えられています。

青木准教授は、今後の見通しを示すのは難しいとしながらも、このまま収束するパターンのほか、マグマや熱水などの流体がさらに地殻内に入ってくることで活動が活発になるパターンも考えられるとしています。

活動が活発になった場合、地震活動が数か月続くこともあるとして、対策を進める必要性を指摘しています。

青木准教授は「今後しばらく群発地震が続くであろうということを想定して、家の中で物が倒れてこないようにするなど、さまざまな揺れへの備えをしてほしい」と話しています。

上空から調査した専門家 “特段の変化は認められず”

京都大学火山防災研究センターの中道治久教授は9日、第10管区海上保安本部の航空機でトカラ列島の離島火山を含む鹿児島県内の火山の状況を調査しました。

中道教授は調査の後、霧島市にある海上保安本部の鹿児島航空基地で取材に応じ、十島村の悪石島や小宝島を上空から目視で確認したところ悪石島の南側で崖崩れにともなう海面の濁りが見られたものの、島の状況に変化はなく周辺海域に浮遊物や変色は見当たらなかったと説明しました。

一方、一連の地震活動については「場所を変えながら広がり長く続いていることから、普通の本震・余震型の発生のメカニズムではなく、地下の流体の動きが絡んでいる」という認識を示しました。

そのうえで中道教授は「マグマや、マグマから出てくる水など何らかの流れるものがないと、あれだけの群発地震は起こらない」と述べ、こうした視点からの調査や研究が必要だとの考えを示しました。

鹿児島 十島村 震度1以上の地震 1762回(10日午後5時まで)

トカラ列島の悪石島や小宝島付近では、先月21日から地震活動が活発になり、これまでに悪石島で最大震度6弱の揺れを観測しています。

今月6日には悪石島で震度5強の揺れを観測する地震が2回、相次いで発生し、7日にはマグニチュード5.1の地震が起きて悪石島で震度5弱の揺れを観測しました。

震度1以上の揺れを観測した地震は、8日が37回、9日が45回、10日は午後5時までの時点で13回で、先月21日以降、1762回にのぼり活発な地震活動が続いています。

トカラ列島近海では2023年や2021年にも活発な地震活動がありましたが、今回の地震の回数は過去のケースを大きく上回っています。

気象庁は、震源が浅く、観測点に近いと震度が大きくなるとして、当面、最大震度6弱程度の地震に注意するよう呼びかけています。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *