スーパーのコメ 銘柄米とブレンド米の価格差広がり1100円超に | NHK

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全国のスーパーで今月13日までの1週間に販売されたコメの平均価格は、5キロあたり税込みで3589円となり、およそ半年ぶりに3500円台に値下がりしました。
銘柄米と、備蓄米を含む「ブレンド米など」の価格の差が広がり、今月13日までの1週間では、価格の差は1100円を超えています。

農林水産省は、全国のスーパー、およそ1000店でのコメの販売価格をまとめ、毎週、公表しています。

それによりますと、今月13日までの1週間に販売されたコメの平均価格は、前の週より13円下がって5キロあたり税込み3589円でした。値下がりは8週連続で、3500円台となったのはことし1月以来、およそ半年ぶりです。

一方、前の週からの値下がり幅は、随意契約による備蓄米の販売が進んだ先月には200円を超える週もありましたが、徐々に小さくなっています。

農林水産省は、値下がり幅が縮小している背景に備蓄米の販売ペースが一時より弱まり、価格に与える影響が少しずつ薄れてきていることがあるとみています。

銘柄米の売り上げ “備蓄米販売後も想定ほど落ちず”

大手小売店の中には、価格の安い備蓄米の販売を始めてからも銘柄米の売り上げが想定していたほど落ち込まず、需要が底堅く推移しているところもあります。

九州や関東などに店舗を展開する大手ディスカウントストアでは、随意契約の備蓄米を4980トン購入し、先月7日から5キロ税込み1944円で販売し始めました。

このうち東京 町田市の店舗には週に2回から3回のペースで備蓄米が入荷し、売り場に並べています。一方、銘柄米については「コシヒカリ」や「つや姫」など6種類を扱っていて、5キロ税込みで4300円余りから4600円余りで販売しています。

店では、備蓄米を扱うと銘柄米の売り上げが落ち込むのではないかと懸念していましたが、想定していたほど落ち込まず、今も根強い需要があるということです。

銘柄米を購入 小学生の子どもがいる30代女性
「やはり食べ慣れたお米を安心して食べたいと思って、銘柄米を買っています。備蓄米はまだ試したことがありません」

大手ディスカウントストア町田多摩境店 廣瀬顕宗次長
銘柄米を購入するお客は多数いる状況です。価格面だけでなく、備蓄米銘柄米はお客の選択肢としてすみ分けができている状況だと思います」

「銘柄米」「ブレンド米」価格差は さらに拡大

全国のスーパーのコメの平均販売価格によりますと、ことし3月9日までの1週間の時点では、銘柄米が「ブレンド米など」を5キロあたり税込みで199円上回っていました。

競争入札によって備蓄米が放出されてからは、備蓄米を含んだ「ブレンド米など」の価格は徐々に下がり始め、5月4日までの1週間には銘柄米との価格の差が500円を超えました。

その後、随意契約によって割安な備蓄米が放出されると、「ブレンド米など」の価格が大きく下がった一方、銘柄米の価格は小幅の下落にとどまり、その差は広がりました。

今月13日までの1週間では、価格の差は1100円を超えています。

銘柄米の価格が大きく下がらない背景について、農林水産省は「ブランド力のある銘柄米を価格が高くても好んで買う消費者が一定程度いるのではないか」とみています。

銘柄米の需要堅調 “価格据え置く”卸売会社も

銘柄米の需要は引き続き堅調だとして、卸売会社の中には価格を据え置いたまま販売するところもあります。

埼玉県越谷市にある卸売会社は、首都圏を中心とするおよそ200のスーパーや飲食店などにコメを販売しています。

この会社では「コシヒカリ」など10種類以上の銘柄米を毎年秋にまとめて仕入れていますが、ことしは十分な量を確保できなかったことから、2月に去年の2倍以上の60キロあたり3万円台後半で仕入れたということです。

スーパーなどでは備蓄米の販売が進んでいますが、この会社が扱う銘柄米の需要は引き続き堅調で、平年の1.2倍ほどの注文が来ているということです。

このため会社では、銘柄米の価格を据え置いて販売していますが、それでも例年より2か月から3か月早い、来月中に売り切れる見込みだということです。

卸売会社 中村貞昭社長
「例年だとこの時期、コメは余っていて、新米に向けて多少値段を下げるが、今年はそういう状況ではない。令和6年産の銘柄米は品不足感が出てきていて、高値でも買いたいという動きもあり、もしかしたら価格は少し上がってくるかもしれない」

銘柄米の価格が高止まりしている背景について、専門家は。

コメの生産・流通に詳しい 日本国際学園大学 荒幡克己教授
備蓄米が出て市場全体の品薄感が少し薄れてきたことは事実だが、もともとベースとなる仕入れ価格が銘柄米は高めなので、簡単には下がらない構造になっている。もう7月後半に入り、残りの銘柄米が少なくなっているという事情もある」

ことし産のコメの見通しは?

早場米の生産が盛んな宮崎県日南市では、稲刈りが始まっています。

市によりますと、ことしは560戸余りの農家がコメづくりをしていて、中村幸一さんの田んぼでは、刈り取り作業の依頼を受けた別の農家の宮田昇さんが21日から稲刈りを始め、コンバインで「コシヒカリ」を刈り取っていきました。

市によりますと、早場米の作付面積と生産量はここ数年いずれも減少を続けてきましたが、ことしは去年より作付面積が50ヘクタール近く増え、生産量も230トンほど多いおよそ2620トンが見込まれているということです。

これについて市は「去年からのコメの価格高騰で農家の生産意欲が高まったためではないか」と話しています。

一方、米どころの新潟県上越市では先月下旬からまとまった雨がほとんど降っておらず、山あいの一部の田んぼで稲が枯れる被害が出ています。

被害が出ているのは上越市にある山あいの「天水田」と呼ばれる、雨水を主な水源とする田んぼの一部です。。

市内で農業法人を経営する保坂一八社長によりますと、先月下旬以降まとまった雨が降っていないことに加え、厳しい暑さが続いていることなどから2ヘクタールある田んぼのうち大部分が乾いてひびが入り稲も枯れたということです。

この田んぼではコメの価格高騰を受けて作付けを家畜のえさとなるコメから主食用のコメに切り替えていましたが、この秋の収穫はほとんど見込めないということです。

さらに、平地にある別の田んぼでも用水路の水が十分に行き渡らず、およそ2割の田んぼで稲の葉が白く変色するなど被害が出ているということです。

こうした被害は市内のほかの田んぼでも出ているということで、上越市は新潟県などと詳しい状況を調査することにしています。

農業法人経営 保坂一八社長
「収穫を楽しみにしていたのでショックです。予報では今後も少雨が続くため新米の収穫に影響するのではないかと心配しています」

農林水産省調査 主食用のコメ 56万トン増産の見通し

ことし生産される主食用のコメは735万トンで、前の年から56万トン増える見通しです。

農林水産省の6月末時点の調査によりますと、全国の主食用のコメの作付面積は去年より10万4000ヘクタール増えて136万3000ヘクタールになる見込みです。この面積に平年の実績をかけ合わせた生産量は735万トンと、去年より56万トン増える見通しです。増加の幅は調査を始めた2004年以降最大で、さらに前回、4月の調査よりも16万トン拡大しました。

農林水産省はコメの高値に伴って、家畜のエサ用のコメを作っていた面積が半減し、主食用に切り替わったことが主な要因だとしています。

地域別でみると、福島県や秋田県など生産量が多い東日本の道や県では軒並み作付けを増やす一方、西日本では和歌山県と大阪府で去年より減るなど、増産する余力が弱まっている状況もうかがえます。

農林水産省は「高値を背景に生産者の間で主食用のコメを増産しようという意欲が高まった結果だ」としています。

新米の価格について、また猛暑や雨が少ないことによる影響について、専門家は。

コメの生産・流通に詳しい 日本国際学園大学 荒幡克己教授
「数字自体を見ると、けっこう過剰になるのではというくらいの大増産が見込まれている。ただ市場に潤沢に出回る保証はなく、ことしも集荷業者によるコメを確保しようという動きは間違いなく起きる。このため、令和7年産米は決して安くない価格で出始めるとみているが、過剰感が出てくれば少し下がることもありえる。」

「問題になるのは異常な高温で、特に夜の気温が高いと去年やおととしと同じように高温障害が出るおそれがある。精米の歩留まりが低下し、実質上の減産ということになると、コメ不足でまた価格が上がることにもなりかねない。どういう気象条件で経過していくか注意深く見ていく必要がある」

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