【各地の反応】相互関税 日米合意受け 輸出関連企業など | NHK

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【各地の反応】相互関税 日米合意受け 輸出関連企業など

関税

アメリカの関税措置をめぐり、石破総理大臣は自動車に対する25%の追加関税を半分とし、既存の税率とあわせて15%とすることなどで合意したと、正式に明らかにしました。

輸出を手がける企業などからは安どの声が聞かれた一方、今後の関税リスクを見据えた輸出先の分散など検討する動きも。
各地の反応です。

日米で合意 相互関税15% 自動車関税も15%【詳しく】

日本への相互関税15%に 日本側の反応

「ほっとしている」安どの声

東京・大田区の自動車部品関連の町工場では「ほっとしている。最悪の状況は脱したのではないか」と安どの声が聞かれました。

このうち自動車部品などの金属加工に使う工具の製造や販売を手がける会社は従業員およそ40人を抱えていますが、アメリカのトランプ大統領が去年11月に選挙で勝利して以降、毎月の売り上げは自動車産業の先行きの不透明感から従来と比べて1割から2割ほど減少している状況が続いています。

会社では売り上げの減少を補うために製造コストの削減や新たな販路の開拓を経営改善のさまざまな対策とともに進めてきたということです。

自動車部品関連の町工場 江口國康社長
「ほっとしています。今まで混とんとした状態で何が起こるか分からない状況が続いていたことを考えると、少し明るさが見えてきたのかなと感じています。最悪の状態は脱したのではないか。われわれ中小企業にとってみれば、景気をどうこうするとか、輸出とか輸入のコントロールをすることは全くできないので、政府には為替の安定化や景気回復に取り組んでほしい」

「15%は高い」業界全体への影響懸念する声も

愛知県の自動車部品メーカーからは、15%という関税の率は高いとして、業界全体への今後の影響を懸念する声が聞かれました。

愛知県碧南市の自動車部品メーカーは、エンジンの部品やサスペンションなどを生産していて、それらを組み込んだ自動車がアメリカなどに輸出されています。

アメリカに輸出される自動車には25%の追加関税が課されていますが、社長の木村哲也さんはこの状況が長引けば、自動車メーカーがアメリカでの現地生産を増やす可能性があるとして、自社の受注の減少を懸念していました。

自動車部品メーカー 木村哲也社長
「いつまでたっても不安要素が世界に漂っているのはよくない。いちど決まったほうがいいと思っていた。(関税の率が)今の25%よりはましだと思うが、それなりに大きい率になったと感じている。今回、15%に決着したといっても今後本当にその率がいつまで続くのかわからない」

「製品の7割を中国工場から輸出 米中の協議の行方懸念」

製品をアメリカに輸出する大阪の計測機器メーカーは、経営への影響を抑えられると評価する一方、中国に生産拠点があるため、米中間の貿易協議の行方が気がかりだとしています。

大阪・吹田市に本社がある計測機器メーカーでは、自動車や半導体関連などの計測機器を中国の工場で生産し、アメリカへと輸出していましたが、トランプ政権による中国への関税措置を受けて、生産の一部を日本に移管していました。

関税措置をめぐる日米の交渉で、相互関税を15%に引き下げることで合意したことについて、この会社では、経営への影響を抑えられると評価しています。ただアメリカ向けの製品のおよそ7割が、中国の工場から輸出されていることから、米中間の貿易協議の行方が気がかりだとしています。

この会社ではリスクを分散するため、インドなどに生産や販売の拠点を設ける方向で準備を進めるなど、トランプ政権の動向を見ながらサプライチェーンを見直していく方針です。

計測機器メーカー 加野稔会長
「もっとひどい状況もありえると思っていたが、日本とアメリカの力関係を考えると、比較的、影響は抑えられたと受け止めている。今後は、ひとつの国の中で生産から販売までが完結するようなサプライチェーンを作っていきたい」

「今後はリスク分散のため輸出先を拡大したい」

ブリなどをアメリカに輸出している愛媛県宇和島市の水産会社は安どする一方で、今後はリスクを分散するためにほかの国や地域にも輸出先を拡大したいとしています。

この水産会社では、売り上げのおよそ3割を輸出が占めていて、このうちおよそ4割がアメリカ向けとなっています。

水産会社 荻原達也社長
「これまで関税の動きが激しく、不安があったが、ようやく15%に定まったことで次の商談に向けて話がしやすくなり安心した。ブリはあくまでも和食の食材の一部であり、ほかの国に対する関税によってはアメリカの日本食レストランの客足に影響があるのではないかと懸念している。アメリカや中国だけに軸足を置くことにはリスクがあるため、今後はEU=ヨーロッパ連合や中東、東南アジアなどにも展開を考えていきたい」

「想定より税率低く」

名産のお茶をアメリカに輸出している静岡県の会社からは、想定より税率が低くなることに安どの声が聞かれました。

お茶の生産や販売などを行う静岡県御前崎市の製茶会社は、およそ35年前からアメリカに輸出していて、ことし4月以降は10%の関税が課されています。

増田剛巳社長は、トランプ大統領が新たな方針を示すたびに、アメリカの代理店と協議するなど対応に追われてきたということです。来月1日から25%の相互関税の発動を想定していましたが、15%で合意したことを受けて、会社は今後、「腰を据えて輸出に取り組めるようになる」と考えています。

製茶会社 増田剛巳社長
「今までは何%になるのか、全く見えず不安要素があった。これまでの10%からすると多いものの、ひとまずこの税率を基軸にやっていくことになるので安心したところもある。15%という数字をじっくりと考えながら、何らかの形で経費を削減し、全部を吸収するのは難しいが、できるだけお客さんに迷惑がかからない方法を考えていきたい」

「これから大変 15%固定を前提に戦略」

福岡県八女市の酒造会社は当初の想定よりも低い関税に安どの気持ちはあるとする一方、「これからが大変で、15%が固定されるのであればそれを前提とした戦略を考えたい」としています。

江戸時代から200年以上続く八女市の酒造会社では、およそ30年前から日本酒や焼酎を積極的に輸出しており、中でもアメリカは最も輸出額が多く、全体の売り上げの5%余りを占めています。
トランプ大統領が来月1日から25%にすると明らかにしていた相互関税が、15%とすることで合意したことについて、木下宏太郎社長は「少しほっとする気持ちもあるがやはり15%は覚悟しないといけないのかと、これから大変だなという気持ちが強い」と話していました。

会社によりますとコメの価格高騰で、酒米もこの秋に入荷予定の分が平均で4割余り値上がりするなど値上がりが続いているため、輸出向けの日本酒を今月、平均で15%値上げしたばかりだということです。
このため、関税の上乗せ分を販売価格に転嫁すれば現地の需要は低下し、売り上げは2割ほど下がるのではと予測しています。

さらに、日本酒の瓶のキャップはアルミニウム製ですが、今回、アルミニウムに課されている50%の関税率は変わらないとされていることも懸念材料だとしています。

酒造会社 木下宏太郎社長
「どうなるかわからない不透明感がぬぐわれてビジネスを進めやすくなったという面もある。関税が中期的に固定化されるとすればそれを前提とした戦略をこれから考えて展開していく必要がある」

「国産米の価格 アメリカ産米の仕入れ判断に影響」

アメリカからのコメの輸入割合を実質的に拡大することで合意したことについて、都内のコメ販売店からは、主食用に回るコメが増えるのかどうかを確認したうえで、仕入れを増やすか慎重に判断したいという声が聞かれました。

東京・千代田区にあるコメ販売店では、政府が輸入したアメリカ産の「カルローズ」と呼ばれるコメを去年の春ごろから扱っています。アメリカ産のコメに国産米をブレンドする形で飲食店などに販売していて、価格は1キロ当たり600円台と国産の銘柄米に比べて割安なことから、取引先からのニーズは高いということです。

コメ販売店 福士修三社長
「アメリカ産のコメが増えるといっても、主食用のコメなのか、飼料用や加工用のコメなのかがわからないので、今の段階ではなんとも言えない。取引先からの要望が強ければ引き続きアメリカ産のコメは仕入れたい。アメリカ産のコメが国産米より高いのでは、使う人は当然いない。国産米の価格がどの辺で落ち着くかによって、カルローズの売れ行きも変わってくると思う」

アメリカのコメ農家からは期待の声

アメリカ西部カリフォルニア州で、コメの生産を行っているコメ協同組合理事長のチャーリー・マシューズさんは、「よいニュースだと思う。私たちは何らかの合意が発表されることを待ち望んでいた。日米双方にとってよい結果になると信じている。日本で新たなコメの需要がうまれることを期待している。日本は最も信頼でき、一貫性のある国だ。アメリカと同様、常に約束を守ってきた。アメリカにとって日本市場はとても重要な市場だ」と話していました。

名古屋駅前では号外が配られる

アメリカの関税措置に関する日米協議が合意したことについて、名古屋駅前では、午前11時すぎから新聞の号外が配られました。

号外を受け取った40代の会社員の男性は「時間がかかったが合意できてよかった。輸入関係の取引先が多いのでどうなるか心配していた。関税の引き下げで自分たちの会社の業績にもつながると思う」と話していました。

80代の女性は「愛知県はトヨタをはじめとしたものづくりの街なので関税が引き下げられたことはよかった。日本経済の底上げにつながってほしい」と話していました。

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