全国のスーパーで7月20日までの1週間に販売されたコメの平均価格は、5キロあたり税込みで3585円と、9週連続の値下がりとなりました。
ただ、前の週からは値下がり幅は4円と徐々に小さくなっていて、農林水産省は、随意契約の備蓄米の販売ペースが落ち着いてきていることが背景にあるとみています。
農林水産省は全国のスーパー、およそ1000店でのコメの販売価格をまとめ、毎週、公表しています。
それによりますと、7月14日から20日までの1週間に販売されたコメの平均価格は5キロあたり税込みで3585円と、前の週から4円値下がりしました。
値下がりは9週連続です。
前の週からの値下がり幅は、随意契約による備蓄米の販売が拡大した6月には200円を超える週もありましたが、徐々に小さくなっています。
農林水産省は、随意契約の備蓄米の販売ペースが落ち着き、価格に与える影響が少しずつ薄れてきていることが背景にあるとみています。
また、農林水産省のまとめによりますと、7月20日までの1週間に小売業者などが販売した随意契約の備蓄米はあわせて1万3108トンで、1週間あたりの販売量は6月中旬以降、おおむね横ばいの状態が続いています。
随意契約の備蓄米 売れ行きペースが落ち着く
随意契約による備蓄米の店頭での販売が始まってから、まもなく2か月となる中、千葉県のコメの販売店では販売のペースが落ち着いてきているとしています。
千葉県木更津市にあるコメの販売店では、令和3年に収穫された随意契約の備蓄米、あわせて12トンを調達し、6月下旬から、販売を始めています。
店頭では、精米して5キロごとに袋詰めしたコメを税込み2000円で、30キロの玄米を1袋あたり税込み8000円で取り扱ってきました。
店によりますと、仕入れた12トンのコメのうち、すでに7割ほどが売れたということです。一方、1週間あたりの販売量は、取り扱いを始めた先月下旬と比べると、直近では3分の1ほどになっていて、販売のペースは当初よりも落ち着いてきているとしています。
これについて店では、ほかの店舗でも、随意契約による備蓄米の販売が広がったことなどが背景にあるとみています。店では当初の計画どおり、新米の販売が始まる8月中旬までに随意契約による備蓄米を売り切る予定だということです。
コメ販売店「泉屋」の泉雅晴社長は「いろいろなところで備蓄米を買えるようになり、お店としては備蓄米の売り上げが下がることは困るが、コメ業界としては流通が安定してきたということで安心している。消費者が心配することないように、コメを売り続けていきたい」と話していました。
競争入札の備蓄米 売れ行き鈍り対応迫られるスーパーも
スーパーの中には、随意契約による割安な備蓄米の販売が進んでいるのを背景に、競争入札による備蓄米を売り切るための対応を迫られているところもあります。
東京・足立区のスーパーでは5月上旬から競争入札による備蓄米の販売を、5キロ1袋税込み3780円で始めました。しかし6月中旬から、随意契約による備蓄米の販売を5キロ1袋税込み1922円で始めたところ、競争入札によるコメの売れ行きが鈍くなったということです。
店によりますと、競争入札による備蓄米は5月上旬と先月中旬にそれぞれ仕入れ、このうち先月中旬に仕入れた分は数日で売り切る想定でしたが、28日時点でも50袋ほど売れ残っているということです。
店では7月に入り2回にわたって値下げを行い、現在は5キロ1袋あたり税込み3229円で販売しています。しかし仕入れ値に近い価格で、利益はほとんど出ていないということです。
ベニースーパーの赤津友弥本部長は、「1000円台と3000円台で販売される備蓄米では、中身がそう大きく変わらず価格が倍近く違うので、購入客はやはり高い価格の備蓄米に少し二の足を踏んでいると感じている。3000円台の備蓄米は入荷してから少し時間もたっているので、早めにお客さまの手元に届くような価格にしている」と話していました。
コメの流通に詳しい専門家「値下がりが一段落ついた」
コメの流通に詳しい流通経済研究所の折笠俊輔主席研究員は、販売価格の値下がり幅が縮小していることについて、「随意契約の備蓄米は店頭での出回りが増えてきてパニック買いのようなものが落ち着いてきた。節約したい人は備蓄米を手に入れることができるようになり、こだわって銘柄米を買いたい人は銘柄米を買っている。消費者のニーズにあわせて配分が進んできた結果、ある程度、値下がりが一段落ついたと言える」と話しています。
また、競争入札で放出された備蓄米については、「節約したい人のニーズは5キロ2000円の随意契約の備蓄米にある。銘柄米と随意契約の備蓄米に需要が分かれてしまう中で、中間の価格帯のニーズは薄くなっているのかもしれない。ただ、出回りの時期が早かったので、おそらく市場に残っている量はそれほど多くはないと思う」としています。
その上で、今後のコメの販売価格の見通しについては、「令和6年産の銘柄米はまだそれほど大きく下がっていないが、新米の流通に向けて余りそうだということになると価格が下がり、全体の価格も下がる可能性はある。ただ、猛暑が続き梅雨に雨が少ない地域もあった中、令和7年産の収量が予定どおり増えるのか、作柄がどうなるのかが注目のポイントだ。8月には作柄が見えてくると思うが、これがかなり悪くなると、コメが足りなくなり、7年産も6年産も両方の値段が上がっていく可能性もゼロではない」と指摘しました。